2024年11月21日( 木 )

中国EV車市場競争が激化 75社が倒産

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中国 電気自動車 イメージ    世界最大の自動車市場の中国で電気自動車(EV)の競争が激しくなってきた。比亜迪(BYD)といった中国勢と米テスラなどの欧米勢がしのぎを削り、2割値下げする動きもある。2023年に、中国は新車の3台に1台がEVとなる見通しだが、自動車業界は今年第一四半期、価格競争を展開しながらも販売量は落ち込んだ。

 中国自動車工業協会のまとめでは、今年第一四半期の生産台数は前年比4.3%減の621万台、販売台数は6.7%減の607万台であった。このところ相次ぎ発表されている上場各社の四半期決算を見ると、販売減の影響で大手は純利益が軒並み大幅ダウンしている。

 こうしたなかで、乗用車タイプの新エネ車ピックアップトラックが踏みとどまりを見せている。「長城汽車」は第一四半期、「ハヴァル」「WEY」「ORA」の各車種が販売減に見舞われながら、ピックアップトラックが唯一のプラス成長を示し、前年比13.6%増の4万8817台を売り上げた。

 2022年2倍に急拡大した中国EV市場、今年は一転して淘汰・再編がテーマになっている。3年連続で小型EVの売上台数トップに立った実績のある雷丁汽車集団 (LETIN)が5月、申請人・被申請人ともに自社として山東省昌楽県人民裁判所にて破産を審査する事態になった。

 公開資料によると、雷丁汽車は2008年に自動車業界に参入し、当初は低速EVおよびその主要部品の開発や製造に従事していた。2019年1月には、14.5億元(約283億円)をかけて「野馬汽車」を買収したことで、新エネ車を生産する下地が出来上がった。創業者の李国欣氏によると、13億元(約254億円)の担保融資を受けての買収であった。

 雷丁汽車は2016年から2018年までの3年間、小型EVの販売台数が順に15万台、21万台、28.7万台でトップに立ち、マーケットシェアは一時期30%を超えた。2018年の売上高は120億元(約2,346億円)を記録した。しかし好況もつかの間、上げ潮だった数年間を経て2021年に経営困難に陥った。雷丁汽車に詳しい関係者によると、2021年5月から幹部陣の減俸が始まり、中間管理職は50%、一部は60%以上の賃金カットとなった。

 2022年1月から10月までの累計販売台数は6878台で、うち10月は前年の2625台から92.5%減り196台となった。裁判所の公開情報を見ると、雷丁汽車は売買契約のトラブルに敗訴したことで幾度も資金の凍結を命じられている。

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 瀬戸際に追い込まれたEV車は「雷丁汽車」だけではなく、「愛馳汽車」もそうだ。新エネ車メーカー「愛馳汽車」(Aiways)は、今年3月分と4月分の給与を支給しておらず、社員の話では5月分も支給されていないという。社内の通達によると、今は4月分の社会保険や積立金の納付問題に取り組んでおり、結果が出次第発表するとしている。愛馳汽車は2017年に設立され、発表車種はこれまで主にヨーロッパ向けの2車種のみで、成長著しい中国国内の新エネ車市場で力を出し切れていない。好調な市場に乗り遅れた上、ヨーロッパがやや閉鎖的であることから売上が伸びず、2020年は2600台、2021年は3011台で、今年第一四半期は昨年同期の564台とほぼ横ばいの536台となっている。

 この影響で社内の成長が望めず、経営は外部の融資頼みとなっている。公開情報によると愛馳汽車はこれまでにCATL(寧徳時代新能源科技)、ディディ、テンセントなど有名企業から合わせて9回の融資を受け、発表済みの限度額情報によると総額100億元 (約2,000億円)近くに達している。

 愛馳は2021年に給与削減、賞与の中止、仕入れ先への代金未払いといった問題が発覚し、2022年に改めて数億ドルの融資を受け、経営陣を入れ替えた。さらに時価50億~60億ドル (約6,923億円~約8,307億円)での全米上場計画を実行に移しているなか、新たな投資家である陳炫霖氏が自己都合で費目の一部を支払えず、一段と苦境に陥っている。

 中国ではここ2、3年、一時脚光を浴びた拝騰汽車(Byton)、賽麟汽車(Saleen)など新興自動車メーカーが相次ぎ姿を消しており、上位陣に加わった実績のある威馬汽車(WM Motor)も昨年から経営困難となり、給与未払いが何カ月も続いている。

 長安汽車の朱華栄会長は5月10日に、「この3年間で淘汰された自動車ブランドは計75社にのぼる。向こう2~3年は少なく見ても60%~70%が淘汰されるだろう」と述べている。

 激しい競争のなか、だれが生き残れるのか?心配している自動車メーカーは一般のEV車製造会社だけではなく、大手も焦っている状態だ。

 中国の自動車大手、長城汽車は5月25日、電気自動車最大手の比亜迪 (BYD)の一部車種について、環境基準に適合していない疑いがあるとする声明文を発表した。長城汽車は声明で、BYDのプラグインハイブリッド車(PHV)である「秦PLUSDM-i」と「宋PLUSDM-i」が搭載している燃料タンクについて「蒸発汚染物質の排出」が基準を満たしていない疑いがあるとしている。4月11日、環境政策を担う中国の生態環境省などに通報したという。

 BYDは中国で拡大する新エネルギー車需要の取り込みを進めているが、環境性能や品質に問題があったと認定されれば、販売にマイナスの影響がおよぶ可能性がある。25日の反論声明では 「不当な競争行為には断固として反対する」と強調し、長城汽車の告発を非難した。

 その告発で、長城汽車も比亜迪も、株は5%以上暴落した。大手二社による非難の応酬は、中国のEV車市場が激しい競争の真っただなかであることを伝えている。


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