相次ぐ前受金商法の破綻「てるみくらぶ」「はれのひ」「かぼちゃの馬車」(後)
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「てるみくらぶ」被害額は100億円
格安海外旅行会社(株)てるみくらぶ(東京)は2017年3月27日、東京地裁に自己破産を申し立てた。負債総額は151億円だった。同社は、海外旅行の申込者からかき集めた前受金を食い潰した挙げ句の倒産となった。
旅行会社には、旅行会社の破綻などで旅行者が負った債権を弁済する制度がある。日本旅行業協会は、審査の結果、1万643件、総額34億円を認証対象にした。弁済率はわずか3.5%。海外旅行の申込者には、払い込んだカネはほとんど戻ってこなかった。前金商法破綻のツケを押し付けられたかたちだ。
モノやサービスを提供される前に顧客から前金を受け取るのは教育業界や美容業界などの典型なビジネスモデルだ。大手英会話学校「NOVA」を運営する(株)NOVA(大阪市)は2007年10月26日、大阪地裁に会社更生法を申請して倒産した。負債総額は439億円にのぼった。NOVAは、何年も先の受講料を一括で受け取る前受金ビジネスの典型であった。拡大路線を突き進み、前受金を教室増加のための先行投資に注ぎ込み、それでも足りずに、借入金でまかなったことが破綻を招いた。受講生を食い物にする前受金商法の悪しき例だ。
脱毛エステ「ミュゼ」前金商法の落とし穴
筆者はコダマの核心レポートの本欄で、『脱毛エステ「ミュゼ」が嵌った前金商法の落とし穴』を書いた。
女性専門脱毛エステ最大手「ミュゼプラチナム」を運営する(株)ジンコーポレーション(東京)は2015年10月6日、私的整理した。詳しく書いているので合わせて読んでいただきたい。ミュゼを始めエステサロンが採る「前受金制度」の問題点を取り上げている。
ミュゼは「美容脱毛完了コース100円(1回)」の低料金をうたい文句に長期契約を結んだ。ミュゼの最大の問題はミュゼ会員から預かった前払い金の会計処理にあった。前払い金は、解約に備えて保全しておかないといけない。会員から受け取った金は前受金として貸借対照表の負債に計上し、施術の進捗に合わせて売上に計上するのが通常の会計処理である。
ところが、会員から受け取った金はすべて売上として、前受金として計上していなかったのだ。ミュゼは会員から預かった金を、運転資金や広告費に流用していた。
そのため、いったん、解約が生じると資金繰りは破綻する。前受金に計上していれば、解約があっても、前受金を取り崩せば資金繰りに影響を与えることはない。ミュゼは会員から預かった金を、すべて売上に計上しているので返済原資がない。前受金は簿外債務になる。前受金を売上金として処理していたこと。これが最大の問題だった。
前受金は手元のキャッシュを増やすために有効の方法だが、前受金は決して売上ではない。目の前にキャッシュが転がり込んでくれば、使ってみたくなる。前受金には、おカネが降ってわいてくる感覚にさせる魔力があることを、経営者は胆に銘じておかねばならない。
(了)
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