2024年12月22日( 日 )

総理待望論が出始めた泉前明石市長に立民代表がラブコール

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    子ども予算倍増で10年連続人口増をはたした泉房穂・前明石市長は6月14日、立憲民主党の「子ども・若者応援本部合同会議(有識者ヒアリング)」に招かれ、前日に発表された岸田政権の少子化対策を酷評した。「100点満点で10点」「牛丼屋に例えれば、うまくない、安いかどうか分からない、速くない」などと厳しく批判をした。参加議員との質疑応答でも泉前市長の熱弁は続き、ずっと聞いていた泉健太代表は締めの挨拶でこんなラブコール(実質的出馬要請)を発した。

「恐らく今日ここにいる仲間たちの思いを私が代弁すると、『ぜひ、一緒にやっていただきたい』という思いをみんな持っていると思います。これはラブコールです」。

 参加議員から大きな拍手が沸き起こるなか、泉前市長も出馬要請に呼応するかのような発言で締めた。

「政治は希望ですよ。政治家があきらめたら終わりです(参加議員から『そうだ』の声)。政治家は国民に対する責任がありますから、政治家はあきらめたらダメなのです。どんなにきつくても国民のために精一杯やっていくことだと思っています。今の状況が残念なものである以上、一番期待されているのはここにおられる皆さまだと思います。期待しています。よろしくお願いします」。

 総理大臣待望論も出始めた泉前市長が国政変革を強く訴えながら、立民との連携を強めている。1週間前の6月7日には長妻昭・政調会長主催の時局講演会で泉前市長が講演。「自治体だけではない。国も変えないとアカン。ほんまにそう思っている」と切り出し、明石市長時代の12年間を振り返った。公共事業の後倒しなどの歳出改革によって、市民負担を増やすことなく子ども予算を125億円から297億円の2.38倍となった。医療費無料など5つの無料化を実現するとともに、子育て関連施設(遊び場や授乳など)を駅前につくるなどの政策も進めた結果、子どもに優しい街として人気が上昇。10年連続で人口増が続き、商店街も賑わいを取り戻し、税収アップで市の財政健全化も進んだというのだ。

 そして「政治は変えることができる」「変えるのは市民、国民」と強調しながら泉前市長はこう訴えた。

「私としては、明石でやることは自分なりにやった。これを全国に広げていきたい。明石止まりではなくて、明石でできたことはほかの街でもできるのです。ましていわんや、国でできないわけがない」。

泉房穂・前明石市長
泉房穂・前明石市長

    12年の任期を終えた泉前市長だが、明石での成功事例を他の自治体だけでなく国政にも広げることを目標としていたのだ。こうした“国政変革”への意気込みを熱く語る泉前市長に対して、聞き惚れた泉代表が「一緒にやっていただきたい」というラブコール(実質的出馬要請)を送ったかたちになったのである。

 秋口にも予想されている次期総選挙で、泉前市長が「明石方式の国政反映(国民負担増なき子ども予算倍増)」を旗印に出馬、野党統一候補になれば、政権交代の実現可能性は一気に高まる。夢物語のように語られていた「泉房穂・総理大臣待望論」が野党第一党党首からの出馬要請で現実味を帯びてきたともいえる。

 しかも泉前市長は、見かけ倒しの維新政治を一刀両断にできる存在でもある。子育て政策で評価されることもある維新だが、その実態は雲泥の差がある。10年連続人口増の明石市に対して大阪府は人口減。小選挙区区割り変更「10増10減」で東京や愛知などは定数増なのに、大阪が増えないのはこのためだ。維新ツートップ行政”(府知事と大阪市長が共に維新)が10年以上も続いた結果、大阪の人口は減少、魅力のない地域に成り下がっていたのだ。

 全国平均以下の成長率なのに大阪都構想の住民投票で「大阪の成長を止めるな」というキャッチフレーズを使った維新は、誇大(虚偽)広告的な発信が得意技だが、「身を切る改革」を実践した本拠地・大阪での人口減を招いていることについては説明しようとしない。不都合な真実を隠蔽する特徴もある。大阪ダブル選挙に突入しようとしていた3月3日の吉村洋文知事の囲み取材で、府議会でも追及された大阪府の人口減について聞いたが、まともに答えようとしなかった。

 ──人口減少が大阪で進んでいる、魅力のない地域になっていることの受け止めをお願いします。

 吉村洋文氏(以下、吉村) 大阪は魅力のある地域、維新の生まれる前からずいぶんと魅力のある地域になっています。

 ──大阪の人口減少はなぜ起きているとお考えですか。

 吉村 (大阪ダブル選挙の対立候補の擁立をした)「アップデート」の方と議論します。横田さんと議論するつもりはありません。

 この場には大手や在阪メディアの記者もいたが、「維新政治10年で大阪は人口減」といった批判記事や検証番組は見たことはない。しかし総理大臣待望論まで出始めた泉・前市長のメディア露出度が急上昇、10年連続の明石市政が注目されることで、「身を切る改革」で人口減の大阪維新政治の虚構ぶり(エセ改革ぶり)が際立っている。

 岸田政権の異次元少子化対策を辛口トークで厳しく批判した泉前市長は、実績に乏しい維新政治を一刀両断にできる存在でもある。自民にも維新にも斬り込める“二刀流”の大型新人が野党陣営に登場、頭角を現し始めたともいえる。野党結集のキーマンになるのか。泉前市長の動向から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

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