福岡9区をめぐる複雑怪奇な福岡自民党の動き
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秋にも衆議院解散・総選挙が行われるともいわれるなか、自民党福岡県連も急ピッチで、空白区の候補者選定を進めている。福岡9区の支部長に参議院議員・大家敏志氏を内定したが、その後継などをめぐって一筋縄でいかない事情があるという。
大家氏の後継に現職県議らが浮上
6月にも衆議院解散・総選挙の可能性が取り沙汰されたが、岸田文雄首相は最終的には「今国会での衆院解散は考えていない」として解散を見送った。自民党最大派閥の安倍派は後継会長の選出をめぐって紆余曲折しており、安倍晋三元首相が亡くなって1年が経過したにもかかわらず、いまなお決められずにいる。首相の優柔不断と最大派閥の迷走は、全国各地で保守分裂を生むきっかけとなっている。
福岡県でも各地で分裂の動きが公然化している。その1つ北九州市八幡西区などをエリアとする9区では、当時現職であった三原朝彦氏が2021年の衆院選で緒方林太郎氏に敗北し、朝彦氏は引退した。このままでは政令市である北九州市が野党系に奪われたままになってしまう。自民党県連は危機感を強めていた。
福岡9区の支部長は空席のままとなっていたが、今秋の衆議院解散を念頭に公募を行い、書類選考と面接を経て、党員投票で決めることとなった。6人が公募に応募し、書類選考の結果、三原氏の甥の北九州市議会議員・三原朝利氏と大家氏との一騎打ちとなり、投票の結果、大家氏の得票が三原氏の得票を上回り、支部長内定となり、県連を通じて党本部に上申された。
ここで問題となることが2つある。1つは大家氏の後継を誰にするのかである。福岡県連では伝統的に県議会議員の発言力が国会議員より強い。県内11の選挙区のうち、8選挙区を自民党が押さえている。このうち県議出身が1区の井上貴博氏と2区の鬼木誠氏である。県連の執行部を押さえる自民党県議団は、国政に自分たちの仲間を送り込みたいとの考えを一貫してもっている。
そこで浮上しているのが、福岡市南区選出の県議会議員で、県連幹事長を務める樋口明氏である。樋口氏は現在5期目で、第67代県議会議長も務めた。県議に当選する03年以前、福岡市長を務めた山崎広太郎衆議院議員および古賀正浩衆議院議員(いずれも当時。中選挙区時代、同選挙区の古賀一成、古賀誠とともに「三古賀」と称された1人)の事務所に務めた経験がある。国政の基礎はそこで学んだようだ。
大家氏は県議会議員時代から樋口氏と親交が深い。樋口氏にも国政への思いは以前からあるものの、地元福岡2区には現職の鬼木氏がいる。そこで大家氏の後継として名前が出ているようだ。
この他にも、麻生太郎自民党副総裁の秘書となっている原口剣生自民党県連会長の子息の名前もあがっている。誰が後釜になるのか注目される。
鞍替えに反対の麻生氏
問題の2つ目は麻生氏が大家氏の衆議院への鞍替えに反対していることである。麻生氏は「参議院でいいじゃないか」と大家氏の衆議院への鞍替えに賛同していない。
麻生氏は北九州市長選挙で自民党市議団を離脱して武内和久氏を応援した三原氏の若さに期待しており、現職の緒方氏に勝てる可能性がある候補として三原氏に軍配を上げているという。最終的な判断は党本部が下すが、県連の判断を覆す可能性もある。森山裕選挙対策委員長は「党員投票の投票率(約75%)は、大変高い数字だ」と述べた一方で「選挙は党員以外も投票する」とも発言している。
自民党県連、福岡県内の自民党系地方議員や支持団体の関係者は、党本部がどう判断するのか、固唾をのんで見守っている。
【近藤 将勝】
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