2024年12月22日( 日 )

自民党は国土交通大臣ポストを公明党から奪還すべき

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 8月ないし9月にも内閣改造が行われるとみられるなか、国土交通大臣のポストをめぐって、公明党と自民党の間で綱引きが行われている。

創価学会以外の票田を確保したい

 18日、公明党の山口那津男代表は国土交通大臣について、「公明党にとってこれからも重要だ」と発言した。さらに、「国土交通大臣は国民生活に密着した、経済にも大きな影響力を持つ重要な役割である」と強調している。

 つまり、内閣改造後も国土交通大臣のポストを継続したいという、公明党の意思を表明したのである。自公連立政権が発足してから(その間、野党に転落した3年半もあったが)約20年となる。自民党と公明党は、思想的にも政策的にも水と油の関係だが、衆議院のすべての小選挙区で候補者を一本化してきた。安保法制や消費増税などの際も、自民党は公明党(と支持母体の創価学会)の顔を立てた妥協を必ず行ってきた。

 ただ、連立内閣であるいじょう、公明党は自民党にさまざまな要求をしてくる。お互いの党大会や会合に顔を出すのはもちろん、自民党議員が演説で「比例は公明に」と述べるのは今や当たり前というありさまだ。ただ、公明党としては、支持団体の創価学会の集票力が低下していくなか、それ以外の支持母体、支援団体を確保したいという強い思いがある。

 今回の内閣改造に際して、公明党はなぜ国土交通大臣にこだわるのか。それは、公共事業を握ることがいかに利益を生むかを知ったからである。自公連立政権の発足当初、公明党は「平和と福祉の党」らしく厚生労働大臣のポストを得ていたが、2004年に北側一雄氏、06年に冬柴鐵三氏が国土交通大臣に就任し、自民党の力の源泉に公共事業があることを理解した。12年に政権復帰した後、第2次安倍政権、菅政権、岸田政権において、国土交通大臣は公明党の「指定席」となっている。

自民党権力構造の変化

 国土交通省の権限がおよぶ領域は広い。2001年の行政改革で旧建設省・旧国土庁・旧運輸省・旧北海道開発庁の4つの省庁が統合された巨大官庁で、建設、交通政策、流通、水資源、離島振興、大都市政策などがその管轄となっている。

 それらの関連業界のほとんどは自民党を支持してきた。しかし、ここ10年で国土交通大臣はすっかり公明党の指定席と化し、ゼネコンや建設・不動産業などの業界団体が公明党の決起集会に出席するようになった。「聖教新聞」や関連企業の発行する「第三文明」には、今や大手ゼネコンの広告が当然のごとく掲載されるようになっている。

 同時に、全国建設業協会をはじめ、日本道路建設業協会、全国宅建政治連盟、日本自動車工業会など、主要な業界団体が公明党に陳情・要望を行うようになっている。

 一方、自民党議員は2009年の金子一義氏を最後に、国土交通大臣を務めていない。このことに自民党内では不満が溜まっている。ただ、これまではそのことを口にすると、衆議院議員の選挙区調整や選挙支援で公明党に世話になっていることに悪影響をおよぼしかねないことから、表立っては発言できずにきた。

 だが、岸田文雄首相(総裁)も茂木敏充幹事長も、二階俊博前幹事長や菅義偉前首相に比べると、公明党との関係が希薄である。岸田首相の師である古賀誠元幹事長も公明党とは関係が深い。

 そのこともあってか、今年4月の福岡県議会議員選挙に際し、古賀氏の元選挙区地域である筑後市・八女市八女郡・柳川市で公明党は自民党の対立候補を推薦した。なかでも、筑後市選挙区において、福岡県政の重鎮・藏内勇夫氏の対抗馬を全面支援している。古賀氏は現職を退いた現在も、全国道路利用者会議会長を務め、国土交通省に強い影響力を保持している。筑後市などでいまなお古賀氏を支持する首長や保守系地方議員が少なくないのは、そのことが大きい。古賀氏寄りの首長や保守系地方議員は公明党とも協力関係にある。

 道路行政を含めた公共事業は、長年、旧経世会すなわち現在の茂木派(平成研究会)が掌握してきた。小泉純一郎首相時代に「聖域なき構造改革」を唱え、旧経世会の利権・集票田となっていた公共事業にメスを入れた。清和会政権が続くなか、それを受け継いだのが二階氏であり、古賀氏であった。その流れから、国土交通大臣が公明党の常任ポストになったと考えるのが正しいだろう。

 現状を見ると、自民党内の大勢は、公明党との全面戦争は避けたいと考えているふしがある。ゼネコンとずぶずぶというのは過去の話で、若い議員は公共事業にさほど関心がない。

 だが、自民党は、国民生活にかかわるインフラや海上保安庁も所管する国土交通大臣のポストを、いつまでも公明党に譲り渡していてよいのか。自公関係に微妙な波が立つ今こそ、国土交通大臣のポストを奪還すべきである。

【近藤 将勝】

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