2024年11月22日( 金 )

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株式会社 博多石焼大阪屋 取締役会長
福岡商工会議所 副会頭 西川 ともゑ

博多で愛されて90年の郷土料理店

oosakaya 博多・中洲にある「博多石焼 大阪屋」は、1926年に産声を上げた、今年で創業から90周年を迎える郷土料理店だ。初代・西川清太郎氏が、当時はまだあまり知られていなかったアイスクリン(アイスクリーム)を皆に食べてもらおうと、大阪から福岡に出てきて「味の大阪屋食堂」を開いたのが同店の始まりであり、博多にありながらも「大阪屋」と名付けられた店名の由来となっている。ただ、アイスクリンが夏の季節商品ということもあって、大阪で「ハレの日の特別料理」として親しまれていたすき焼きの提供も開始。大正から昭和初期にかけて活躍した地元作家の夢野久作の著書『山羊髯編集長』のなかにも同店のものと思われるすき焼きが登場するほど、地元で愛される料理となった。

 その後、戦後53年に1階を「食堂の大阪屋」、2階をすき焼き・水炊きの「大阪屋別館」として2階建てビルを改築した。そして80年に、現在の同店の名物料理である「博多石焼」を新メニューとして打ち出し、店名も『博多石焼 大阪屋』へと変更。88年には5階建て店舗を新築した。
 さらに、2009年3月には石焼用の無煙ロースターを(株)西部ガスと共同で開発するとともに、店内を改装。1人でも気軽に利用できるカウンター席やテーブル席に加え、数寄屋造の個室や130名の大宴会も可能な大広間、さらには日本庭園に滝と川が流れる特別なフロアなど、これまで以上に用途に合わせてさまざまな利用が可能になるよう生まれ変わった。

 新鮮な素材にこだわり、四季折々の博多の郷土料理や自慢の石焼料理を地元銘酒や焼酎などとともに心ゆくまで楽しめる同店は、創業以来、長年にわたって博多の味を守り伝え続け、博多・中洲の地で多くのお客に愛されてきた。そんな同店は今年創業90周年を迎えるが、それを記念して、たらば蟹、活ひとくちアワビ、佐賀牛などを石焼で豪快に焼く特別コース「九寿(きゅうじゅ)コース」も3月から提供している。

老舗を切り盛りする『ごりょんさん』

 そんな同店を女将として切り盛りしてきたのが、(株)博多石焼大阪屋の取締役会長である西川ともゑ氏だ。西川氏は福岡・博多で育ち、大学卒業後に小学校から同級生だった夫と結婚。子育てに料理に家事にと、約10年間を専業主婦として過ごす。「結婚するまでは、料理なんてほとんどしたことがありませんでした。ですが、子どもが生まれてから、美味しく栄養のあるものをきちんと食べてもらおうと必死に頑張っていたら、主婦の仕事が楽しくなってきました」(西川氏)と、毎日の食事にはとくにこだわった。
 そんな西川氏に転機が訪れたのは、34歳のとき。夫が先代から「大阪屋」の後を継ぎ、西川氏もまた女将として奮闘することになったのだ。当時の博多・中洲と言えば、映画館が立ち並び、老若男女がこぞって足を運ぶ一大テーマパークのような場所。そんなにぎやかなまちにある「大阪屋」には多くのお客がひっきりなしに訪れ、また海外からのお客が来店する機会も多く、西川氏は日々奮闘しながら女将として采配を振るっていった。『ごりょんさん』とは博多の商家の奥さんのことを指す敬称だが、西川氏はまさに正真正銘の博多の『ごりょんさん』だ。
 「私が店に入ってから30年以上が経ちましたが、博多でしか、当店でしか食べられないものを出し続けたいと思い、日々精進してきました。日本人、外国人を問わず、博多に来られた方には地元のお酒や、海の幸、山の幸を楽しんでいただきたいですね」(西川氏)。

 現在は社長の座を譲り、大阪屋の切り盛りを自身の息子、娘に託している。今年5月に90周年を迎えたが、こちらについても、2人に全面的に任せた。
 「私は親から『七光』をもらい、それに『一光』を加えて次の世代へと受け継いだつもりです。それにまた『一光』を足すのが、息子、娘の責任であり、考えることではないかと思います。大阪屋には90年の伝統がありますが、伝統とはただ模倣して受け継ぐというものではなく、継承プラスその時代に合ったニーズをきちんと受け止めて、そしてつないでいく、ということではないでしょうか。私は、自分の母を一番尊敬していますし、自分自身かくありたいと思っています。私が生み育てた子どもたちですから、私も子どもたちに期待していますし、誇りを持っています」と、大阪屋を担う次の世代への期待をのぞかせる。

(つづく)


■INFORMATION
(株)博多石焼大阪屋
代 表:西川 真太郎
所在地:福岡市博多区中洲5-3-16
設 立:1953年11月
資本金:1,000万円
TEL:092-291-6331
URL:http://www.osakaya-15.com

<プロフィール>
nisikawa西川 ともゑ(にしかわ ともゑ)
博多部で育ち、結婚後10年間の専業主婦時期を経て、(株)博多石焼大阪屋の女将として采配を振るう。1998年から博多部の女性でつくる「博多ごりょんさん・女性の会」会長、2011年から福岡商工会議所女性会会長を務め、14年11月からは福岡商工会議所副会頭を務める。

 
(後)

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