2024年11月22日( 金 )

外遊三昧後もマイナカード強行姿勢の河野大臣

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河野大臣
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    マイナカード総点検の陣頭指揮を取るはずの河野太郎デジタル担当大臣が、1週間半にわたる外遊を終えて帰国したが、マイナ保険証一本化の見直しを求める国民の声を聞き流す傲慢な姿勢に変わりはなかった。帰国後、初の会見は7月28日。前日に岸田首相が「医療関係者など現場の意見をうかがいながら(見直しを)考えていきたい」と述べたことをふまえ、私は河野大臣に次のように質問した。

 ──岸田総理が「意見を聞く」と語った医療現場の不安が十分に払拭されていなくても、マイナ保険証一本化は延期しないということか。大臣は、国民全体に対して「世論調査などで不安払拭がどれくらい進んだのか調査することはしない」とのことだが、医療現場に対してもアンケート調査は行わず、医療現場の不安が残っていても(マイナ保険証への)一本化は進めるということか。岸田総理は医療現場の声を「単に聞く」だけ、と理解していいのか。

 河野 国民の皆様、医療現場の皆さまの不安を払拭するための措置をしっかりと行ってまいります。

 ──(不安を払拭)しなかった場合の話を尋ねている。半分以上の医療現場が不安を感じていても(マイナ保険証一本化を)進めるのか。

 河野 無言。

 医療現場へのアンケート調査について質問したのは、岸田政権(首相)が医療現場の意見を聞き流してマイナ保険証一本化を強行する恐れがあると見たからだ。

 7月18日の本サイト記事「マイナ保険証一本化で岸田首相の詐欺的説明を放置する河野大臣」報じた通り、岸田首相は会見で「マイナ保険証一本化の大前提は、不安払拭の措置の完了」と述べたが、河野大臣は措置完了時の世論調査(不安払拭が十分にされたのかのチェック)を否定した。つまり、対策を実施すれば「措置の完了」とみなし、たとえ国民の不安払拭が十分になされていなくともマイナ保険証一本化は進めるという、国民騙しの詐欺的説明であったのだ。

 “やってる感”の演出で事足れりとする姿勢を目の当たりにしていたからこそ、私は今回の岸田首相の医療現場視察でも、同じような詐欺的対応が繰り返される可能性が大きいと考えた。現場の意見を聞きはするが、アンケート調査で医療関係者の不安が十分に払拭されたか否かはチェックせず、とにかくマイナ保険証一本化を進めていくというわけだ。このことを帰国後の初会見で河野大臣に聞いたのだが、大臣はまともに答えることはなかったのである。

 民意軽視の岸田政権に対し、野党(維新と国民民主は除く)は対決姿勢を強めている。7月26日にはマイナ保険証一本化の見直しを求める集会が開かれ、立憲民主党と共産党と社民党の幹部議員がマイクを握った。先陣を切ったのは立憲民主党の長妻昭政調会長で、次のように訴えた。

 「昨年の骨太の方針では『希望すれば保険証は交付しますよ』という主旨の記述が書いてあった。ところが昨年の秋に突然、(河野)大臣が『保険証を廃止します』と。これは典型的なアメとムチではないのか。『二万円あげます』というアメがあり、それでもマイナンバーカードをつくらない人は保険証がなくなるというムチがあり、こういう非常に分かりやすいことを国民の皆さまに上から目線でやっていくことについて、やはり皆さんは疑問が大きく膨らんでいるのではないかというふうに思っております。」(立民・長妻政調会長)

 続いて、共産党の小池晃書記局長がこう訴えた。「『保険証をなくしてほしい』という声は国民の方から上がったのか。誰もそんなことを求めていないと思う。これは『保険証を残そう』の1点で党派を超えて力を合わせて、『保険証存続を勝ち取ろう』と訴えたい。自民党のなかからもいろいろな声が出始めた。世耕参院幹事長は『期限にこだわりなくやる』。それから萩生田政調会長は『無理にお尻を切らなくてもいい』と。『無理にお尻を切って法案を通したのは誰だったのか』と言いたくなる。でも与党の幹部のなかからもこういう声が出てきて、あと一歩というところまできているのではないか。」(共産・小池書記局長)

 最後を締めた福島みずほ参院議員も次のように訴えた。「なぜ保険証を廃止しようとしているのでしょうか。G7のなかで健康保険証と紐付けている国はないわけです。それはなぜかというと、やはり医療情報が機微情報だからだと思います。」「なぜ“暴走(河野)大臣”の一言で廃止するのか。どこかでハッキングや不正があったら、非常に重要な情報が流出していく。と、ここまで問題が噴出しているのに強行するのは愚の骨頂だ。」(福島参院議員)

マイナ保険証一本化の見直しを求める集会で発言する長妻昭立憲民主党政調会長。右は小池晃共産党書記局長、福島みずほ参院議員。
マイナ保険証一本化の見直しを求める集会で
発言する長妻昭立憲民主党政調会長。
右は小池晃共産党書記局長、福島みずほ参院議員。

 これに対して維新は、「第二自民党」(馬場代表)らしく自民党と足並みをそろえた対応をしている。そこで私は、7月26日の藤田文武幹事長会見で「マイナ保険証一本化見直しを求める集会があって、立憲と共産と社民の方が参加していたが、維新はいなかった。第二自民党化で次の選挙に勝てるという自信があるのか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。

 「マイナ保険証とかマイナンバーのミスを糾弾し続けて、彼ら(立民・共産・社民)は何を目指しているのか。(反対するなら)マイナンバーが織りなす社会インフラを整えようということ、これをデジタル社会のインフラにしようということ自体まで反対しないと、論理的整合性がない。ちょっと延期しようとか、それで(内閣)支持率が下がっているのではないかという予測のなかで騒いでいるだけの話だと、私には思えてならない。」(維新・藤田幹事長)

 マイナ保険証一本化をめぐる激突の構図がみえてきた。「推進の自民・公明・維新(第二自民党)対見直しの野党(立民・共産・社民など)」という構図だ。次期総選挙での一大争点になるのも確実で、この構図がそのまま選挙戦に持ち込まれる可能性も十分にある。マイナカード問題をめぐる与野党の攻防から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

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