課題が山積し開催が危ぶまれる大阪万博の現状(後)
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運輸評論家 堀内 重人
2025年春に大阪万博の開催が予定されているが、会場となる夢洲(ゆめしま)はゴミの最終処分場であった。汚染水やガス噴出以外にごみを埋め立てて造成した島であるから、地盤沈下の問題が避けて通れない課題だ。それに加え、大阪市が予想する来場者があった場合、地下鉄や路線バスによる輸送、下水処理などの課題が残る。開催まで残り2年となったが、夢洲にはパビリオンすら満足に整備されていない。
筆者は、夢洲は埋め立て地であることから、「なぜ神戸や関西国際空港から船による輸送も検討しないのか」と考えている。
万博の来場者は、日本だけでなく海外からも来ることが予想される。それならば関西国際空港へ到着した来園者を、船で夢洲の万博会場まで運ぶことを視野に入れるべきだ。関西のなかでも、神戸方面から来訪する人たちにとってみれば、大阪(梅田)へ出て地下鉄よりも、神戸港から船によるアクセスのほうが便利である。四国からの来場者もあることから、高松や徳島からの船によるアクセスも検討すべきだが、それらが検討された形跡もない。
下水処理などの課題
一方、16万人が1日中、夢洲で活動するとなれば、トイレの問題も無視できない。トイレの数を確保すれば良いだけでなく、汚水の処理や手を洗う上水の確保も課題となる。
環境問題に関しては、最大の問題である糞尿処理を夢洲で行わなければ、別の場所までの糞尿を運ぶ必要があり、それをどのように輸送するのかという問題が生じる。下水に関しては、近隣の既存の下水処理施設を使用する計画となっているが、もし1日当たり16万人が来訪した場合、その処理量を圧倒的に上回ることが懸念されるという。
万博の大人1人あたりの入場料が7,500円と、USJの入場料よりも割高になることが、公表されていることもあり、開催すれば閑古鳥が鳴くことが懸念されている。
大阪府や大阪市が面子を維持するためにサクラを動員して、来場者数に関しては予想通りに大成功するとしたとしても、交通問題や汚水処理の問題で大混乱となることが避けられない。現状では成功しても問題があり、失敗すれば負の遺産になる可能性があり、八方塞がりの状況にあるといえる。
開催を延期するか、開催するとしても
規模を縮小する必要がある万博の開催自体がリスクでもある。万博には153カ国・地域が参加を表明しており、このうち56カ国・地域が独自のパビリオンを建設するとしている。だが、まったく工事が始まっていない。
こうした状況を受け、大阪市などの関係者からは「あと2年もないのに、今から着工して全部完成させることはどう考えても無理である。役所のなかでは万博延期説まで流れ始めている」という。
確かに地盤沈下が激しく、ゴミの埋め立て地であることから、汚染水やガス噴出が発生する夢洲ではこれからパビリオンを建設するとなれば並大抵のことではない。
「工事が遅れるだけでなく、万博から『撤退』する国もあるだろう」と、予想する関係者もいる。関経連の会長で、住友電気工業の松本正義会長は、万博を準備する日本国際博覧会協会の副会長でもあるが、7月18日の記者会見で「パビリオンの建設を意思表示した56カ国のなかにはパビリオンの設計もない、何の反応もない国がある」という旨を公表した。
パビリオンの建設を表明した国からすれば、今回の国や大阪市などの大阪万博への対応が、「まったく話にならない」ものだったということだろう。これでは万博から撤退する国があっても仕方ないといえる。
このような状態で万博を開催すれば、閑古鳥が鳴くことは間違いなく、万博の開催を延期したうえで、規模も縮小して開催することも、視野に入れる必要がある。その際は、割高になり過ぎた入場料を大幅に見直すべきことはいうまでもない。
(了)
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