2024年11月27日( 水 )

消費者不買運動が効果的示威行動

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、東京電力福島第1原発の処理後汚染水の海洋放出が明日24日にも開始されるとみられるなか、いまこそ原発事故による経済的損失の責任を東電と国に認めさせる必要があること、そして、そのためには当該産地の水産物を忌避する運動が国民の間で広がるのが一番であることを指摘する8月22日付の記事を紹介する。

 リニア建設の強行、原発稼働推進、処理後汚染水海洋放出、軍事費倍増。岸田暴政が猖獗(しょうけつ)を極めている。暴政の原動力はどす黒い欲得の塊。「いまだけカネだけ自分だけ」の欲得亡者が日本を破滅への道へと導いている。

 原子力規制委員会は7月7日に検査修了証を交付し、処理後汚染水の放出を認めた。IAEA(国際原子力機関)は7月4日に「国際的な安全基準に合致している」「人と環境に対し無視できるほどの放射線影響」などと評価する報告書を公表。岸田首相は8月21日に全漁連会長と面談。「理解を得られた」として8月24日にも処理後汚染水の海洋放出を開始する構え。

 政府は処理後汚染水の海洋放出について「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」ことを確約してきた。

 全漁連(全国漁業協同組合連合会)は6月22日の通常総会で「ALPS処理水海洋放出の方針に対する特別議決」を採択。「ALPS処理水の海洋放出には反対であることはいささかも変わることではない」「漁業者の長期に亘る不安を取り除くことはできない」ことを明確にした。したがって、岸田内閣は「関係者の理解なしに」処理後汚染水の海洋放出を強行することになる。

 とはいえ、全漁連の対応は不自然そのもの。処理後汚染水の海洋放出を強行する政府について「約束が破られたのではないか」と問われた全漁連の坂本雅信会長は「約束というのは破られてはいないけれども、しかし、果たされてもいない、そういうように思っています」と述べた。

 処理後汚染水の海洋放出に反対であることを明示するなかで海洋放出するのは客観的に見れば明白な約束違反。それを海洋放出に反対だとする全漁連が「約束というのは破られてはいない」とするのだからお話にならない。

 結局のところ、自民党支持の全漁連に政府の暴走を止める気概ははじめから存在しないということ。かつて環境相が「最後は金目」と述べたが、結局、政府の予算措置での「金目」が譲歩の条件になっているのだと推察される。

 トリチウムを除去できない状態での処理後汚染水の海洋放出は、どれだけ希釈しても現存するトリチウムをそのまま海に捨てる行為であることに変わりはない。処理後汚染水の海洋投棄に反対する消費者は処理後汚染水海洋投棄地に近い産地の水産物の購入を拒絶することになるだろう。

 消費者には、自分の判断で安心できるものを購入する権利がある。こうした消費者の行動によって漁業者が損害を蒙る場合、その損害を補償するべき者は消費者でない。漁業者は日本の消費者を甘く考えずに処理後汚染水の海洋放棄に徹底抗戦すべきである。安易に妥協するなら漁業者が損害を受けることについての同情は薄れることになる。

 とはいえ、問題の本質は別のところにある。

 本当の責任がどこにあるのかを明確にすることが必要不可欠。問題の根源は原発事故を引き起こした事業者にある。国も原発の地震・津波対策が不十分であったにもかかわらず適正な対応を講じていなかった。国と事業者が原発事故の全責任を負う。電力事業者だけでなく国の責任が問われねばならない。

 原発事故後に電力会社の責任問題が浮上した。原賠法は原発事故の損害賠償責任を事業者に負わせている。事業者に無限責任を負わせることが法律に明記されていた。損害賠償額は東電の能力をはるかに超える。したがって、東電を法的整理し、東電の責任を問う必要があった。しかし、当時の民主党政権は東電の責任を問わなかった。

※続きは8月22日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「消費者不買運動が効果的示威行動」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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