2024年11月23日( 土 )

岩手県知事選で泉前明石市長が達増知事の応援演説

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

    明石市の10年連続人口増を達成し、総理大臣待望論も出始めた泉房穂・前同市長が8月29日、盛岡市内で「シン・地方自治」と題して講演した後、岩手県知事選候補の達増拓也知事への応援演説も矢巾町と紫波町で行った。

 泉前市長は、県知事選や国政選挙で与党系候補が強調する「中央とのパイプの重要性」を「都市伝説」と一刀両断にした。質疑応答タイムで若い男性の質問に対して、次のように答えたのだ。

 「俗にいう『国とのパイプ』とか、『国と喧嘩したら何かお仕置きがある』という話があるが、結論からいうと、こんなに口が悪くて、こんなに喧嘩をするが、明石市は滅茶苦茶国の予算を取れている。なぜかというと、ちゃんとやっているからです。国の官僚はある意味ちゃんとしていて、ちゃんとした政策にはちゃんとした予算をつけるものです。ちゃんと筋の通った政策をやり、ちゃんと当てはまっていれば、予算はつきます。当たり前です。そうではないとまずいわけですから。

 達増知事も元官僚。そういう意味では岩手県は達増知事によって、国の本来のメニューはちゃんと取れていると私は思いますし、明石に関しても、こんな濃いキャラでこんなに喧嘩をしまくっているが、明石市は人口増、税収増、おまけに国からのお金もいっぱい来ているから、それ(国とのパイプ)は関係ないとホンマに思っている。

 それは多分、都市伝説のようなものと違うかな。『頭を下げたらお駄賃もらえる』というような時代ではないと思う。未来に対してちゃんと責任がもてるような政治をするのかどうかが問われていると私は思っていますし、まさに、その姿を岩手から広めて欲しいと願っている立場です」。

 講演後、達増知事と矢巾町で合流。街宣車前でマイクを握った後、紫波町に移動。ここでも達増知事と並んで熱弁を振るった後、囲み取材にも応じた。

 ──(地元記者)(告示前に盛岡市内で開かれた)県民集会にもいらして、告示後に(岩手県に)入られた理由は?

 泉 それは全国的に注目を浴びている岩手(県知事選)がどうなるのかが大きいわね。岩手については、言葉を選ばないといけないが、小沢さんも総選挙(小選挙区)で負けて、参院選も(野党系現職が敗れて)ひっくり返った状況で、ある意味、岩手は全国的にいうと、象徴的なエリアで、そこが大きく変わろうとしている。それが今回の知事選でどうなるのかが非常に大きい。

 そういったなかで、未来に対する投資──明石の場合の医療費や保育費の無料化を、達増さんは県レベルで市町村と連携してスタートを切った。この知事選に間に合ったわけです。それが有権者にどう反応されるのか。すぐに効果が出ない面がある。(時間が)少しかかる面があるのだが、ここは少し持ちこたえて知事に通ってもらって、岩手の地にて新しいモデルを、成功事例をつくって欲しい。人口30万人の明石市で一定程度できた自負はある。これを、東北の地の岩手県という、ある意味、非常に悩ましいエリアで1つの成功事例をつくれるのかどうかというのは、これからの全国(の政治)に関わってくる。岩手からモデルをつくって欲しいし、そのために自分としては全面的に応援したいと。

 ここで達増さんが当選することは、私も言ったけれども「岩手県民のため」「達増さんのため」とかもあるけれども、それ以上に「国のため」「国民のため」です。明石市民を含む国民にとっても、この岩手の選挙は問われると思うので。

 ──(地元記者)「持ちこたえる」という言葉が出てきたのがすごく気にはなったが、外から見ていて、「ここは何とか達増さんに勝ってもらわないと政治が変わるのかな」という思いは、今回、来た理由にはなるのか。

 泉 そこは、今回、いろいろなかたちで関わらせてもらったが、逆に岩手の地の特殊性があって、岩手は逆に全国的に見たときにある意味逆の政治スタイルでやってきたわけだ。それが逆に戻りかけている状態のなかで、いま(達増知事が)言っていたが、「時計の針を戻すべきではない」と。

 いま私が思うのは、国の中央省庁、とくに財務省中心の政策によって、逆に国民負担増で国民を苦しみ続けているから日本の国は30年間、経済成長もせずに給料も上がらず、にもかかわらず増税と保険料上乗せと物価高で三重の苦痛で国民は苦しんでいるわけやん。にもかかわらず、「増税」と言っているわけでしょう。そういった意味で中枢におられるその方(注:鈴木俊一財務大臣)がある意味、この県において多大な影響力をお持ちだ。あとは、華やかな経歴をもつタレント候補とか二世三世とか有名人とか、あるいは女性によるイメージ戦略で、政治を動かしている面がある。

 もっと大事なのは、本気で県民の顔を見ることであり、生活のリアリテイだと思う。今回の岩手(県知事選)はそれが問われていると思っていて、ある意味、象徴的な華やかなる候補者ではない実務家肌(の人が望ましい)。しかしながら、ちゃんと市町村と連携し、県民の生活のしんどさに鑑みて、子育て支援に一気に舵を切った達増知事という構図だから、そこがどう評価されるのかというのは今後の日本全体にとっても大きいと思う。

 私は明石市長を12年で区切りをつけて、(応援した)明石の次の市長候補と市会議員と県会議員、予定通り、7人全員当選したが、兵庫県内の三田市長選挙もある意味読み通り、全政党敵でも(支援新人候補が)勝ったが、次は岩手やね。ここはある意味、現職を応援するパターンで、これまでと違うが、共通しているのはどっちを見て政治をするのかで、市民・県民の方を見た政治をするものと、国の中央省庁、とくに財務省を中心としたお役人、国の方ばかりを見ている政治家との違いで、どちらを有権者が選ぶのかというあたりなので、今回の岩手(県知事選)は大きいと思う。

 これを受けて私は「そういう中央とのパイプの太さがいるのかどうかを問う選挙でもあると」と聞くと、泉前市長は次のように答えた。

 「そうやね。まさに財務省中心の方で財務省と関係が深いとお金が下りてくるかのような都市伝説。そんなことはない。明石市なんか国とドンパチやっていたけど、無茶茶、国の予算を取っているよ。ちゃんとやっているからやん。国の金も捨てたものではなくて、ちゃんとやった政策には予算がつくに決まっている。そういう意味では達増知事が勝って、ある意味、ちゃんとした政治をやってきているから国から(の予算)ももらえているし、当たり前のことと思うが・・・。『国とのパイプ』なんて都市伝説と違いますか。いつの時代やん。そんなの見たことないわ」。 

 これに対して地元記者が「明石市では少なくとも見たことがないということですね」と相槌を打ち、私も「今でも政治家の多くが『国とのパイプ』と言っている」と補足すると、泉前市長はさらに勢いづいて、マシンガントークを続けた。

 「国とのパイプなんて切るようなパイプばかりやん(記者団から笑い)。パイプだって、向こう(国)が押し付けてくる。いらん、そのパイプ。市役所でやっていると、国から訳の分からない仕事を押し付けられる。訳の分からない計画をつくれとか。訳の分からない、見もしない報告書をつくれとか。その結果、市役所は忙殺をされている。今回のマイナカードもそうやで。国が偉そうなことをいうが、誰が仕事をするのかといったら自治体の現場やんか。急に思いつきでやられたって現場が混乱するだけやないか。

 そういう意味で国が地方を助けているどころか、地方への嫌がらせを続けている状態だから、国なんか仕事をしない方がいいくらいで、市長をやっていてホンマに思った。国から助けられたことはほとんどないで(記者団から笑い)。みんな思い込んでいる。国が上で、次に都道府県があって、次が市町村で。国・都道府県・市町村の順番で行ったら、一番下に市民がきてしまう。逆や。ど真ん中が市民、国民や。ど真ん中に市民、国民がおって、そのすぐ横に市町村とか都道府県がある。国なんか遠いところにいて、市民、県民の顔を見られないところにいて、いちいち決めてくるなと。国も発想の転換がいるのではないか。国がすべてのことを決めて(地方自治体は)黙って従えではなくて、地方特性を生かして、地方の頑張りを国が応援すると。これが国政における大きな方針転換ではないか」。

 泉前市長の囲み取材は10分以上にもおよんだが、翌日は県南に移動。奥州市と一関市の4カ所で街宣した後、個人演説会も3カ所はしごをするというタイトな日程(2泊3日)をこなしたのだ。

 泉前市長は囲み取材の最後にこう強調していた。「岩手県知事選がどうなるのかは、国政にも影響が大きいし、他の都道府県選挙や市町村選挙にも影響すると思う。どっちを向いて政治をするのか。国とのパイプを選ぶのか、市民・県民を見た政治家が選ばれるのか。この二択です。市民・県民の生活を見る政治家が選ばれていかないと、日本は本当に良くならないと思っています」。

 事実上の与野党対決となり、泉前市長が応援に駆け付けた岩手県知事選は9月3日が投開票。結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

関連キーワード

関連記事