【山口FG特別取材】吉村元会長の亡霊にとらわれ続ける山口FGの現状(前)
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浜崎裕治氏が愛した山口銀行
今年4月21日、金融ジャーナリストで、(株)データ・マックス顧問も務めていた浜崎裕治氏が死去した。浜崎氏は山口銀行元取締役であり、かつて同行で起きた頭取交代劇の詳細を書き記したことでも知られる。
浜崎氏は山口銀行OBとしての誇りをもち、同行を深く愛した人物であった。それゆえに昨今の山口銀行の有り様を憂い嘆き、変革を訴えてきたのである。現在の同行関係者には以前から浜崎氏の良からぬ噂を吹聴している者もおり、口うるさい元取締役の死去に安堵しているとも聞こえてくるが、まったくのお門違いである。現役の社員・行員や同行OBから浜崎氏に情報が提供され、激励の声が届いていたことを重く受け止めるべきである。
Net IB-NEWSでは、今後は浜崎氏の愛した山口銀行(現在の山口フィナンシャルグループも含む)への批判を慎むことも検討してきたが、現在も多くの社員・行員から届けられる声からして社会的責任を負う銀行の姿とは思えず、今後も銀行としてのあるべき姿を問うていきたい。それが浜崎氏の思いを受け継ぐことになると考えている。我々は自信をもって言える。浜崎氏は誇り高きバンカーであったと。
さて、山口FGで起きた吉村猛・元会長の解任クーデター事件から2年の歳月が過ぎた。にもかかわらず、現経営陣は今も吉村氏にすべての責任を押し付け、旧態依然の体質を改めようという意志はなさそうだ。今回の記事では山口FGの現状についてレポートする。
クーデターを主導した監査等委員(社外)のその後
山口フィナンシャルグループ(以下、山口FG)では、今年6月28日の株主総会で2名の取締役監査等委員(社外)が退任した。社外の監査等委員は2名しかおらず、全員が同時期に交代となるのは異例のことである。
退任となった佃和夫氏、国政道明氏の両名は、吉村猛元会長の解任に際して主導的な役割を担うなど、社外から登用された非常勤の監査等委員の行動としては異常であり、適格性を著しく欠いていたことは事実である。吉村氏の解任後も山口FGのディスクロージャー誌(2022年3月期)で「特定の人、特定の部署に権限が集中したことも大きな問題」と語るなど、すべての責任を吉村氏に押し付ける態度をみせており、監査等委員である自身の責任からは逃亡を続けた。吉村氏が暴走したとするならば、それを阻止できなかった監査等委員の責任も重大である。上場企業としてのガバナンスが正常に働いていれば、独断専行のような事態は起きないはずだ。監査等委員であった両名は「退任」ではなく「解任」が妥当であったと考える。
NetIB- NEWSでは、内部告発された取締役会議事録からこの両名が吉村氏解任を主導したことを、連載記事「【検証】山口FG取締役会議事録」にて報じた。取締役会での発言は小学生のような屁理屈であり、一流企業の元経営者、弁護士という見識ある人物が発したものとは到底思えないものであった。これ以上関わるのは危険と判断したのか、どうやら退任することでうまく逃げ切ったようである。そして、吉村氏解任クーデター事件の真実は語られることなく、闇に葬られそうな気配を感じる。両名は上場企業の取締役監査等委員という責任ある立場から逃げたのである。株主は説明責任を問うべきではないか。
いまだに吉村氏に責任転嫁する取締役たち
不適切な言動を繰り広げ、群を抜いて不適格であった佃和夫氏と国政道明氏はこうして退任となったわけだが、他の社外取締役の適格性はどうであろうか。2023年3月期のディスクロージャー誌での発言には次のようなくだりがある。
山本謙 社外取締役(UBE(株) 取締役会長)
「当社の取締役会は、独立社外取締役が過半数、女性が3名ということで、多様性や客観性という点では非常に良い構成になっています。またスキル面でも多種多様でバランスのよい形になっていると思います。YMFGは、一昨年のガバナンスに関する問題を受け、改善報告書を提出いたしました。改善報告書を真摯に受け止め、その改善計画に基づき、社長以下の執行サイドも、取締役会で出た様々な意見に対して、情報提供や対応をされており、さらにより良い方向に進んでいる途上だと思います」永沢裕美子 社外取締役(現在は、取締役監査等委員)
「一昨年のガバナンスに関する問題では、株主はじめステークホルダーの皆さまにはご心配をおかけしましたが、こうした問題に客観的に気づき向き合うことができたことは本当に大きかったと思います。その後、執行サイドがボトムアップで声を聞いているということは私自身も肌で感じておりますし、ガバナンス体制としては一つ上のステージに上がれたのではないかと思います。ただ、課題はまだあって終わりではない、これからかなという認識でおります」驚いたことに、いまだに「一昨年のガバナンス」について語り、「客観的に気づき向き合うことができた」などと悠長に語っているのである。この両名は吉村氏が在任のころからの取締役であり、気付いていなかったとしたら職務怠慢である。その責任には触れず、問題点は吉村氏にあり、今もその課題解決に取り組んでいる途上だと言っているのである。
すべてを吉村氏の責任として永遠に語り続けるつもりなのだろうか。時間が経過したにもかかわらず、問題解決に至っていないのは現在の取締役の責任ではないか。どうも山口FGの社外取締役は同類ばかりが集まっているように思えてならない。
(つづく)
【特別取材班】
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