2024年09月28日( 土 )

立憲と国民で進まぬ福岡1区の候補者調整

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難航する福岡1区の調整

 「玉木氏では、自民党に利用されるだけで、なんにも変わりませんよ。」

 こう語るのは、立憲民主党(以下、立憲)の稲富修二・衆議院議員。9月2日に行われた国民民主党の代表選で、代表の玉木雄一郎氏と代表代行の前原誠司氏との一騎打ちとなり、結果は玉木氏の圧勝だった。産業別労働組合が玉木氏支持を鮮明にするなか、結果は予想されたことではあったが、日本維新の会や立憲の一部との連携を通じ、自民党に対抗する野党勢力の糾合を目指した前原氏が代表に就けば大きく変わると、期待する向きも少なからずあった。

 2000年に松下政経塾を卒塾した稲富氏と、1991年に卒塾した前原誠司氏とは、先輩・後輩の関係にあたる。県連会長・城井崇氏も同塾卒業生で、前原氏の秘書を務めた。こうした関係もあり、稲富氏は前原氏が代表就任することに活路を見出していた。

 現在、福岡県において立憲と国民は、県議会と福岡・北九州両市議会において1つの会派でまとまっている。しかし、国政となると話は別で、県内11選挙区の両党間の候補者調整は進んでいない。焦点となっているのは、県都・福岡市の玄関口である博多駅を有する福岡1区の候補者をどうするか、である。同選挙区は、2012年の衆院選で松本龍・元復興大臣が落選して以来、自民党議員が議席を握ったままにある。

 2日、立憲福岡県連の政治資金パーティーが行われた。ゲストに前明石市長・泉房穂氏を迎え、県連所属の国会議員や地方議員が勢ぞろいしたが、次期衆院選に立候補予定の新人のお披露目は行われなかった。

 福岡県内で立憲が擁立を決めているのは、比例復活を含めた現職の3選挙区のみで、その他の選挙区の擁立は進んでいない。その理由は、立憲と国民との間で話し合いがまとまらないことにある。両党の支持母体である連合福岡が間に入っているが、互いに譲らず、妥協点が見出せない状況にある。

 立憲には、国会議員が衆参合わせて6人、県議会議員14人、政令市14人に、一般市町村が15人の所属議員がいるが、国民は国会議員はゼロ、県議2人と北九州・福岡市に1人ずつと、一般市町村に2人の、6人しかいない。

 圧倒的に国民は不利な状況にある。産業別労組のなかにも、基幹労連やJAMのように国民から立憲に支持を移す労組が出てきた。

 紆余曲折を経て、国民は福岡1区を譲る代わり、県議選において複数区で立憲を含めた連合推薦議員がいない選挙区に「立憲は候補者を立てない」ことを求めたという。しかし、立憲は「国政と県議選は別だ」として、結局、調整は進まなかった。

 8月23日に博多駅近くで開催された国民の代表選の討論会において、玉木氏は立憲について、「党内に左寄りの、憲法改正に反対、原発再稼働もダメ、防衛費増強もダメという勢力がいる」と述べたが、旧民主党時代から続く左右対立が尾を引いている。玉木シンパと呼ばれる若い支持層や党員は、保守的な傾向が強く、リベラルな立憲を嫌悪する。

 自民党は政権を奪い返すためであれば、奇策も弄してきた。過去には、水と油のはずの社会党と連立し、仇敵の小沢一郎氏率いる自由党とも連立。現在は公明党と連立政権を組んでいる。立憲・国民両党には、そのように算盤を弾き、政権を掌握するための絵を描ける政治家がいない。

自民党による連立打診

 そうした旧民主の内輪もめを見透かすように、自民党内には、今月行うとみられる内閣改造で、国民から閣僚を迎えての自公国3党連立構想が浮上した。岸田文雄首相は、今回の内閣改造で刷新した人事を示し、政権浮揚につなげたい意向だという。

 野党分断も狙って連合の芳野友子会長と麻生太郎副総裁が会食を行うなど、接触も図ってきた。10月に任期満了となる芳野氏が続投することはほぼ確実であり、この機に民間労組を取り込みたいというのが自民党の狙いである。

 玉木氏は「まったく打診はない」と否定したが、自民党との協力を否定しない玉木氏に、疑念を持つ声があることは事実だ。

 官公系・民間労組いずれの関係者にも話を聞くと、「自民党とは組めない」という声が多い。

 自身も電力総連の組織内議員である守谷正人県議は、「自民党との連立政権入りは、産業別組合が認めないでしょう。国民を支持する4産別の、ゼンセン・自動車・電力・電機は、連合との関係を考えても支持しないと思います。連合福岡も静観している」と語った。

 自民一強をよしとしない国民も少なくないなか、主導権争いをしているようでは、次の衆院選も敗北しかねない。両党は、大局に立って候補者調整に決着をつけるべきだ。

【近藤 将勝】

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