【連載】党勢拡大に貢献もせず3選を目指す野田国義参議院議員(1)
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かつて全国最年少市長として世間の注目を集めた元八女市長・野田国義氏。小沢一郎氏の誘いを受け、2009年衆議院議員選挙で、秘書として仕えた古賀誠元自民党幹事長への刺客として立候補、比例区で復活当選した。13年に参議院議員(福岡選挙区選出)に転じ、現在に至る。衆参あわせ13年になるが、所属する政党の党勢拡大に貢献できていないどの声が聞かれる。本連載では、かつて北九州・福岡両市の首長ポストを押さえ、全国でも勢いがあった民主党(当時)が衰退した経緯およびそれに拍車をかけた野田氏の政治姿勢を問いたい。
(なお、本記事は政治メルマガの会員向けに以前に発信しているものと同じ内容のものですが、広く読者の方に読んでもらいたいとの想いから掲載しております)旧民社系との関係疎遠に
「野田は俺たちを裏切って立憲に行った。八女市長時代は自治労とがんがんやりあっていて、俺たちはその姿勢に共感して野田を応援したし、福岡の旧民社党の集まりにも呼びよった。信義が感じられん。俺たちが集めた名簿を返せといいたい」
激しい剣幕でこう語るのは、元ゼンセン同盟(UAゼンセン)の幹部で、八女市の隣、筑後市在住の田中良一氏。
UAゼンセンは、連合(日本労働組合総連合会)の構成産業別(産別)労働組合における最大組織である。そして、連合において最も右寄りの立場をとる組合でもある。左派的な総評(日本労働組合総評議会)から脱退し、同盟(全日本労働総同盟)を結成したのがゼンセン同盟であり、憲法改正に賛成で、幹部が徴兵制を容認する発言を行ったこともある。大会には組合旗とともに国旗を掲揚する。
当初は繊維業の労組が中心だったが、ジャスコ、ニチイやダイエーなど小売業の労組が加入し、現在はマルハンなどパチンコ業や、象印、旭化成といった製造業、ヤマダ電機など家電小売業、産経新聞のようなメディアまで、広く「全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟」(通称:UAゼンセン)の旗のもとに結集している。
同盟は冷戦時代、共産党に対してはもちろん、旧社会党系とは相いれなかった。有名な三池炭鉱の労働争議において、第二組合と呼ばれた会社寄りの穏健な組合は旧同盟に加入していた。田中氏は北朝鮮拉致被害者の救出運動に熱心で、05年にサザンクス筑後で開催された拉致問題の集会に、ゼンセンのみならず、交流があったJR連合や郵政労組などにも呼び掛けて、多くの参加者を動員したことがある。また、ゆめタウン八女での署名活動では、全イズミ労働組合がゼンセンに加入しているということで協力を受け、多くの署名を集めた。田中氏は現在もゼンセンのOBとして組織内に強い発言力をもつ。
民間労組からの野田氏の評価
「俺たちは野党だけれども、社会党や共産党とは違う、民間は連合から出たほうがよい」が田中氏の持論である。田中氏は筑後は八女の隣というよしみもあり、長年支援を惜しまなかったが、18年に野田氏が立憲民主党の院内会派に入った際、田中氏に相談はなかったという。
野田氏は13年の参議院選挙の時も福岡市内で開催されたゼンセンの集会に出席していた。しかし、多くの参加者は冷ややかな反応だったという。この集会はUAゼンセンの組織内候補、川合孝典氏の決起集会であったが、民主党から自民党に政権交代した直後で組合員の間では民主党への失望が強く、アベノミクスへの期待感のほうがむしろ大きかった。野田氏はこうした微妙な空気を知っていたはずだが、田中氏をはじめ旧民社党系の民間労組からみれば、共産党に近いと思える動きをするなど、野田氏は一体何を考えているのだと、疑念をもたれたことは間違いない。
12年から18年ごろ、会合で顔を合わせる機会があったが、野田氏は「僕は保守です。雇用を破壊し、TPPを進める自民党のどこが保守ですか」と繰り返していた。しかし現実には、野田氏と民間労組との溝が深まると同時に、全国でも勢いがあった福岡の民主党の影響力が低下していった。
民間労組は現在、国民民主党と立憲民主党に支持がわかれているが、官公労系の自治労や日教組と違い、政治運動に力を入れられない事情がある。民間企業は経営に失敗すれば倒産の危機に陥り、従業員とその家族の生活に影響をおよぼす。雇用を確保するためにも生産性を上げ、労使一体で企業の成長を進めていかなければならない。そうした立場からすると、野田氏の姿勢は自分の生活、給料のために政治家をやっているように映る。
次回は立憲民主党内における野田氏に対する評価がどのようなものなのか、取り上げていきたい。
(つづく)
【近藤 将勝】
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