2024年12月26日( 木 )

女性登用で刷新感狙うも政権の安定第一の改造内閣

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 13日、岸田文雄首相(以下、岸田首相)は内閣改造を行った。留任した松野博一官房長官が19人の閣僚名簿を発表した。

政局を意識した人事

 内閣改造に先立ち、自民党は13日午前、岸田首相(党総裁)も出席して臨時総務会を党本部で開催。麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長は続投し、小渕優子組織運動本部長は選挙対策委員長に、森山裕選対委員長は総務会長に、各々横滑りする人事を決めた。

 今回の改造内閣は、鈴木俊一財務大臣をはじめ主要閣僚を留任させるなど、政権の安定を優先した布陣だが、11人を初入閣させ、改造前は2人だった女性を増やすことで、刷新感を打ち出し支持率アップにつなげたい思惑がうかがえる。同時に、河野氏や高市氏らを閣僚に留任させるなど、政局を意識した人事にも見える。

 東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を所管する西村康稔経済産業大臣や、マイナンバーカードを所管する河野太郎デジタル大臣、高市早苗経済安全保障担当大臣も続投した。自民党内に交代論があった公明党の斉藤鉄夫国土交通大臣も留任した。

 安倍派の5人衆の1人である西村氏や、国民の批判が多いマイナカードを所管する河野氏、保守派の支持が根強い高市氏を留任としたところは、来年の総裁選での再選を念頭に、ポスト岸田の動きを封じる狙いが見え隠れする。

 初入閣組としては、総務大臣に鈴木淳司・元総務副大臣、防衛大臣に木原稔・元財務副大臣などを登用した。

女性閣僚が5人に

 留任含め5人の女性の登用は、国際社会から見て遅れている「政治分野における女性参画」という点で注目される。外務大臣に上川陽子氏、復興大臣に土屋品子氏、こども政策担当大臣に加藤鮎子氏、地方創生担当大臣に自見英子氏が就任。高市早苗氏は経済安保担当大臣に留任した。

 自民党は伝統的に男性中心であり、「おじさん政治」と野党やリベラル派に揶揄されがちである。閣僚に女性が増えることで、自民党の国会議員や同党所属の地方議員も女性が増えていくことは間違いない。

 しかし、ふたを開けてみれば、法務大臣も務めた上川氏と留任した高市氏以外はいずれも世襲である。

 土屋復興大臣の父は参議院議長や埼玉県知事を務めた土屋義彦氏。加藤子ども政策担当大臣の父は、自民党幹事長などを歴任した加藤紘一氏。自見地方創生担当大臣の父は、郵政担当大臣などを務めた自見庄三郎氏だ。

清和会支配に変化

 ただ、世襲だから悪いとばかりいえない面もある。親から受け継いだ地盤とともに、歴史も受け継ぐからだ。

 加藤紘一氏は山崎拓氏・小泉純一郎氏とともにYKKと呼ばれ、2000年に当時の森喜朗首相に対する野党の不信任決議案に同調する動きを起こした「加藤の乱」で失脚するまでは、自民党内で中心的な存在だった。自見庄三郎氏は、2005年に郵政民営化法案に反対票を投じたため、刺客として送られた自民党公認の西川京子氏に敗れ、落選した。

 2000年以降の自民党内の権力構造の変化により失脚した父を持つ加藤氏・自見氏が入閣したことは、小泉政権来の清和会支配が幕を閉じようとしていることの表れともいえる。同じことは、党4役の選挙対策委員長に小渕優子氏が就任したことに関してもいえよう。

 年齢構成を見ると、70代や80代の大臣が7人おり、文部科学大臣に就任した森山氏も69歳である。最年少の加藤氏が44歳で、その次は地方創生担当の自見氏が47歳と、記者と同世代である。自見氏は日本医師会の組織内議員だが、福岡県に地盤を持つ参議院議員。加藤氏については、熱を出した子どもの看病中に入閣の電話を受けたとのエピソードを披露したこともあって期待感もあるが、全体を見ると若い世代の声がどこまで反映されるのか疑問もある。

 多少の注目点はあるとはいえ、やはり政権の安定を優先したため、依然として「いつまであの人たち(安倍・麻生氏)に果実を与えるのか」(21年の古賀誠氏の発言)といわれるような、身内の論理に基づいた人事となった。期待される政治が行われるのかどうか、国民がしっかり見ていく必要がある。

【近藤 将勝】

<第2次岸田再改造内閣の閣僚名簿>
首相:岸田文雄(66)岸田派
総務:鈴木淳司(65)安倍派
法務:小泉龍司(70)二階派
外務:上川陽子(70)岸田派
財務:鈴木俊一(70)麻生派
文部科学:盛山正仁(69)岸田派
厚生労働:武見敬三(71)麻生派
農林水産:宮下一郎(65)安倍派
経済産業:西村康稔(60)安倍派
国土交通:斉藤鉄夫(71)公明党
環境:伊藤信太郎(70)麻生派
防衛:木原稔(54)茂木派
官房:松野博一(61)安倍派
デジタル:河野太郎(60)麻生派
復興:土屋品子(71)無派閥
国家公安:松村祥史(59)茂木派
こども政策:加藤鮎子(44)谷垣G
経済再生:新藤義孝(65)茂木派
経済安保:高市早苗(62)無派閥
地方創生:自見英子(47)二階派

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