安倍派は四分五裂したままでいいのか
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下村元文科相が森元首相を批判
岸田文雄首相は13日に実施した内閣改造で、自民党内の6派閥からの起用人数についてほぼ現状を維持した。岸田派は党内第4派閥であり、最大派閥の安倍派や第2派閥の麻生派、第3派閥の茂木派に配慮する必要があり、不公平感をもたれないようバランスを取ったかたちである。
ただ、岸田首相は麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長に近く、両派に対する配慮が強く出た人事となっている。麻生派は閣僚4人を確保し、人選はほぼ要望通りとなった。茂木派は茂木氏と小渕優子選挙対策委員長で党4役の半分を掌握し、3人が入閣した。
一方、安倍派は所属議員数から麻生派と同じ4人ということへの不満がある。昨年の安倍晋三元首相の逝去以降、100人から成る同派は後継会長が決まらず、先日ようやく主要メンバー「5人衆」と閣僚経験者などからなる15人の合議体での派閥運営となることが決まったばかりで、今後の会長選任は不透明な状況にある。
先日まで会長代理であった下村博文元文部科学大臣は現在も安倍派に強い影響力を持つ森喜朗元首相に嫌われているとされ、その15人のなかに入れてもらえなかった。下村氏は11日に「ABEMA Prime」の政治番組で「私は当選9期だが、4期以下は森さんを直接知らない」と指摘したうえで、「ここまで邪魔されるとは思わなかった。政界引退した森氏に影響力が残っているのは残念」と強く批判した。
下村氏は若手・中堅の議員と会合をもつなどしており、安倍派内の反主流派として派閥運営に異論を唱える場面も出てくるのは間違いない。その際に下村氏を支持し、同調する議員がどれだけ出るのかが注目される。
13日にはついに安倍派からの離脱者が出た。元国土交通副大臣の土井亨衆議院議員が同派の座長を務める塩谷立元文部科学大臣に退会届を提出した。塩谷氏は慰留し、退会届を預かるとしたが、土井氏は、後継会長を決められず、集団指導体制をとることへの不満があったという。退会が認められれば同派99人となり、続く離脱者や下村氏のような反主流派が出てくると、ますます求心力を失うことは確実である。
岩盤保守層が離反へ
安倍派は1979年の派閥結成以来、内部に大きく2つの流れを抱えてきた。1つは創立者の福田赳夫元首相の流れを汲むグループ、もう1つが岸信介元首相から安倍晋太郎氏、そして安倍晋三氏へとつながるグループで、現在も派内には両者が存在している。安倍元首相が存命であればこそ両者はまとまっていた。
二階俊博元自民党幹事長が「安倍の次は安倍しかいない」と評したように、安倍氏なき今、求心力を失い、派閥内の水面下の争いが起き、離脱者が今後も出るとなれば、岸田首相にとっては好都合な状況となる。
岸田派にいまだ影響力を持つ古賀誠氏などからの「いつまで安倍・麻生に配慮するのだ」という批判をあまり気にする様子がないのは、実質的に干した状態にしていれば、いずれ安倍派の力は落ちると考えているからではないだろうか。
これまで自民党内で外部の保守層の支持を集めていたのは安倍派であった。最近の動きに不安や不満を持つ保守層は、日本維新の会や参政党、新たに旗揚げされる百田新党へ流れる傾向が出始めた。
安倍派がこのまま影響力を喪失し、岩盤支持層の保守派からも見捨てられる状況になっていくのを黙ってみているだけでよいのか。個々の利益や思惑を超えて、大きくまとまらなければ、未来はないと申し上げたい。
【近藤 将勝】
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