旧統一教会の解散命令請求で捜査当局の強制捜査まで行くか
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政府は宗教法人法に基づき、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)の解散命令を請求する方針を固めた。所管する文化庁は、7回におよぶ質問権行使で集めた資料や高額献金被害者などの証言を精査し、献金集めに組織的な関与があったなどとして、解散命令の要件を満たすと判断した。
岸田首相の決断
昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件後、旧統一教会と政治の関係が注目され、離教した宗教2世や高額の献金を行い生活が破綻状態に陥った被害者などの救済を求める声が社会的に高まった。宗教法人法に基づいた税優遇などを付与した状態にあることは望ましくないとのコンセンサスが醸成されたことで、一気に解散命令請求へと流れが進んだ。
9月13日の内閣改造の記者会見において、岸田文雄首相は「法律に照らして、解散命令請求を行えるかどうかをしっかり判断したうえで手続きを進める」と述べ、「7回の報告徴収実施とともに、証拠収集も着実に進んでいる。しっかりとした結論を出すべく最終の努力を進めていく」と強調していた。
この間、旧統一教会側の反撃ともいえる動きが全国各地で行われた。福岡県議会を含む地方議会や自治体に、旧統一教会および関連団体との関係を断絶する決議などを行わないよう圧力をかける文書を送付したり、保守系言論誌などで、教団側の立場に立つライターが、被害者や離教した宗教2世を貶める記事を発表するといった動きもあった。
また、全国的には、関連団体の国際勝共連合が被害者救済を担ってきた弁護士団体を「共産主義者」などと攻撃するビラを配布し、SNS上でも発信している。それに連動した街宣活動が、福岡市内でも展開され、通行人と公道で言い合いになるなどトラブルも生じている。
しかし、政府はそうした教団側の動きを横目に粛々と、解散命令請求の手続きに向けた動きを行っていった。
宗務課の体制強化
ただ、所管する文化庁宗務課の定員は8人で、旧統一教会に関する調査体制の脆弱さが指摘されていた。岸田首相は昨年10月28日の記者会見で、同課の人員を38人に増やす方針を表明。永岡桂子文部科学大臣は同11月1日の会見で、同日までに文科省内から22人を配置したほか、法務省、警察庁、金融庁、国税庁から8人の応援を得たことを明らかにしていた。
応援部隊の増員で宗務課の業務速度は格段に向上、7回の質問権行使が可能となった。
教団側シンポで解散提言
10月1日に東京都内で開催された、旧統一教会側の「信者の人権を守る二世の会」主催のシンポジウムに出席した宗教学者の島田裕巳氏は、宗務課の増員について言及したうえで「国は本気で解散させる方針を貫いている。教団は相当深刻に受け止めた方がいい」と指摘。主催者の2世信者に「どうしたらいいですか」と問われ、「自主解散、関連団体もすべて解散するしかない」と発言した。
会場およびオンラインで視聴していた人たちにとって想定しなかった発言であり、会場が一瞬静まり返った。
島田氏は「一世がやってきたことが問題だ。そこ(検証)をしないと世の中の人たちは納得しない」とアドバイスしたが、「二世の会」代表は困惑を隠しきれない様子だった。
旧統一教会の解散命令請求について、10月12日にも文部科学大臣の諮問機関である宗教法人審議会が開催され、解散請求の方針を説明する方向であるが、捜査当局の動向も注目されている。
2007年から10年前後にかけて、旧統一教会関係者が行った霊感商法の摘発が相次いだ。警察庁は、警備局や生活安全局が指揮を執って、福岡県警を含めた全国の警察が、連携するかたちで家宅捜索や関係者の逮捕を行い、韓国に流れたとみられる資金の流れの実態を解明しようとしたが、政治的圧力により教団本部まで捜査がおよばなかったといわれる。
解散命令請求にあたって、捜査当局が本腰を入れて、旧統一教会の資金の流れや献金などの証拠を押さえることができるのか、注目される。
【近藤 将勝】
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