ラグビーワールドカップ2023の総括とラグビー界のこれから(2)
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厳格化レフェリングの加速
今大会において、大きなチェックポイントの1つに、レフェリングがあった。とくにDF面でのレフェリングが、より厳格になった。
具体的には、ワールドラグビー(WR)が今年3月、頭部へのコンタクトの対処手順(ヘッドコンタクトプロセス=HCP)を更新した。ハイタックルやショルダーチャージなどの危険なプレーから、選手の頭や首を守ることが目的。基準は、「肩より上部」「胸骨から上のタックルはNG」とされている。決勝のNZL vs SAは、4枚のレッド・イエローカード(レッド1、イエロー3)が発せられた。
ラグビーは競技特性上、身体接触=コリジョンが“合法的”に許されている。言い方を変えると、「合法的な喧嘩」と表現する関係者も存在する。ただし、“合法的”であるのでその裏には、アクションは「安全が最優先」と定義づけられているのも事実だ。
安全が最優先されるとなれば、危険なアクションに対しては、厳格なレフェリングが実行される。危険なアクションとは、故意な頭部や頸部への暴力的行為、パンチング、空中でのタックル、ノーボールの状態の選手へのタックルなどなど。とくに頭部や頸部へのアプローチに関してレフェリーは、(故意・過失問わず)神経を尖らせている。
W杯2023の48試合での1試合平均ペナルティ数20.3で、前大会の15.8を5ポイント上回った。なおイエロー・レッドカードは
イエローカード:55(前大会比 +27)
レッドカード:8(同 ±0)
【前大会=2019日本大会は45試合】単純計算で、毎試合1つ以上のイエローカードが発せられたことになる(レッド・イエローがゼロの試合は存在する)。
W杯開幕前、今般のハイタックル厳格化について、国内トップレフェリー数人に取材した。結論から述べると、各人見解が違っていた。「胸骨より上へコンタクトした場合は、絶対にペナルティにします」「ボールキャリーへのアプローチと見られたら、正当なアクションとします」と相反していた。
生身の人間の目と経験で判断を下すので、相反するのも止むを得ない。今大会は、“バンカーシステム”─WRによると「レフェリーがレッドカードを出すに値するかどうか判断できないが、少なくともイエローカードの基準を満たしている場合、その選手は現行のシンビンの規定に従って10分間フィールドから退場させる。
その後、ファールプレーレビューオフィシャルは、8分以内に、独立した主催放送局(WR)が作成したすべての映像と、ホークアイ・スプリットスクリーンやズーム技術などのテクノロジーなどを活用し、その事象を検証し、レッドかイエローの結果を決定」する制度が導入された。
つまり、レフェリーの主観ではなく、より俯瞰的・客観的な視点に重きをおいた危険なアクションへのレフェリング制度だ。ただ「バンカーシステム」も最終的には人間が判断する。安全と危険のアクションは紙一重であり、また故意か過失を100%見極めるのは、非常に困難だ。
厳格化されるレフェリングについては今後も、国内外ラグビー界での議論が続くであろう。
(つづく)
【青木 義彦】
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