IRの現状とハウステンボスへ誘致の是非(後)
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運輸評論家 堀内重人
IRは「Integrated Resort」の頭文字で、「統合型のリゾート」という意味であり、カジノを含むIR=統合型リゾート施設の整備法は、2018年7月に成立した。
IRの整備をめぐっては、地元への経済効果やインバウンド需要の拡大などを期待する声が多く、誘致を目指す動きが相次いだが、横浜ではIR誘致に反対を訴えた市長が当選して計画を撤回したほか、和歌山県では整備計画を国に申請するための議案を、議会が否決するなどの動きも出てきた。
長崎県は、ハウステンボスのハーバーゾーンにカジノを含めたIRを誘致する計画があり、国に申請しているという。
本稿では、カジノの是非と長崎県の計画について述べたい。ハウステンボスへのIR誘致計画
ハウステンボスの経営再建は、規模が大き過ぎたこともあり、一部の資産や設備を譲渡するなどして切り離し、固定資産税の支払いの負担を軽減しただけでなく、切り離した部分をフリーゾーンという入場料を無料にするエリアを設けて、ベンチャー企業を誘致して、人が集まる施設に変えたことが、成功した要因として挙げられる。また旅行業を得意としていたことから、外国からインバウンドを狙った経営戦略が、功を奏したといえる。
そんなハウステンボスも、現在は入場料が無料となるハーバーゾーンにIRを誘致する話があり、長崎県は国にIRを申請している。
いまだ国から免許を得ていないため、開業時期などは未定であるが、IRには国際会議が開催されるコンベンションホールや大型ホテルや各種エンターテイメント施設だけでなく、カジノも計画されている。
計画では、ハーバーゾーンがある場所は、ハウステンボスの奥であり、交通の便が良いとはいえない位置にあるが、長崎県は県道からIRへ入れるようにする考えである。そしてIRへの入場料は無料とするが、カジノは民間が運営するから有料になるという。また入場料などはまだ決まっていないというが、数千円は徴収することになるであろう。
ここで問題となるのがカジノである。長崎県は、IRのなかでもカジノからの売上による上納金の比率が高いこともあり、カジノも誘致したいと考えている。
だがカジノを誘致すれば、免許制を採用しようが、ギャンブル依存症対策を実施しようが、必ず治安が悪化したり、ギャンブル依存症が増加するなど、負の効果が表れる。
かつて横浜市もカジノを誘致する計画があった。上納金による収入よりも、治安悪化やギャンブル依存症となる人が増加するため、横浜市民は負の効果のほうが大きいと考えた。そしてカジノ誘致に反対の市長が当選したこともあり、カジノの誘致を断念した経緯がある。
ハウステンボスは、家族連れなどで賑わう観光地でもある。カジノを誘致すれば、子どもへの悪影響があるため、長崎県も上納金が入るという理由だけで、カジノの誘致を検討することは、慎むべきである。上納金よりも、カジノによる弊害への対策費のほうが嵩み、長崎県にとっても負の効果しか、もたらさないだろう。
ハウステンボスは、西日本を代表する巨大なテーマパークであり、かつ欧州の街並みや生活が息づくまちづくりが基本コンセプトに、誕生した経緯がある。
そのような概念とカジノは、相容れないこともあり、IRを誘致したいのであれば、コンベンションホールとホテル、レストラン以外に、映画館や水族館など、ハウステンボスの設備を補完するエンターテイメント設備を誘致して、相乗効果を図る方が、良いといえるだろう。それゆえカジノをともなわないIRとすべきである。
(了)
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