万博の国民負担増で「国民の身を切らせる」の正体露呈の維新
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大阪・関西万博への批判噴出で、主導した維新が失速している。4月の統一地方選で議席1.5倍増の目標を達成、奈良県知事選でも勝利して以降、立民を超える政党支持率を続けてきた。「次期総選挙で野党第一党奪取は確実」と見られていたが、万博批判の高まりとともに風向きは変わった。11月24日~26日の世論調査(日経新聞・テレ東)では維新の支持率は立民と同じ8%で、次期衆院選の投票先でも両党は12%で並んだ。統一地方選躍進の勢いは、半年の間に消失してしまったのだ。
京都市長選の前哨戦と位置づけられた「八幡市長選(11月12日投開票)」でも維新公認候補が敗北。11月14日の『読売新聞』は「維新頭打ち、本拠地・大阪周辺の首長選で相次ぎ落選…万博建設費用増額でイメージダウン要因か」と銘打って、以下のように報じた。
「勢いにブレーキがかかった最大の要因とみられているのが、維新が誘致を主導した万博開催だ。会場建設費が当初の想定の2倍近くに膨らみ、建設工事の遅れも深刻化している。巨額の負担は、『身を切る改革』を看板としてきた維新には、イメージダウンにつながっている」
実際、会場建設費は当初の1,250億円から1,850億円に上振れしていたが、さらに2,350億円へと2度目の上振れをした。それなのに万博協会副会長でもある吉村洋文・大阪府知事(維新共同代表)と横山英幸・大阪市長(大阪維新幹事長)は11月1日、これを容認したのだ。
対照的なのが2005年の愛知万博(愛・地球博)。この時も上振れをしたが、地元経済界の寄付などで国民負担増を回避していた。そこで11月2日の横山市長会見で、泉房穂・前明石市長が中止か縮小の決断を求める発信をしていることを紹介、「なぜ愛知万博と同じように上振れを回避する『縮小万博』を政治決断しなかったのか」と聞いたが、否定する回答しか返ってこなかった。中止や縮小の声があることは認めたうえで、「僕たちはやっぱり万博をもう一度しっかり趣旨を訴えていきたいと思っている」と従来通りの開催に固執したのだ。
吉村知事にも11月9日の会見で同じ質問をぶつけたが、国民負担増を正当化する回答に終始した。
「コストのことはしっかり見ていく必要があると思う。ただ僕は『万博は必要だ』と思っているので、『すばらしい万博を実現したい』という思いを含めて誘致段階からやっているというのが今の僕の立場です」「今回の増額については、この3年で資材も1.3倍に高騰しているなかで、計画の変更というよりはどうしても物価、資材の高騰。人件費の高騰。人件費の高騰が職人さんの給与になるわけだが、それが上がっているのであれば、その分の増額分は必要だと判断をした」。
具体的なコストダウン策を示しても、吉村知事の立場に変わりはなかった。「350億円の日傘」(泉健太・立民代表)とも揶揄される大屋根リングについて「別に全部完成させなくても、半分ぐらい商店街のアーケード方式にしてコストダウンができるのではないか」と設計変更を提案したのだが、吉村知事は次のように必要性を訴えて事足りた。
「国宝の清水寺の舞台にも採用されている日本の伝統建築技術で釘を使わずに安全で木造の強い建造構造物を建てる。その魅力というのを世界に発信していく」「なぜリングになっているのかというと、価値観が多様な150カ国の参加表明国が、『1つの輪になってつながるのだ』というメッセージを込めた万博の主旨・理念に根差したものだ」。
しかし11月24日の衆院予算委員会で森山浩行衆院議員(立民)が大屋根について追及、「釘もボルトなども活用」との答弁を経産審議官から引き出し、「伝統工法とは言えない」と結論づけた。吉村知事ら“大屋根擁護派”の大嘘がばれたかたちだが、釘やボルト等が使用可ならば、完成した木造建造部分に新たに商店街アーケード方式のプラスチック部分を結合されば、大幅な費用削減は可能。日よけの機能もはたすことはもちろん、木材とプラスチックのつぎはぎでも1つの輪にはなるので多様性の理念をアピールすることはできる。しかし吉村知事も横山市長も、大幅なコストダウンが可能な抜本的設計変更に否定的で、検討しようとすらしないのだ。
フルスペックでの万博開催に固執する維新ツートップと、中止や縮小が半分以上という国民世論の溝は埋めがたいものがある。そこで、2度目の上振れ分をクラウドファンディングで穴埋めすることも先の府知事会見で提案。「(万博の)意義を感じる人だけでお金を出してやればいいではないか。吉村知事が『ボーナスを返上して給与3割カットをして、その分を寄付』と呼び掛ければ、クラファンで500億円ぐらい集まるのではないか。そういう呼びかけすら、しようとしないのか」とも聞いたが、吉村知事からは否定的発言を繰り返すだけだった。
「なんで、そこだけクラファンをするのか。『(万博は)基本的に必要がない』というスタンスに立っているから、そういうふうに言うわけでしょう。でも我々は必要があると思っている」。
化けの皮が剥がれてきたとはこのことだ。維新ツートップの吉村知事と横山市長(共に万博協会副会長)は、縮小万博を政治決断することができる立場にありながら、大屋根の設計変更などで国民負担増を回避する抜本的コストダウンに後ろ向きで、自らの身を切って万博賛成派に寄付を呼び掛けるクラファンも否定する。「身を切る改革」は看板倒れにすぎず、2度目の上振れ分を付け回すだけの「国民に身を切らせるバラマキ政党(第2自民党)」という実態が露わになったのだ。
最高権力者にすり寄って、税金を食い物にする“タックスイーター(寄生虫)政党”のような実態も知れ渡りつつある。松井一郎・元大阪府知事は、安倍晋三首相(当時)らとの酒席で万博誘致が具体化したことを自慢していた。舞台は、2015年末の安倍首相(当時)と菅官房長官(当時)と橋下徹氏と松井氏の4者忘年会。そのときの様子を、自著『政治家の喧嘩力』のなかで次のように書き綴っていたのだ。
「総理にお酒を注ぎながら、一生懸命、持論を展開した。(中略)日本の総合力で超高齢化社会の問題を解決するモノや技術、サービスを生み出して世界に貢献すべきだ。そして、日本にはその力のあることを万博というイベントを通じて世界にアピールしたい。そう、安倍総理に申し上げた。
すると安倍総理は『それは挑戦しがいのある課題だよね』とおしゃって、隣の菅官房長官に、声をかけられた。『菅ちゃん、ちょっとまとめてよ』
この一言で大阪万博が動き出した。すぐに菅官房長官は経産省に大阪府に協力するよう指示してくださった」。
自民党得意の料亭政治を維新も真似して万博誘致に成功したというサクセスストーリーは「おちょこ事件」と名付けられて、急速に拡散。地元への利益誘導に奔走する維新の旧態依然とした自民党的手法が浮き彫りになったのだ。
万博批判の高まりとともに維新の改革政党のイメージは消え去り、支持者離れを招いているは確実だ。地元への税金投入(利益誘導)を最優先する「第2自民党」という正体をさらけ出してしまったともいえる。岸田政権が過去最低の支持率にあえぎ、縮小万博を否定する維新離れも進むなか、立民などの野党の支持率がどこまで広がっていくのかが注目される。
【ジャーナリスト/横田 一】
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