2024年12月28日( 土 )

国政選挙を背景にした北九州市政界をめぐる勢力争いと過去の遺恨

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 自民党福岡県連の党紀委員会(加地邦雄委員長)は22日、北九州市議会議員・三原朝利氏と大石仁人氏よりそれぞれ意見聴取を行い、離党勧告が妥当との判断を下した。

年明けに最終対応決める

 今回の決定は、2月の北九州市長選挙で県連が推薦した候補者ではなく武内和久氏(現・北九州市長)を応援したことと、次期衆院選で無所属での立候補を強行しようとしていることの2つの理由によるものである。

 県連は11月20日に緊急の執行部会を開催し、その際、原口剣生会長は「保守分裂を招くようなことは許されない。除名も辞さない」と牽制する発言をしていた。

 党紀委員会は、「離党勧告が妥当」と原口県連会長に報告を行っており、県連は年明けにも会合を開き最終的な対応を決める方針だ。

 来年に行われるとみられる次の衆議院選挙で、三原氏は福岡9区、大石氏は福岡10区から、それぞれ無所属で立候補する構えを見せている。保守分裂となれば、当然、現職に有利になる。

 現在、9区は無所属の緒方林太郎氏、10区は立憲民主党県連代表を務める城井崇氏が議席を有する。緒方・城井両氏は、データ・マックスの取材に対し「他党の問題に左右されず、粛々と活動するのみ」と回答している。

北九州市政界をめぐる遺恨

 ここまでこの問題が紛糾しているのは、背景に北九州市政界の主導権を誰が握るのかの攻防があるとの指摘する声が多い。

 武内和久北九州市長は、三原・大石両氏を応援すると公言している。市議会各会派との間で慣例となっている市長への予算要望について、自民党会派と旧民主系会派との会合を急遽欠席するなど、両会派からは「議会軽視だ」と反発の声が挙がっている。

 ただ、自民党会派「自民党・無所属の会」のなかでも温度差がある。佐藤栄作市議や西田一市議が、自身のSNSで市長の予算要望欠席を取り上げ、12月定例会の一般質問において市長の政治姿勢や就任以来の取り組みを質している。一方、前市議会議長の鷹木研一郎市議は、「25年の市議選を考えると、市長と対立していると市民感情がよくない」と語るなど、議会と市長の対立という構図となることを避けたい考えもある。

 鷹木氏は八幡西区選出で、大家敏志参議院議員の衆議院鞍替えを強く支援しており、大家氏の街頭活動に一緒に参加している。現在、麻生氏と大家氏の関係が良好といえないなかで、武内市長ともことを構えるのは、得策ではないとの判断があるのだろう。

 武内市長は、元厚生労働官僚で、中央省庁に強い人脈を有する。市議会に強気の姿勢を取るのは、三原・大石両氏、麻生太郎自民党副総裁が強く推していることが関係しているが、両氏を推すもう1人の注目すべき人物の名前を挙げる声がある。

武内市長を応援した元厚労副大臣

 地元関係者によると、北九州市長選の序盤において、元厚生労働副大臣も務めた西川京子元九州国際大学学長も武内市長の応援演説を行っていたという。

 西川氏は2005年の郵政選挙で、郵政民営化に反対した自見庄三郎氏(元郵政大臣)の対立候補として自民党公認で10区から出馬して衆議院議員に当選した。

 当選後は、麻生派(為公会)に所属。保守色が強く、安倍晋三元首相などと気脈を通じており、反ジェンダー教育を掲げるなど岩盤保守層の支持を受けていたが、落下傘候補であることから自民党県連からは冷遇されていた。

 2012年の衆院選前、西川氏は自身のHP上で「自民党衆議院福岡10区支部長決定についての反論」として痛烈な批判文を掲載した。県連が山本幸三氏を支部長としたことに猛反発したものだ。
ミカン箱オバサン・西川京子氏がHPで党批判~衆院選福岡10区

 また、関係者によると、西川氏は周囲に古賀誠自民党元幹事長や武田良太氏(12年当時、県連会長)や蔵内勇夫県議の名前を挙げて、批判していたという。

 西川氏は、2019年の県知事選挙で浪人となった武内氏を九州国際大学の客員教授に登用した。市長選前の2022年12月に、武内氏の支援者が開催した「北九州未来会議プラスα」のゲストに西川氏を招いている。

 武内市長の当選が決まった選挙事務所には西川氏も駆けつけて万歳をしていたが、自分を冷遇した県連が推した候補の敗北が決まった場に出向いたのは、穿った見方かもしれないが、自身の選挙の意趣返しの思いも少なからずあったのではないか。

 西川氏は、12月2日に福岡市内で開かれた高市早苗経済安全保障担当大臣の講演でも、「高市早苗さんと歩む福岡県民の会」の副会長として挨拶するなど、現在も活発に活動している。

 北九州市政界をめぐる勢力構図は、さまざまな思惑が絡んでおり、一筋縄ではいかないだろう。蚊帳の外の無所属議員などからは「自民党内の対立に巻き込まれたくない、市長とは是々非々」との声も聞かれる。

 武内市長は、21日の記者会見で「二元代表制であり、健全な緊張感をもってやりたい」と語っているが、国政選挙も絡むなか北九州市政界の動向に注目が集まる。

【近藤 将勝】

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