「人が主人公の街づくり」を求める北九州市議の思い
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12月28日で多くの官公庁で仕事納めとなるが、国民生活の厳しさは増すばかりである。ところが、国が決定した低所得世帯向け7万円給付の年内開始が間に合わない自治体が少なくない。北九州市議会の12月定例会において、「今や住んでいる自治体で生きるか死ぬか大きく変わってくる」と、年内支給を求める質問が行われた。
新ビジョンの自治基本条例との整合性
北九州市議会12月定例会の一般質問(12月5日)において、村上さとこ市議から、武内市政の根本を問う質問が行われた。武内市長の下で策定を進めている「北九州市新ビジョン」について次のように質したのだ。
「市長公約は人口100万都市の復活、稼げる街への挑戦です。素案の稼げる街は一貫して変わっていませんので、武内市長の一丁目一番地は稼げる街なのかと認識をしています」と述べた。そのうえで、「一番最初に掲げる戦略として、この稼げる街に私は少々違和感を抱きました。もちろん経済戦略はとても大切です。しかし、新ビジョンの策定にあたっては、本市の施策の基本理念となる自治基本条例との整合性が重要です。そして、条例では市民参画、人が大切にされ、人権が守られる地域、人こそ主人公の街ということが示されています」と指摘した。
これに対し武内市長は、「日本全体が人口減少にあるなかでも、経済活動など拠点となる大都市、政令指定都市では人や企業が集まっています。経済成長が雇用の増加を生み、雇用の増加が人口増加につながるのです。つまり、経済成長と人口増加には高い関連性がみられるという状況にあります」と述べた。さらに、「北九州市の総生産額をみると、雇用者報酬など政令市のなかでも最下位にあり、北九州市の経済は停滞が続いているといわざるを得ない」と現状を語った。
また、「厚労省で社会保障を担当した経験から、給付をしっかり行いたいというなかで財源の確保に血道をあげないと、社会保障に跳ね返ってくる悔しい思いを何度もした。だからこそ、しっかり元手をつくる必要がある」と官僚時代の経験談を交えつつ、新ビジョンの示す「稼げる街」を示した。
武内市長が厚生労働省において社会保障を担当し、財務省との予算折衝において苦労してきたことは疑うものではない。地方自治体においても財源確保なくして社会保障や教育、福祉が成り立たないとはいえ、経済優先は効率化を要求し、人件費削減など人が大切にされない側面を持つ。公共の福祉を担う自治体のトップは、弱い立場にある市民にもっと目を向けるべきではないか。
名古屋市では迅速な給付金支給
一般質問において、村上市議は新ビジョンの基本理念にとどまらず、現在、進められている住民税非課税世帯などに対する給付金(7万円)についても質している。
「今や住んでいる自治体で生きるか死ぬか大きく変わってくる」と指摘し、年内の給付金の支給を求めたが、市側の答弁は年内の給付は困難との答弁であった。
年末年始、街ではイルミネーションが輝き、楽しそうに街を歩く人の姿も多くみられる。しかし、服装などで見分けがつかないが生活に困窮した人は少なくない。
村上市議は、シングルマザーでトリプルワークをした経験を述べた上で、「街が華やぐ時期にお金がないのは本当につらいのです」との思いを語り、自民党会派の市議からも共感の声が挙がった。
北九州市以外でも福岡市など規模が大きい自治体ほど、安倍政権時代の10万円給付もそうだが、手続き業務などを自治体職員ではなく、外部の民間企業に委託するケースが多くみられ、結果として生活に困窮した人たちへの給付金がなかなか届かないという実態があった。
同じ政令市である名古屋市は12月11日から給付金の「支給のお知らせ」を送付しており、26日から入金を開始している。
名古屋市:令和5年度 電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金(2回目)について(暮らしの情報)名古屋市の取り組みの迅速さは、北九州市や福岡市など他自治体もお手本にできるだろう。自治体のトップの決断で、給付金支給は実行可能なのである。
議会閉会後の15日夜、自民党市議の佐藤栄作氏は自身の後援会のYouTubeチャンネルにおいて、村上市議と自民党会派の団長である戸町武弘市議との3人で、ライブ配信で市政について語り合う取り組みを行った。画期的な取り組みである。
村上市議はリベラル系であり、「議会にもグラデーションの多様な声がある」という。自民党市議とも議論しながら、よりよい市政を作っていこうと考えており、「武内市政に対して是々非々」と言明している。
なお、当社は12月27日、村上市議のインタビューを北九州市議会において行ったが、年明けに掲載を予定している。
【近藤 将勝】
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