令和6年能登半島地震~特殊な地震型で津波が発生(前)
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2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県でマグニチュード(M)7.6の巨大地震が発生、最大震度で7を記録した。地震による家屋の倒壊と、地震直後に引き起こされた津波によって、地震から10日経過した時点での石川県内での人的被害は、死者213人、安否不明者は52人としている。
今回の地震は、被害の甚大さもさることながら、今まで知られていないメカニズムによって地震が発生し、大規模な津波が引き起こされた。
能登半島群発地震のメカニズム
今回の地震は、20年12月以降に石川県能登地方および能登半島沖で発生している群発地震の1つと見られ、そのなかでも最大級の規模となった。海底の地盤変動によって津波も発生した。だが、これまで津波を引き起こすタイプの地震として認識されてきたプレート境界型地震とは異なるメカニズムで発生した地震だと考えられている。
地球は、最も外側を「地殻」と呼ばれる層に覆われており、地球の表面から平均約35km(海洋地殻は薄く約5~10km、大陸地殻は厚く約30~50km)の深さまで地殻はおよぶ。ここには「地殻流体」と呼ばれる、地殻内部やその境界近くに存在する液体やガスが流れている。能登半島における群発地震の原因は、地下深部の地殻流体が何らかのきっかけによって、地震が発生する上部地殻に突如供給され始めたことにあるとの研究結果を、22年に東京工業大学の中島淳一教授が発表している。
今回の地震の惨状を見ると、能登半島では各所で地盤の著しい隆起が確認され、輪島市では海底が隆起した結果、海岸線が最大で240m海側に向かって拡大し港が使えなくなるなどの状況が発生している。津波の発生も、急激な海底地盤の隆起によって海面が押し上げられたことが原因と考えられる。
従来認識されてきた津波を発生させる地震
津波を発生させる地震としてよく知られているのは、主に太平洋側で発生するプレート境界型地震だ。
11年に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、東側の太平洋プレートが、本州東北地方が乗る北米プレートの下に沈み込むことによって蓄積したひずみがプレートの境界周辺で開放されることにより、M9の巨大地震が引き起こされた。このとき海底面の大規模な地殻変動によって大津波が発生した。
近い将来、発生が懸念されている南海トラフ地震は、南側のフィリピン海プレートが、西日本が乗るユーラシアプレートの下に沈み込む際に蓄積するひずみによって発生する大規模な地震だ。政府の地震調査委員会によれば、南海トラフ地震が今後40年以内に発生する確率は90%程度とされ、東日本大震災と同様の大規模な津波の発生が懸念されている。
今回の能登半島地震は、従来のプレート境界型地震とはまったく異なるメカニズムで発生し、津波を生じさせた。ただ、原因と考えられている地殻流体の動きについては、プレート境界の活動が影響を与えている可能性も指摘されており、今後の研究の進展が待たれる。
(つづく)
【寺村朋輝】
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