相次ぐ北朝鮮のミサイル挑発で高まる緊張(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏韓国と北朝鮮の経済力、軍事力の比較
1950年6月25日、北朝鮮軍は38度線を越えて韓国に奇襲的に侵攻した。いわゆる朝鮮戦争の勃発である。北朝鮮軍は世界最強と言われていたソ連製T-34 中型戦車を242台も保有していて、ソウルを3日後に陥落した後、1カ月後には韓国南部の一部の地域を除き、ほぼ全域を占領することとなった。開戦当時の北朝鮮の機甲戦力はアジア最強で、韓国軍の戦力はというと、比較の対象にならないくらい貧弱であった。
しかし、朝鮮戦争から70年が過ぎた現在は、状況が一変している。韓国は経済成長を遂げ、名目GDPは1,919兆ウォンとなったが、北朝鮮は韓国の54分の1に過ぎない35兆3,000億ウォンにとどまっている。軍事力においても、韓国は世界5位の軍事力を誇っているが、北朝鮮の軍事力は世界36位となっている(米軍事力調査機関、グローバルファイアパワーの2024年リポート)。兵力数だけを見ると、韓国軍は50万人であるのに対して、北朝鮮軍は128万人で、数的には北朝鮮は韓国軍の2.5倍ほどである。
韓国と北朝鮮の軍事力を総合評価すると、北朝鮮は核を保有しているため、北朝鮮が軍事力の面では、やや優位にあると言ってもよい。しかし、韓国には米軍が駐留しているし、米国との相互防衛条約により守られていて、金正恩総書記は虚勢は張るものの、内心では米国の先制攻撃などを恐れている。
一方、首都ソウルは人口1,020万人が密集していて、軍事境界線からわずか40㎞しか離れていないので、ソウルが奇襲攻撃されたら、致命的なダメージを受けることが韓国の悩みどころである。軍事境界線を挟んで、南北4㎞、東西245㎞は非武装地帯となっている。この地域には地雷と鉄条網が敷設されている。両側の軍人は非武装地帯でにらみ合いをしているが、韓国側には約2万8,500人の米兵が駐留している。
北朝鮮も軍事境界線沿いに冷戦時代の重火器が多数配備されており、そこから発射される砲弾の射程距離にソウルが入っている。軍事境界線から至近距離にあるソウルをいかに守るかと、北朝鮮の動きをいかに早期に察知できるかが、韓国防衛のカギである。
戦争は本当に起こるのか
私は日本人から「韓国は大丈夫ですか」という質問をよく受ける。北朝鮮の脅威は何十年ものあいだ、韓国に常につきまとっている。そのせいか、韓国人は北朝鮮の脅威に鈍感になっている。日本人が地震に慣れているのと同じである。
北朝鮮によって局地的な軍事攻撃が最後に起きたのは13年前のことだ。北朝鮮軍による韓国・延坪島への砲撃で、韓国の海兵隊員2人と民間人2人が死亡した。その後も北朝鮮は、ミサイルの発射を繰り返している。ミサイルの発射は韓国や米国を挑発する狙いよりも、ミサイル実験をすることで性能を検証し、進化させたいという狙いの方が強いだろう。しかし、世界は世界情勢の変化によって、北朝鮮のミサイル実験の狙いが変わるのではないかと懸念し始めている。
米国は、現在ウクライナ危機への対応に追われている。それだけでなく、中東でもハマスの奇襲攻撃によって戦争が起きて、米国はその対応に苦慮している。またアジアでは米中覇権争いが続くなか、中国の台湾侵攻が懸念されており、中国が台湾に侵攻することになったら、米国はこのすべてに対応することはできないだろうと思われているからだ。韓国を奇襲攻撃することで米国の力を分散させ、北朝鮮は中国を助ける意味合いで、この隙間を狙って奇襲攻撃をするのではないかという、北朝鮮の判断ミスが危惧されているのだ。
(つづく)
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