2024年11月05日( 火 )

【昨今MBO事情(3)】CCC、「体験」を軸にするSHIBUYA TSUTAYA―常識破りの「企画屋」の現在地(後)

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 MBO事情の第3弾。MBO(経営陣が参加する買収)で上場を廃止するオーナー企業は後を絶たない。上場維持のメリットとコストを天秤にかけ、コストが上回ったから株式市場から退出したオーナー企業のその後をレポートする。DVDレンタルビデオショップ「TSUTAYA(ツタヤ)」や共通ポイント「Tポイント」で一時代を画したカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)(株)(東京都渋谷区南平台町)だ。

5年で500店超の「TSUTAYA」店を閉店

 「TSUTAYA」事業からも撤退した。TSUTAYAは増田氏が大阪・枚方市につくった店が始まり。1980年代に誕生したこの店は、本だけではなく、CDやDVDなども同時に扱い、「カルチャー」をその商材とした。当時は、ジャンルを越境してコンテンツを扱う店は少なく、全国にフランチャイズチェーン網を拡大していった。だが、動画配信の台頭で、レンタル需要は激減。CCCは17年から500店超の「TSUTAYA」店を閉鎖した。TポイントとDVDレンタル。事業の2本柱が崩壊した。

「シェアラウンジ事業」に軸足を移す

 だが、増田宗昭氏は尻尾を巻いて引き下がるようなヤワではない。増田氏がいう企画とは、これまで世の中になかったビジネスを生み出すことだ。ポイントカード事業が典型。単なるレンタル店のポイントカードを、他の企業と提携することで大きなビジネスに育てることに成功した。

 「世界一の企画会社になる」。まず増田氏がCCCを立ち上げたとき、掲げたビジョンだ。書店を名乗っているが、本を売るのではなく、ライフスタイルを提案する。「シェアラウンジ事業」に軸足を移す。シェアオフィスの利便性とラウンジの居心地の良さを持ち合わせた施設だ。その施設が明らかになった。

訪日客の「コト消費」をターゲットにした
「SHIBUYA TSUTAYA」

SHIBUYA TSUTAYA イメージ    『CCC、「SHIBUYA TSUTAYA」を4月再開業、訪日客を意識』日本経済新聞電子版(24年1月24日付)が報じた。

 「SHIBUYA TSUTAYA」はDVDやCDのレンタル業態「TSUTAYA」の旗艦店として1999年12月に開業した。世界有数の人通りの多さを誇る渋谷のスクランブル交差点に面しており、待ち合わせにも使われる「渋谷のシンボル」として親しまれてきた。23年10月31日から、改装に向けて一時休業している。

 報道によると、インバウンド(訪日外国人)を意識し、コンテンツやイベントを楽しめる施設にする。

 〈新施設は屋上付き8階建て。地下2階から地上1階までにはアニメや音楽などのコンテンツを楽しめ期間限定店を設置したり、イベントを展開したりする。2~4階は約500席を持つラウンジ併設の大型カフェにする。5~7階はコンテンツファン同士が出会えるラウンジや書店、カフェとして活用する。8階は各フロアと連動したイベント配信機能を持つスタジオにし、屋上は屋外イベントスペースとする予定〉

 「体験」できる施設を提供する場所貸し業である。訪日観光客の消費行動が「モノ(商品やサービス)消費」から「コト(体験や経験)消費」に移っていることに対応したものだ。「体験」を軸にする消費は、まだ伸びる余地があるということだ。「SHIBUYA TSUTAYA」を起爆剤としてCCCの再起を描いているのである。

創業者宗昭氏は長男の宗禄氏に
無事事業継承できるか

 増田宗昭氏の後継者は、長男の増田宗禄氏。1983年生まれで、今年41歳を迎える。2007年駒澤大学卒業後、ザ・アールに入社。09年、不動産管理会社のソウ・ツーに入社。CCCの代官山T-SITE立ち上げにともない、同施設内でファミリーマート代官山店を立ち上げ。T-SITE出店にともない、6店舗に拡大。16年に社長に就任した。

 CCC本体には、非常勤の社外取締役を経て、21年専務執行役員コーポレート本部長に就任。22年4月よりCCC専務取締役に昇格した。

 序列ナンバー3の宗禄氏が、父・宗昭氏の後継者だ。数年後には、高橋誉則社長からバトンタッチして、CCCの経営を継承するのは確実と見られている。同族継承がスムーズにいくかどうかは、父・宗昭氏が最後の大仕事として打ち出したビジネスモデルの転換、「SHIBUYA TSUTAYA」の成功にかかっている。

 だが、「世の中にないアイデアや発想を形にして、新たなビジネスを企画すること」(前出のNHKの仕事の流儀)を追求する「常識の破壊者」の宗昭氏のやり方を引き継ぐのは容易ではないだろう。

(了)

【森村 和男】

(中)

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