能登半島地震による輪島市の復旧状況(1)
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運輸評論家 堀内 重人
元旦の午後4時10分に発生した直下型地震の能登半島地震。気象庁の発表では、この地震のマグニチュードは7.6であり、内陸部で発生する地震としては日本でも稀な大きさの地震であったという。3月10日時点の輪島市の交通インフラやライフラインの復旧状況を中心に、現状を報告したい。
交通インフラ(1)鉄道
新幹線は、東北・北海道・山形・秋田・北陸・上越の各新幹線の全区間だけでなく、東海道新幹線の東京~小田原間と豊橋~新大阪間、山陽新幹線の新大阪~新神戸間が、地震の影響で運転を一時見合わせた。このうち北陸新幹線の長野~金沢間、上越新幹線の越後湯沢~新潟間は終日運転を見合わせた。九州新幹線は影響を受けず、通常通りに運転された。山陽新幹線の新神戸~博多間や東海道新幹線などは同日中に運転を再開した。
能登半島地震で大きな影響を受けたのが北陸新幹線であり、富山~金沢駅間で4本の列車が立ち往生した。翌2日の未明になって動き出したが、車両は乗客への配慮から列車ホテルとして活用された。地震発生日の翌日である1月2日に、運転を見合わせていた上越新幹線の越後湯沢~新潟間の下り線が午後1時47分頃に、上り線が午後2時38分頃に、北陸新幹線の富山~長野間は、上下線共に午後3時20分頃に、それぞれ運転を再開した。
北陸新幹線の金沢~敦賀間は3月16日に開業を控えており、2023年11月から完了検査が進められていたが、この区間は施設に被害は無かった。1月26日に完了検査の合格が認定されたため、予定通りに3月16日に開業することが決まった。
JR東日本の在来線では、石川県に近い新潟県・長野県で大糸線の松本~南小谷間、羽越本線、信越本線の篠ノ井~長野間、直江津~新潟間、上越線、篠ノ井線、中央東線、白新線、磐越西線、飯山線、越後線、小海線、只見線、弥彦線、新潟県北部と山形県を結ぶ米坂線などの広範囲で、運転見合わせや遅れなどの影響が出た。このうち、越後線の内野~新潟大学前間では線路の道床が陥没した。そのため、1月5日まで関屋~越後赤塚間で運転を見合わせたが、代行輸送は行われなかった。その他の区間は、能登半島から距離が離れていたため、被災の度合いが低く、安全確認が終了した1月3日に運転が再開された。
JR西日本の在来線では、城端線、北陸本線のIRいかわとハピライン福井、高山本線、七尾線、小浜線、越美北線(九頭竜線)、大糸線の南小谷~糸魚川間、氷見線などに、運転見合わせや遅れなどの影響が出た。大阪~金沢間を結ぶ特急「サンダーバード」(写真1)、名古屋~金沢間を結ぶ特急「しらさぎ」、金沢~福井間を結ぶ特急「ダイナスター」は、2日の午前中まで運休した。七尾線では、回送列車のパンタグラフと架線が地震による揺れで破損したため、復旧の見通しが立たなくなっていたが、4月6日に運転が再開されることが3月8日、明らかになった。
JR東海では高山本線の杉原~猪谷間で一時運転を見合わせた以外に、特急「ひだ」の一部列車が高山~富山間で運転を中止した。
北陸鉄道は金沢市に本社を構え、金沢市の近郊輸送や路線バス・高速バス事業を展開している民間会社だ。元旦の夜以降は鉄道線の石川線や浅野川線、バス路線・高速バスの運行を取り止めた。そして翌2日は、安全確認や道路が被災していることもあり、全便が運休となった。
富山地方鉄道は、富山市に本社を構える地方民鉄で、鉄道事業とバス事業を展開している。鉄道事業に関しては本線、立山線、不二越線、上滝線を1月2日まで、全線で終日運休となった。富山港線および環状線を含む路面電車は、地震による被災もなく、安全の確認が完了した2日の午前10時から運転を再開した。
第三セクター鉄道については、並行在来線に相当するIRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインと妙高はねうまライン、しなの鉄道の北しなの線と、篠ノ井~軽井沢間のしなの鉄道線が該当する。IRいしかわ鉄道は1月3日の午後から運行を再開し、あいの風とやま鉄道も同日の午前11時43分から運行を再開している。
えちごトキめき鉄道のひすいラインと妙高はねうまラインは、2日の午後から全線で復旧していたが、これら3つの鉄道会社は貨物輸送を担う日本海縦貫線を構成する一部でもある。ただ、貨物輸送に関しては、年末年始は工場が稼働しないこともあり運休していたため、運転再開は3社において1月5日から行われた。同じく貨物専用の路線である新湊線も同日から運行を再開している。
のと鉄道の七尾線は地震被害がひどく、1月1日以降運休となり、2月15日から能登中島~七尾間で運転が再開した(写真2)。現在も能登中島~穴水間はバスでの代行輸送を行っている(写真3)。土砂崩れなどがあったため、全線復旧は4月上旬を予定している。観光列車の「のと里山里海号」は現在、運休しており、運転再開は全線が復旧してからになるという。
富山県高岡市を通る(株)万葉線の万葉線は地震発生と同時に運休となり、翌日の午前11時47分から通常運行に戻った。北越急行のほくほく線は運転の見合わせなどを行った。黒部峡谷鉄道の本線は冬季運休となっていたが、鐘釣駅手前の鐘釣橋で落石により、枕木の一部落下や橋桁の鉄骨のゆがみなどの被害が発生した。
1月6日の始発の時点では、のと鉄道七尾線の全線、それにJR七尾線の高松~和倉温泉間で運休が続いていた。1月15日からはJR七尾線の高松~羽咋(はくい)間で本数を減らして運転を再開している。羽咋~七尾間は1月22日に運転を再開した。この段階では普通列車は通常通りの本数であったが、一部の特急は運休し、地震の影響が大きかった敷浪~羽咋(はくい)間では減速しての運転となった。
JR七尾線の七尾~和倉温泉間、そしてのと鉄道七尾線の七尾~能登中島間は、2月15日から運転を再開している。道路なども被災していたため、1月29日からようやく全線でバス代行輸送が始まったが、2月15日以降は区間を能登中島~穴水間に短縮している。なお、かつて能登半島にはのと鉄道の七尾線と能登線が存在したが、能登半島の過疎化にともない、七尾線の穴水~輪島間が01年に廃止され(写真4)、能登線も05年に廃止されたことから、のと鉄道は穴水までとなっている。
(つづく)
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