2024年11月29日( 金 )

【トップインタビュー】回復する韓国との往来をさらに促進 ビジネス、団体への支援も拡充

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(株)大韓航空福岡支店
支店長 山口 亮 氏

 韓国のフラッグキャリアの(株)大韓航空。同社の前身時代の1965年に福岡空港初の国際便として釜山線が就航するなど、その往来の歴史は長い。コロナ収束後、日本と韓国の往来はほかの国・地域との往来よりも早く回復しているなか、同社は福岡・九州と韓国との経済・文化交流を引き続き支えている。今後の日韓の往来・交流の増加に向けた展望、同社の出張支援プログラムなどについて、福岡支店長・山口亮氏に話を聞いた。

イン・アウトともに回復早い韓国市場

(株)大韓航空福岡支店 支店長 山口亮 氏
(株)大韓航空福岡支店
支店長 山口 亮 氏

    ──貴社および福岡支店のご紹介をお願いします。

 山口亮氏(以下、山口) 大韓航空は1969年に保有航空機わずか8機のアジアの小さな航空会社として設立され、今年設立55周年を迎えました。実は私と同い年であり、共に歩んでいるような親近感をいだいています。韓国・ソウルの仁川空港をハブ空港として、現在は最新機材を含め150機以上を保有し、40カ国111都市(2023年3月時点)へ運航するグローバルエアラインへと成長しました。

 当社が最も重要視する価値観は「安全」と「顧客満足」です。設立35周年の04年に「世界の航空業界をリードするグローバル航空会社」というビジョンを制定・発表するとともに、「Excellence in Flight」をスローガンに掲げました。世界中のどの航空会社よりも安全で優れたサービスを提供することをミッションとして、グローバルな航空業界で尊敬されるリーダーとして、そして皆さまから求められる航空会社としての地位を確立するために全力を尽くしております。

 当社の福岡路線は大韓航空として民営化・設立される以前の1965年に釜山線の運航を開始し、これは福岡空港に就航した最初の国際線です。72年にはソウル線(当時は金浦空港)の運航を開始しています。福岡支店は九州北部地域を担当しており、現在は福岡便との大分便を取り扱っています。大分便は韓国のお客さまの多くが別府・湯布院などの温泉地への訪問がメインであることから季節限定となっています。北九州便は貨物便のみで旅客便を扱っていないため、当支店では担当していません。鹿児島、沖縄には別に拠点を設けています。

 ──コロナ禍で多くの旅客便が運航停止となりましたが、回復はどれだけ進みましたか。

 山口 コロナ禍で九州でも2020年3月には全便を運休しましたが、22年10月に福岡-ソウル線が再運航、23年9月に福岡―釜山線が再運航をはたしました。現在は毎日ソウル便を4便、釜山便を2便運航しており、コロナ以前の状況に戻っています。

 福岡便は日本全体で約10%の売上を占めています。福岡―ソウル線、福岡―釜山線とも搭乗率は80~95%と好調です。なお、全体の傾向を反映して、ソウル便は70%以上、釜山便は80%以上が韓国からのお客さまが占めています。

 ──コロナ以前と比べ、現在の日韓の往来についてどう見ていますか。

 山口 23年の出国日本人はコロナ前の19年比48%で、訪韓日本人は同72%です。23年の訪日外国人は同104%で、訪日韓国人は同125%と、韓国はアウトバウンド、インバウンドともに全体の数値より回復が早い傾向が見てとれます。

 コロナ禍以降、日韓関係の改善や円安の影響で韓国発インバウンド需要は非常に旺盛な状況が続いており、今年もその勢いは続くと思われます。なお、日韓の比率は日本人が約3割、韓国人が約7割で推移しています。九州では福岡以外にも鹿児島空港や大分空港発着のフライトも運航していて、韓国便の需要はますます大きくなっています。

 韓国と福岡の距離は、福岡空港からは釜山まで約200km(福岡―広島と同等)、ソウル・仁川まで約500km(福岡―関西と同等)と非常に近いです。また韓国のエンタメやコスメなどの日本での人気も高いことから、今後福岡発のアウトバウンドも増えていくと思われます。K-POP支持層の若年女性層が中心となって需要が回復している点と、今年は3連休が多い点(23年は7回であったのに対し24年は11回)と短距離の海外旅行の機会が多いことへの期待感があります。

ビジネス需要の取り込み

    ──コロナは収束しましたが、現在はどのようなことに注力していますか。

 山口 アウトバンドはもとよりインバウンド需要を九州各県に誘致すべく、各観光施設と連携して当社便の搭乗券をお持ちのお客さまに特典を提供できる体制づくりを進めています。福岡県はもとより大分県や長崎県からの支援を仰ぎながら、インバウンドのお客さまに人気のあるさまざまな観光施設から特典を提供していただけるよう協議を重ねています。

 ──ハブ空港である仁川空港は、世界各地への乗り継ぎにおいて非常に利便性が高いです。

 山口 福岡空港は韓国から非常に近いため、韓国行きのお客さまはもとより 、欧州や東南アジアへ渡航されるお客さまにとっても、福岡から1,000km離れた成田空港を経由するよりも時間の面で効率がよく、乗継も非常にわかりやすい仁川空港などでのトランジットでの経由を遠距離へのお客さまにもおすすめいたします。

 ただ、22年のロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、当社も他社同様にロシア上空を迂回しての運航を強いられています。そのため、仁川発欧州行きの出発時刻が早くなり、福岡―仁川便から同日に乗継できない状況が多発するようになってしまいました。

 こうした状況のため、仁川乗継の件数は一時的に落ち込んでいます。従来、当支店の売上のうち少なくない部分を欧州便の販売で計上していて、仁川乗継問題により以遠線販売が苦戦しているため、23年10月以降の福岡便の売上については19年比約30%減で推移しています。裏を返せば、もともと福岡から欧州などに出張するお客さまからの支持をそれだけ強くいただいていたということでもあります。

 そこで、仁川での滞在ホテルやソウルでのミニ観光などのサービスを提供できる環境を整え、ソウル1泊欧州行き商品の拡充も進めていくことで、引き続き福岡便を利用される皆さまの満足度を維持し、高めていきたいと思っています。

 ──日本での収益を増やすには、ビジネス需要の取り込み、自社サイトでの予約の拡充が必要だと思われますが、そのためにどのようなことをされていますか。

 山口 フルサービスキャリアとしてLCCとの差別化を図るために、ビジネス需要の誘致に注力しています。九州の主要企業さまや大学さまと直接法人契約を締結しており、ご利用額に応じたコスト削減につながる特典や非常時のサポート対応を提供させていただいています。

KALBIZ

    また、ビジネストラベルプログラム「KALBIZ」を案内しております。出張の際に当社の便を利用すると企業アカウントにポイントがたまり、ラウンジの利用や無料航空券に交換できるという、出張旅行の支援プログラムです。日本国内で法人登記された、3人以上の従業員が在職している企業さまであれば、オンラインでの加入手続きが可能です。このような契約やプログラムの活用をぜひご検討いただければと思います。コロナ禍で当社も支店を縮小するなどしたのですが、回復するビジネス需要に対応できるよう、スタッフの拡充も進めています。

 ──MICEなどの需要も回復してきているのでしょうか。

 山口 日韓関係が急速に改善してきている環境の下、九州では教育組織や企業の韓国へのインセンティブ旅行が増えてきています。とくに増えているのが学生の研修旅行や修学旅行であり、現地の学生との交流を主な目的として実施している学校が増えているようです。子どもたちの未来のためにも、国際交流の一端を担えることに喜びを感じています。コロナ禍を経てオンラインでの交流が一方では定着しつつあるものの、人と人が直接会うことの重要性や喜びを改めて感じている人が多くいるなか、世界中の人々をつなぐことのお手伝いをしていきたいと思っています。

福岡の発展に貢献

 ──21年に韓国第2位の航空会社、アシアナ航空との統合計画を発表されました。一部路線の譲渡は必要となったものの、各国の競争当局からの承認は順調に下りていっているようですね。

 山口 日本の公正取引委員会の承認が1月に下り、またEUの欧州委員会においても2月に承認を受け、残すところは米国の審査のみとなりました。大韓航空としては米国連邦取引委員会との協議を加速し、早期に企業結合審査手続きを終えるよう計画を進めています。

 ──統合により、従来以上によいサービスが提供されるようになることを期待しています。役割が大きくなるにともない、責任も大きくなりますね。

 山口 当社としても社会的責任をはたすことを強く意識しています。サステナビリティ・マネジメントに関する活動を紹介させていただくと、燃料効率の最大化と航空機の炭素排出量削減への取り組みを通じて、持続的な成長の実現と環境への影響を最小限に抑えるとともに、環境に優しい次世代航空機の導入することなどにより温室効果ガス排出量の削減を目指しています。

 大韓航空はグローバルな航空会社として、責任感をもって社会的・環境的価値を追求し、持続可能な未来に向けて取り組んでいます。グリーンビジネスの一環として、モンゴルや中国で植林活動を展開するなど、北東アジアへの黄砂被害減少に貢献しています。また、自然災害被災地への救援物資の輸送を指揮し、災害被災者や災害復旧支援への寄付活動や海外災害救援活動など、国境を越えたサポートを迅速かつ効果的に行っています。

 福岡空港では、25年3月末に予定されている第2滑走路の供用開始にともない、1時間あたりの最大発着回数が現行の38回から40回に増加することに加え、ターミナルの改装・立体駐車場の建設など、海外へ出国するお客さまの増加に対応した環境整備が進んでいます。当社としても空港と連携しながら運航計画を立てていきたいと思っています。

 私はこれまで主に東京で勤務をしてきたのですが、大韓航空のブランド力について、東京と福岡とでは差があるように感じています。こちらでは日系の航空会社が韓国発着の国際線を運航していないことや全体の直行便が少ないことも影響しているのかもしれません。福岡・九州の皆さまからの当社に対する期待感をその分強く感じています。

 新滑走路、天神ビッグバン、福岡への企業本社移転、人口増など、今後の福岡に大きな期待を寄せています。30年にわたり航空業界で得た知見を福岡という地域の発展に役立てるとともに、温かく迎え入れてくれた福岡に恩返しをしていければと思っています。

【茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
(株)大韓航空
代 表 :趙 源泰(チョ・ウォンテ)ほか1名
日本地域本部長:李 碩雨(イ・ソグ)
所在地 :大韓民国ソウル特別市江西区空港洞260
日本地域本部:東京都港区芝3-4-15
福岡支店:福岡市中央区高砂1-11-1
設 立 :1969年9月
資本金 :1兆7,446億ウォン
売上高 :(23/12連結)14兆5,751億ウォン


<プロフィール>
山口 亮
(やまぐち・たすく)
1969年北海道生まれ静岡県育ち。94年 (株)大韓航空入社、東京旅客支店予約課、販売課勤務。2009年販売課長、18年販売次長、東京旅客支店販売統括。コロナ禍の22年、貨物運送配属を経て、23年7月、旅客支店に復帰し福岡支店長に就任。趣味はラグビーで、週末は福岡のラグビー愛好会の仲間と舞鶴公園で汗を流す。日々の縁に感謝、出会ってくれてありがとう。

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