2024年07月16日( 火 )

『脊振の自然に魅せられて』「花をめぐる山歩きで素敵な親子に遭遇」(後)

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 川原山のエビネを観賞した後、井原山―三瀬峠の縦走路の谷間に咲くキエビネのある場所へ足を伸ばした。お互い自生している場所は把握している。水無鍾乳洞の登山道から脊振の縦走路へ上がる。縦走路と佐賀県への分岐点に近づくと登山者2人が見えた。

 分岐点に到着し「どこからどこに行くの?」と 声をかけると2人は脊振山系の縦走をしている母親と小学校6年生の男の子であった。

 男の子はリュックに鯉のぼりを差していた。5日は子どもの日である。鯉のぼりを差して歩く子どもの姿にほのぼのとした気持ちになった。また仲の良い親子に見えた。

脊振山系70キロ.完全縦走の鯉のぼり
脊振山系70キロ.完全縦走の鯉のぼり

 山で会う人には尋ねることにしている。出会った登山者が遭難や怪我人が出たときに役に立つかもしれないからである。

 母親から「脊振で写真を撮り続けている人がいるらしいですね?」、

 筆者「それは私です」、

 母親「えー、あなたですか!」。

 山の季刊紙『のぼろ』(Vol 8、2015年春号)「脊振山系特集」を見て刺激され、子どもが6年生になった今年、脊振山系70kmの完全走破を計画、登山口までの送迎は父親が協力してくれたとのこと。

 この号には筆者の3ページにわたる特集記事が掲載されている。その筆者に出会ったのだから、この2人にとっては感動の対面だったのである。

 「記念写真を撮らせて欲しい」というので、快く了承。母親がスマホで撮影する。筆者の写真集の話をすると「購入します」と言う。この時、名刺を持ち合わせていなかったので、財布に入っていた喫茶店のポイントカードに住所、氏名、電話番号を書いてもらった。

筆者と親子
筆者と親子

 これから三瀬峠の方へ下るらしい。登山口で父親が待機しているという。母親のリュックには筆者も携帯している小型動画カメラ「GoPro」が装備されていた。また身につけている登山道具は親子ともブランド品であった。山の知識が豊富のようであった。山歩きを楽しんでいる素敵な親子だった。

 この親子と別れて、筆者とYは縦走路から谷へ下り、キエビネを見に行った。盛りを終えたショウジョウバカマが種子を遠くへ飛ばすため茎を50㎝ほど伸ばしていた。ここはショウジョウバカマの群生地で、3月21日に会いにきていた。

 40株ほどあるキエビネはちょうど見頃であった。キエビネを見て満足し、そのまま石が散乱するガレバの急斜面の谷を下った。熟練者でないととても歩けない。

キエビネ
キエビネ

 下山して、Yの案内でウラシマソウ見学に行くことになり、お互いの車で移動した。そして帰宅予定時間を1時間もオーバーした午後4時に帰宅した。筆者が山に行くときは、必ずコースと帰宅時間を家内に渡している。脊柱管狭窄症を患っている筆者にとって、よく歩いた2日間だった。

 帰宅して、山で遭遇した親子宅に手紙を添え、筆者の写真集『すばらしき脊振の四季』を送った。後日、記念写真がパソコンに送られてきた。なんでも脊振山系70kmを4日間で完全走破したとのこと。大人でも走破するのは長いコースである。驚きであった。筆者も走破はしていない。

 親子は油山市民の森で子どもたちによる「ぶらぶらあぶらクラブ」で自然観察会などを行っているとのこと。ラジオ取材時の様子を録音したURLが貼り付けてあった。聴いてみると子どもたちの観察力に驚いた。

 カブトムシとクヌギに集まる昆虫たちの役割について話していた。大人顔負けの観察力であった。山好きの両親の影響で山を好きになったとも語っていた。いつか、この親子と脊振を歩いてみたいと思っている。

 脊振山系で咲く花(ミツバツツジはコバノミツバツツジ:小さい葉を3枚付けている、シャクナゲはツクシシャクナゲ:淡いピンクの花が美しい、ショウジョウバカマはツクシショウジョウバカマ:ユリ科で白い花が多い)との出会いと、素敵な親子に遭遇した2日間の素敵な山歩きだった。

(了)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(前)

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