2024年06月30日( 日 )

木造の可能性広げる、設備投資と技術者への啓蒙(後)

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(株)平川木材工業
代表取締役会長 平川辰男 氏

 フローリング材など、無垢材による内装木材を製造・販売している(株)平川木材工業は、複雑な加工を施した製品の開発などによる木材の付加価値向上に取り組んでいる。(一社)福岡県木材組合連合会会長も務める同社の代表取締役会長・平川辰男氏に、福岡県における木材活用推進の状況や課題、今後に向けた提言も含め話を聞いた。

木材活用促進の課題

(株)平川木材工業 代表取締役会長 平川辰男 氏
(株)平川木材工業
代表取締役会長 平川辰男 氏

    ──福岡県木材組合連合会(県木連)の会長も務められていますが、その立場から見た木材活用促進の課題については、いかがでしょうか。

 平川 九州は森林資源に恵まれており、各地の自治体では、それぞれの地域材の活用を促しています。たとえば、一大木材消費地である福岡市にも1,000町歩(約9,900m2)の市有林があり、それを活用するべく独自に取り組みを進めています。しかし、その一方で福岡市では、木材を大量に加工することは難しい状況にあります。九州の他県からの製材に押されてきたためで、実は福岡市だけでなく福岡県全体でも製材所の整理統合が進み、大規模な設備があるのは当社のあるうきは市とその周辺だけとなっています。

 本来なら設備投資をして県内の加工需要に対応できれば良いのですが、需要と供給のバランスを考えると、設備投資をするのは困難です。より大規模なCLT工場の新設はなおさらで、このため福岡県産材を県内で加工、消費する体制を構築するのは難しい状況にあります。ただ、福岡市では専門部署を設けて、より積極的な木材活用を推進する動きがあります。それが北九州市などにも飛び火するようになれば、大規模生産設備を備えた工場が福岡県内にも設置されるようになるのではないかと期待をしています。

建築士などへ啓蒙活動

第3工場の内部の様子
第3工場の内部の様子

    ──大都市においてビルなどの木質化、木造化により、内装材を含めたより積極的な木材活用の動きが始まっています。

 平川 中高層の木造ビルの建築計画がいくつも進んでいる東京などと同様に、今後は福岡市や北九州市でも同様の動きが見られるようになるでしょう。ただ今後、それをより本格化させるためには、設計士や施工関係者が木材への理解を深める必要があります。たとえば建築士の場合、慣れていないことが原因で木造建築物の設計を敬遠する、あるいは仮に設計を行ったとしても現場施工に無理を生じさせるケースもあるようです。そうしたことから、福岡県森林組合連合会などと共同で、川下側の主に建築士と川上の山林経営者や森林組合を結びつけ、木材活用・普及を図る取り組みなどを行っています。当社の第3工場のトラス構造は、そのための一助になることを目的に導入したものでもあります。

第1工場内の様子
第1工場内の様子

    ──とくに課題と考えていることはありますか。

 平川 (一社)全国木材組合連合会では、国に木造建築物について容積緩和を求める要望活動を展開しており、大規模建築物の木造化はその動きに関連するものともいえます。ただ、最近になって少し複雑な想いをもつようになりました。容積率緩和は、地方の人口流出を促すことになりかねないと考えるようになったからです。そうならないように、都市と地方の共存共栄も視野に入れながら、木材活用推進が行われるよう願っています。たとえば、先ほど3D加工機械の話をしましたが、それを運用するためには優秀なオペレータが必要です。ただ、地方では彼らを確保することが難しいのが実状です。林業や木材加工業では、担い手不足が深刻化しています。若い方々から木材関連業界に入りたいと思ってもらえるような、魅力的な産業に成長させていかなければと強く考えている次第です。

(了)

【田中直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:平川典秀
所在地:福岡県うきは市浮羽町朝田572
設 立:1988年5月
TEL:0943-77-3185
URL:https://www.hirakawa-mokuzai.co.jp/


<プロフィール>
平川辰男
(ひらかわ・たつお)
福岡県うきは市出身。1952年生。1975年慶応義塾大学商学部卒業。2008年九州大学大学院生物資源環境科学府森林資源科学専攻修了。2013年10月から現職。(一社)福岡県木材組合連合会会長、福岡県木材協同組合連合会会長、福岡県木材利用促進協議会会長を務める。趣味はゴルフ。

(前)

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