2024年12月23日( 月 )

出生率0.99でもチルドレンファーストと言い繕う小池知事、1.7の泉前明石市長との違い

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 「東京都知事選(7月7日投開票)」で三選を目指す小池百合子知事は、学歴詐称疑惑でも子育て(チルドレンファースト)政策でも「落第点なのに合格」と言い繕っているのではないか──こんな疑念が強まったのは6月22日。小池氏が八丈島で初の街頭演説をした日のことだ(6月25日の本サイト記事「八丈島初街宣の小池都知事が戸別訪問の選挙違反!?」参照)。

 小池氏はこの日、公明党のポスターが貼られた民家を訪問した後、港の近くで海を背景に街宣に臨み、羽田行きの最終便で都内にトンボ返りをした。このとき、八丈島空港の搭乗口で待ち構えて、子育て政策に関する次のような声かけをしたのだ。

 「小池さん、東京都の子育て予算、どれぐらい伸ばしたのですか。(前明石市長の)泉房穂さんは2.4倍に増やしていますよ。何倍か答えられないのか。選挙前になって急に子育て予算増やしたから効果が出ていないのではないか。東京の出生率0.99の責任を取らないのか。子育て予算、何倍になったか教えてくださいよ」

 しかし帽子をかぶった小池知事は、声掛け質問に一言も答えることなく搭乗口に向かっていったのだ。

 このとき、泉房穂・前明石市長の名前を出したのはほかでもない。明石市では3期12年の間に子育て関連予算は2.4倍となり、10年連続の人口増を達成、出生率は全国平均以上の1.63で兵庫県下でトップになっている。これに比べて、同じチルドレンファーストを掲げているのに2期8年の小池都政では過去最低の出生率0.99になってしまった。「実績(成果)を出す泉・明石市政、看板倒れの小池都政」ともいえるが、なぜ正反対の結果となったのか。

 6月9日に吉祥寺で講演(「武蔵野政治塾」主催)をした泉前市長に後半の質疑応答タイムで聞くと、次のような回答が返ってきた。

 「明石市長になったのが2011年。明石市の場合には2018年に出生率が1.70。直近の5年間の平均が1.63で、兵庫県でトップです。兵庫県は1.30ぐらいですから県平均よりかは0.33ぐらい高い。市長になって6年から7年ぐらいで数値が上がり、一定程度維持している状況にある。小池さんに関しては言葉を選ばないといけないが、子ども政策をやり出したのはここ2年ぐらいだから、俗にいう『選挙対策』という人もいるが、そうであっても有権者にプラスになる政策をすれば、評価すべきだと思う。ただ数字に現れていないのは事実。そこはどう評価するのかだと思う」

 たしかに小池氏がよく口にする目玉政策「018サポート」を打ち出したのは昨年1月。最初からスタートダッシュ、子ども関連予算を3期12年で2.4倍にした泉前市長と違って小池知事は6年以上も怠慢を続けた後、都知事選前年(23年)になって子育て政策をようやく本格始動したようなのだ。

 都庁に問い合わせると、2期8年のチルドレンファースト関連予算の推移を教えてくれたが、泉前市長の指摘通り、昨年から急に増えていたことが確認できた。

 年    予算額  2016年比
2016年  1.2兆円   1.00
2017年  1.3兆円   1.08
2018年  1.3兆円   1.08
2019年  1.3兆円   1.08
2020年  1.4兆円   1.16
2021年  1.4兆円   1.16
2022年  1.4兆円   1.16
2023年  1.6兆円   1.33
2024年  1.8兆円   1.50

 初動の遅れとはまさにこのことだ。要するにチルドレンファースト関連予算は最初の6年間は微増にすぎず、都知事選前年になり急に増え始めた。知事就任から6年も経って泉・明石市政のパクリを始めたが、この初動遅れが東京都の出生率が過去最低となった大きな原因と考えられる。知事選前年から子育て政策を本格始動させた小池都政と、最初から“全力投球”をして兵庫県下トップの出生率1.63を維持する泉・明石市政とは、決定的な違いがあるのだ。

 小池都政の子育て政策本格化の遅れ(6年間の怠慢)の弊害は、多摩地区の学校給食無償化率の低さも招いていた。23区内では学校給食無償化が100%実現しているが、多摩地区は50%台に止まっている。

小池百合子知事    6月5日に小池氏が公務で八王子市の学校給食センターを視察した際、初宿和夫市長は「明日市議会本会議がありますが、ここで議決をいただいたならば、この8月から学校給食無償化ができます。これも東京都が補助をして下さるのが大きなきっかけになりました」と感謝する挨拶をしたが、別の言い方をすれば、「小池知事2期8年の間には実現しなかった」となる。都の支援(補助)がもっと早ければ、任期中に実現していたのは確実で、褒められるような話ではないはずだ。

 そこで視察後の囲み取材で私は、小池氏が「(学校給食無償化を)着々と進めていますので、どうぞご安心いただければ」と述べて質疑応答を打ち切った瞬間、こんな声掛け質問をした。

 「(8月開始の八王子市の無償化が)遅れた理由は何か。これから“萩生田百合子街宣”か。(選挙対策を)萩生田さんと相談するのか。学校給食(無償化)が遅れたのは、都の支援が遅れたからではないか。怠慢こいていたから遅れたのではないか。任期中に実現しなかったでしょう」

 しかし小池氏はここでも一言も発することなく車に乗り込んだ。すぐそばで、小池氏を見送っていた初宿市長にも同じ質問をぶつけた。

 「市長、(学校給食)無償化が遅れた理由は何か。(小池知事の)任期中に実現しなかったではないか」「都の支援が遅すぎたせいではないか」と聞いたが、初市長は「取材、ありがとうございます」というだけで、小池都政の初動遅れを批判することはしなかった。

 小池氏の詐欺的発信の手法が浮き彫りになってきた。東京の出生率が0.99と過去最低となっても、八王子市など多摩地区の学校給食無償化が任期中に未達でも、子育て政策本格始動が遅れた小池都政の失敗(6年間の怠慢)を認めず、「チルドレンファースト」など耳障りの良いキャッチフレーズを連発、やっている感を演出するというものだ。

 実績(成果)を出してきた泉・明石市政と“口先小池都政”の決定的違いに、少なからぬ有権者が気づいていくのか。それとも、多くの都民が「メディアコントロール(世論操作)の天才」と呼びたくなる小池氏の訴えをうのみにするのか。都知事選の結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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