2024年12月28日( 土 )

立憲・城井県連代表、同志の議員を路頭に迷わすのか~連合の支援なしに戦えないとの声続出(1)

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 野党第一党・立憲民主党の福岡県連が来夏の参議院選挙の候補者選定をめぐり揺れている。支持団体の連合福岡は、慎重な候補者選びを立憲に求めているが、県連代表の城井崇氏は、13日の常任幹事会で示したスケジュールで進める意向だ。労働組合の支援が得られなくなれば、政権交代どころか、崩壊しかねない。

過去2回の参院選は旧民主が分裂

 衆議院の解散総選挙も気になるところだが、各党はちょうど1年を切った来夏の参議院選挙の候補者選定に心血を注いでいる。

 全国47都道府県のなかで、福岡県の参議院議席数は3議席である。これまでの選挙で、自民・公明・旧民主(立憲)が議席を確保してきた。それゆえに「プラチナチケット」とも呼ばれ、野党系では旧民主系の立憲が握っている。

 福岡県選挙区では、自民は参議院幹事長を務める松山政司氏、公明は下野六太氏の名前が挙がっている。

 前回(2022年)の選挙では、過去最多の16人が立候補。トップ当選は自民の大家敏志氏、2位は立憲の古賀之士氏、3位は公明の秋野公造氏であった。なお、現在、国民民主党福岡県連代表で、県議の太田京子氏も立候補していた。

 19年の選挙では9人が3議席を争ったが、自民・松山氏がトップで、2番手が公明・下野氏、立憲の野田国義氏は3番手で当選したが、国民民主党が新人で弁護士の春田久美子氏を擁立したため、支持団体である連合の組織票が割れた。

 年内にもあるとみられる解散総選挙でも、11ある福岡県の小選挙区を連合福岡の仲介で、立憲・国民が選挙区調整を行っている。福岡県議会では、両党は旧民主党以来、民主県政県議団としてまとまっている。ただ、現場レベルでは両党の関係は必ずしもしっくりといっておらず、連合福岡は調整に苦労している。

 労働組合のナショナルセンターである連合(日本労働組合総連合会)は、1989年に旧総評と旧同盟などに加盟する民間労組と公務員労組が1つになって、自民党にかわる「新しい政治勢力の形成」を掲げた。93年の細川政権や2009年の民主党政権では非自民勢力の結集を後押しした。

公募締切まで数日

 現在、労組の支持は立憲と国民にわかれており、両党にとって最大の支持母体だ。選挙では、連合傘下の労組がポスター張りや演説会の動員などを通じて、両党を支えている。ところが、当社が報じてきた来夏の参議院選挙に向けた立憲県連の候補者選びをめぐって、城井崇県連代表が党内や連合福岡の慎重論を押し切って、事実上、現職の野田氏の3選に利する動きをしているという。

 今月13日の立憲県連の常任幹事会において、来夏の参議院候補者の公募を決定した。公募は14日から始まっており、8月5日に締め切られるため、締切まであと数日となっている。選考の主な流れは以下の通り。

8月中旬 号外(選挙公報)・投票はがき発送
8月下旬 北九州・福岡・筑後の3カ所で討論会を開催
9月6日 投票締め切り(消印無効)
9月7日〜13日開票
9月14日午後1時半 県連常任幹事会で投票結果報告
9月中旬 県連選挙対策委員会で審議し、党本部へ上申

 一応形は整っているように見えるが、参議院選挙は全県区であり、当然のことながら、かかる費用も大きい。「今からやります」といって短期間で準備ができる人はそういないだろう。

 立憲県連関係者は「各総支部に行ったアンケートで野田氏の評価が芳しくなかった。衆院福岡7区に自分の秘書を出そうとしたのも焦りからだろう」と語った。

不可解な城井氏の独断的行動

 そもそも、立憲・国民両党は、衆議院の県内11選挙区において連合福岡の仲介で選挙区調整を行っているが、連合福岡には、参議院も一本化したいという考えがある。連合福岡は、支持政党が分裂した状況をどうにかしたいが、政策や思想の違い、互いの面子もあるため細心の注意を払ってきた。

 連合が結成されたのはベルリンの壁崩壊と同じ年の1989年だ。日教組や自治労などの公務員労組と、サービス業などが加盟するUAゼンセンや電力総連など民間労組が、立場の違いを乗り越えて結集している。

 連合に加盟する労組関係者も「昔のような対立の時代じゃない。基本政策など折り合いをつけて、まとまるべきだ」と考えている。

 そうした思いを無視して城井氏は公募を決め、9月中旬に決定しようとしている。しかし、連合福岡は、急がずに年内いっぱいをかけて慎重に検討したほうが良いとの意向だという。立憲の本部も「連合と調整してほしい」というのが本心だ。立憲県連内にも、公募には賛成だが、若手・中堅を中心に幅広く人材を募るべきとの声が多い。

 城井氏は松下政経塾の出身だが、同塾のOB政治家にみられる右寄り発言を行うことはなく、穏健な性格とみられていた。県連内の評価も「慎重派で、ごり押ししたりしない」という。なぜ、今回は、最大の支持団体・連合福岡の声を押し切って、急いで決めようとしているのか。

 城井氏は結果的に、旧民主党以来の連合との信頼関係を破壊し、同僚議員や同志を路頭に迷わせようとしている。自民の政治資金問題が明らかになり、国民の怒りは沸騰した。政権交代に近づいたかと思われたが、自民はほくそ笑んでいることだろう。

 前述したように、立憲(国民も)はポスター掲示から、支援者名簿獲得、演説会の動員に至るまで、連合とその加盟労組の協力抜きに成り立たない。企業や多種多様な業界団体、宗教団体が選挙を支える自民党との違いはそこにある。

 信頼関係を築くのは簡単なことではない。果たして最大の支持者であり、理解者である連合と決裂していいのだろうか。

【近藤将勝】

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