2024年11月22日( 金 )

【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略(第2回)企業価値の財務的評価について

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はじめに

 今回は、企業価値の財務的評価について、企業価値算定方法の考え方と、判断材料として注目されている総合的財務指標を取り上げます。

企業価値算定方法

 1回目でも簡単に触れましたが、企業価値の算定方法には『コスト・アプローチ』『マーケット・アプローチ』『インカム・アプローチ』の3つがあります。

 ざっくりとした説明になりますが、『コスト・アプローチ』は、企業の保有資産の総資産額から負債の時価総額を差し引いた純資産額(=時価純資産法)をベースに算定する方法です。『マーケット・アプローチ』は、自社や類似業種の株価をベースに計算する方法、『インカム・アプローチ』は、企業が将来生み出すと期待されるキャッシュフローをベースに計算する方法です。

 もちろん、財務的評価においても、決算書に表れない企業独自の技術力などの「のれん(超過収益力」も考慮する必要はありますが、M&Aなどで用いられる最も簡易的な企業価値の算定方法は、『コスト・アプローチ』で、たとえば時価純資産が2,000万円、営業利益(過去3年程度の平均)1,000万円とすると、企業価値=時価純資産額2,000万円+営業利益1,000万円×3年(=3,000万円)=5,000万円くらいと見るのがだいたいの相場になります。 

 なお、インカム・アプローチによる企業価値算定は、将来キャッシュフローを予測する必要がありますが、経済動向をはじめさまざまな外部環境の変化といった多くの要因が影響を与えるため、正確な将来予測を行うことが難しいというデメリットがあります。

総合的財務指標

 次に、総合的財務指標から見た企業評価について、ここでは2つ説明します。

(1)総資本経常利益率(ROA=Return On Assets)
 ROA(%)=事業利益÷総資産×100 

 ROAは、企業の総合的な収益力を測定する指標です。分子の利益に何を用いるかについては、いくつかの考え方がありますが、ここでは、株主と債権者、両者へのリターンの源泉となる「事業利益(=経常利益+支払利息)」を用いています。ROAをみると、企業が保有する資産に対してどの程度の利益を上げているのかがわかります。ただし、資産のなかには事業に直接関係のないものが含まれていることもあるので、同規模同業種であってもROAに大きな差が生じる場合もあります。

(2)投下資本利益率(ROIC= Return On Invested Capital)
 ROIC(%)=税引後営業利益 ÷(株主資本+有利子負債)×100 

 ROAが資産の有効活用という観点から企業の「総合的な収益力」を評価するのに対し、ROICは、ずばり企業の「稼ぐ力」を評価する指標です。企業が事業活動に投入した資金を使って、どれだけ効率よく税引後営業利益を生み出すことができているのかを測定します。

 とくに、私がROICに着目するのは、この指標を企業価値向上のゴール目標(KGI=Key Goal Indicator)として設定することで、業務プロセスの改善点の発見と課題解決に向けた道筋を明確化できる点にあります。

 企業価値に大きな影響をおよぼす要因をバリュードライバー(Value Driver)と呼びます。これは文字通り「価値(Value)の因子(Driver)」となる要素です。バリュードライバーの分類の仕方は多々ありますが、「稼ぐ力=収益性×効率性」と考えると以下の要素にまとめられます。

 ①売上総利益率、②販管費率、③運転資金回転率、④固定資産回転率 

 バリュードライバーを分析する目的は、ROIC(投下資本利益率)を分解して現在の事業構造を明確化し、自社の企業価値を上げるために必要な具体的施策を講じることにあります。

まとめ

 今回は、企業価値をさまざまな角度から考察しました。次回以降は、各々の構成要素と企業価値向上の考え方や評価について考察を深めていきます。


<INFORMATION>
(株)コンシャスマネジメント

所在地:福岡市中央区天神1-4-1
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TEL:092-736-7528


<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆
(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立

(1)企業価値向上の源泉について考える
(3)ROICを活用した企業価値の向上

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