福岡・那珂川市長選、現職の武末氏が3選~投票率は過去最低
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任期満了にともなう那珂川市長選挙の投開票が4日に行われ、無所属で現職の武末茂喜氏(71)が、同じく無所属で新人の前市議会議長・高原隆則氏(63)(公明推薦)を破り、3選を決めた。
武末氏は旧那珂川町長時代から16年間首長を務めてきたが、現職の強みを生かして「市政の継続が必要」と訴えた。また、16年におよぶ市政(町政含む)で、教育や高齢者福祉にも力を入れてきた。
同市は、福岡市のベッドタウンとして博多南駅周辺を中心にマンションなどが建ち並び、若い子育て世帯の住民が増えており、子育て支援や高齢者福祉の充実が3選に有利に働いたものとみられる。
敗れた高原氏は前議長で、保守系の会派に所属。武末市政を「停滞」と批判したが、市議を辞職しての立候補に、保守系のなかでも賛否が分かれ、自民党那珂川支部は、現職も新人の高原氏も推薦を行わずに静観の構えを見せた。
旧那珂川町長選から無投票が続いていたが、今回の選挙で市長を選ぶ機会が到来した。しかし、投票率は28.35%と過去最低を記録、過去10年間の福岡県内の市町村選挙でも最低の投票率だった。
隣接する春日市でも昨年、市長選挙が行われ投票率は42.48%だった。春日市長は、福岡県内の首長のなかでは在任期間が一番長いが、2人の対抗馬も立候補し、盛り上がりを見せた。なお、2019年の市長選の投票率も同じく42.48%だった。
春日市と那珂川市で、なぜこれほどまでに投票率に差があるのだろうか。地元関係者は「現職と新人、ともに旧那珂川町職員出身で、争点が見えづらかった」と話す。また、選挙戦が行われた期間は、連日30度を超える猛暑で、投票所に足が向かなかったという指摘もあった。しかし、期日前投票も可能で、暑さが和らぐ時間帯もあり、投票権を放棄する理由にはならない。
那珂川市を「住みやすい街」と評価する声は多いが、生活に欠かせない公共交通には課題がある。新幹線の博多南駅があるものの、JR鹿児島線や西鉄天神大牟田線の路線はなく、西鉄バス二日市と福岡第一交通に運行を委託したコミュニティバス「かわせみ」が市民の足となっている。
自家用車を運転できない高齢者などからは、「かわせみ」の増便を求める声も出ているが、運転手の確保や燃料代の高騰などで、路線の維持そのものが懸念されている状況だ。このまま市民が行政に無関心な姿勢をとり続けるようであれば、行政は「市民の理解を得た」として、減便や廃線へと舵を切ることも十分に考えられる。
市長選は、現在だけではなく、将来の市のビジョンにも関わることだ。投票に行って、真剣に「那珂川のこれから」を考えるべきではなかったか。
昨今、諸外国では政治的変化がみられている。英国では最大野党・労働党が議会下院の650議席のうち400議席を超える大勝を収め、14年ぶりとなる政権交代が実現した。
両国で意識の違いはあるだろうが、やはり政治に無関心な層が多いのは問題だと言わざるを得ない。自分たちが住む自治体の首長選挙にすら足を運ばないようでは、政治や行政がよくなるはずがないと断言できる。
【近藤将勝】
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