2024年09月02日( 月 )

多彩な顔持つ福岡市の湾岸(2)

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 北側が博多湾に面する福岡市──。その湾岸エリアは港湾施設やレジャー拠点のみならず、公園や住宅地など多彩な表情をもつ。また、東区のアイランドシティでは新たなまちづくりが進行するなど、さらなる発展の余地も残されている。今回はそうした福岡市の湾岸エリアについて焦点を当て、これまでの開発の経緯や今後について見ていこう。

中央区・早良区は「都会の港」エリア

 福岡市の湾岸エリアには、商業地区として多くの人々を引きつけている場所もある。その代表的なものが、中央区地行浜から早良区百道浜に跨がる「シーサイドももち」エリアだろう。地行浜地区には「みずほPayPayドーム福岡」「MARK IS 福岡ももち」「ヒルトン福岡シーホーク」「国立病院機構九州医療センター」のほか、中国領事館と韓国領事館などが建ち並ぶ。一方、百道浜地区にはシーサイドももち海浜公園のほか、福岡タワーや福岡市博物館、さらには放送局などがあり、福岡市の副都心的な位置づけを担っている。福岡タワー西側用地では現在、(株)西武・プリンスホテルズワールドワイドホテルにより「プリンスホテル」(全229室)の建設が26年度の開業を目指して行われている。

(左)試合観戦に来場者が足を運ぶ「みずほPayPayドーム福岡」 (右)ドーム側から見た「シーサイドももち」地区
(左)試合観戦に来場者が足を運ぶ「みずほPayPayドーム福岡」
(右)ドーム側から見た「シーサイドももち」地区

 海岸部分には、「シーサイドももち海浜公園」が約1kmにわたって広がっており、結婚式場「マリゾン」がある。また、その東側は遊泳エリア、西側にはビーチバレーコートも設けられており、福岡市を代表する観光名所の1つとして、外国人観光客を含めた多くの人たちで賑わっている。なお、当該地域は、1989年開催の「アジア太平洋博覧会」(よかトピア)に向け埋め立て開発されたエリアでもある。

マリゾン周辺の様子
マリゾン周辺の様子

 ベイサイドプレイスと、シーサイドももちに挟まれるようなかたちで立地する長浜エリアも、福岡市における特色のある湾岸エリアだ。長浜鮮魚市場を中心に西側には「かもめ広場」とその先にはENEOS(株)の福岡第1油槽所、福岡市中部水処理センターなどがある荒津地区、そして西公園などが存在する。東側には工場や倉庫が建ち並ぶ那の津地区、そこから南下すると「BOAT RACE福岡」(福岡競艇場)などがある天神北地区に至る。周囲にはオフィスビルやマンションが建ち並ぶ。

 このうち、長浜地区を代表する施設・長浜鮮魚市場は現在、九州・西日本から集まる豊富な魚種、鮮度の高さなどの強みを生かし、魚介類を中心とする「食に新たな価値を付加する機能」を強化するための再開発を展開中だ。具体的には、既存施設である東冷蔵棟を活用し、市場特有の雰囲気や、高い天井高など東冷蔵庫棟の魅力を活用し、人を集め交流を促す機能(イベント・コミュニケーションの場)の導入を図り、市場全体の活性化につなげようとしている。また、23年6月に「長浜屋台街」が復活。天神や中洲、博多駅周辺の屋台街とは異なる趣きがあることから、夕方からはこの地域での人流や賑わいを増すことに貢献している。このほか、21年にショッピングセンター「キテラタウン福岡長浜」が開業。「ざうお天神店」跡地では、今夏ケーズデンキ福岡長浜店がオープン予定となっている。ハード・ソフト両面でのまちづくりが着実に進む同エリア。周辺エリアへの波及効果も気になるところだ。

長浜鮮魚市場
長浜鮮魚市場

 荒津地区にはケミカルタンカーの造船を主に行っている福岡造船(株)のドックがあり、進水式は地域住民だけでなく造船マニアや工場マニアなどに人気のイベントになっている。荒戸と博多漁港(長浜)の間にある公園・かもめ広場は、地域住民の憩いの場だ。かもめ広場は大濠公園や西公園に比べればはるかに小さく、決して目立つ存在ではないが、海に面したその立地特性から、魅力ある港の景観を楽しむことができる。

 この地区で注目されるのが30階建の賃貸用タワーマンション「カスタリア大濠ベイタワー」の跡地開発だ。TOYO TIRE(株)(旧・東洋ゴム工業(株))の免震ゴムによる免震構造が特徴の1つだったが、建築基準法上の違反建築物と判明。現在はその解体作業が終盤を迎えている。大和ハウス工業グループの所有であるが、解体後、新たに従前と同様にタワーマンション建設が行われる模様だ。

解体中のカスタリア大濠ベイタワー
解体中のカスタリア大濠ベイタワー

(つづく)

【田中直輝】

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