国の法制度が整いつつあるが
日本の森林率は約7割で、これは先進国のなかでフィンランド、スウェーデンに次いでOECD加盟国中第3位の森林率だ。つまり、日本には森林資源が豊富に存在するわけで、多くが伐採時期を迎えたものである。そのため近年になって国産材の利用促進、それによる林業再生を目指す政策も強化され、その成果も現れつつある。林野庁がまとめ2日に閣議決定された2025年度版「森林・林業白書」によると、24年の木材自給率は42.5%となり、これは最も低かった02年の18.8%から大きく回復したかたちである。
【表1】は木材供給量と木材自給率の推移。木材の需要先は主に住宅向けであり、供給量は約163万戸の新設住宅着工戸数があった1996年がピークだった。このころにはすでに北米や北欧が日本向けに原木や製材の輸出を拡大。輸入材の価格が下がり、価格競争力を重視した住宅事業者が、品質面でも安定していたことを受け輸入材の採用を増やし、その結果、国産材の供給量が減少し、自給率も低下傾向となった。
ところが、2010年施行の「公共建築物等木材利用促進法」(21年にはそれを発展させるかたちの「都市(まち)の木造化推進法」が施行)、森林環境税・森林環境譲与税(24年)の導入など、政府が政策として国産材活用の推進強化に乗り出した。加えて、21年に発生したウッドショックにより、木材調達が滞ったことを背景に、住宅事業者らが国産材へのシフトを強めたことなどが、木材自給率の改善につながった要因だ。【表2】は建築用の国産材の割合を表したもの。白書によると、24年は52.9%となり、2年連続の50%超え(23年は55.3%)となっている。
「価格」は低調な推移のまま
このように木材自給率は改善傾向にあるものの、木材関連産業にはまだまだ課題が多く、その解消には難しいハードルが横たわっている。何よりの課題は、価格自体が大きく改善されたわけではないことだ。【表3】は丸太の価格推移を表すもの。スギ中丸太の平均単価は1980年代に1m3あたり約4万円だったが、25年は1万5,400円、ヒノキ中丸太は同じく約8万円だったものが2万5,300円となっている。
ウッドショックの影響などから若干の価格上昇が見られるが、そのため山林所有者の所得改善には至っていないのだ。もともと、国産材は丸太を急峻な山のなかから産出するケースが多く、そうではない北米・欧州産材に比べ伐採のためのコストが高く、それが競争力低下の要因の1つになっていた。また、高齢化や従事者人口の減少により山側には伐採できる量に限界がある。仮に需要者側のニーズが高まったとしても容易に対応できるものではなく、それが木材自給率が容易に上昇しない理由の1つになっている。
価格については、製材品(柱や梁などのプレカット材など)についても同様だ。【表4】はその推移を表すものだが、こちらもウッドショック以降、それ以前よりは高い水準にはあるものの、大きな価格上昇はしていない。これは、住宅市場の低迷を背景に需要者である住宅事業者に、コストダウン意識が根強いためだ。
輸入材による製材品はサプライチェーンが整備され安定的な供給体制があり、かつ品質の安定も確立されている。それが住宅事業者が輸入材を選択する大きな理由の1つだ。一方、国産材による製材品については森林所有者、製材所、プレカット工場などが各地に散在しており、安定した供給体制が整っていない。加えて、地域の中小事業者が多く、販売価格が上昇しないため収益性が乏しく新規設備投資が難しく、より安定した品質のJAS材などの生産量が増加しない傾向にあることも、製材品価格が低水準にあることの理由となっている。
根深い森林の地籍調査問題
このように、木材自給率の改善が見られる一方で、木材関連産業の置かれる状況は決して改善されているわけではない。とくに山側の課題は深刻で、森林の地籍調査が進捗しないと、伐採やその後の再造林が進まない。白書によると、「2024年度末時点での地籍調査進捗率は宅地で52%、農地で71%であるのに対して、林地では47%にとどまっており、林地における地籍調査の進捗が遅れている」とある。地籍調査の進展が進まないことには林業再生のカギを握る集約化もまた進まない。
今後は最大の需要先である住宅市場の縮小が人口減少のためにより低迷し、需要が先細りするのは確実な情勢。それに代わる中大規模建築物(非住宅)の需要開拓をはじめとする取り組みが強く求められる。また、従来それらの素材となってきたRC造や鉄骨造、さらには同じ木造の輸入材に対する競争力をいかに高められるかが、木材自給率や建築用国産材の割合をさらに上昇させるためのカギとなる。そのためには林業はもちろん、木材加工事業者の集約化、さらには川下の住宅事業者や建設事業者、設計事業者ら、木材産業のサプライチェーンに携わる人たちの緊密な連携も求められる。
いずれにせよ、木材は資源が少ない日本における重要な資源。その有効活用や森林の健全性を保つことは、地域経済や環境に与える影響も大きいことから、木材活用の今後の在り方についてはより注視すべきだ。
【田中直輝】












