2024年11月23日( 土 )

自民党総裁選・小泉氏失速で、高市氏は日本初の女性宰相になれるか

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 自民党総裁選は、いよいよ終盤戦に入ってきたが、当初期待された小泉進次郎氏が「解雇規制緩和」「選択的夫婦別姓」で失速し、代わって、3位とみられた高市早苗経済安保大臣の勢いが増している。

■キングメーカーの争い
 9月27日投開票の自民党総裁選挙は、緒戦で有力候補とされていた小泉進次郎氏だったが、9人の候補者による討論会で期待されたほどの存在感はなく、地方党員の支持が伸び悩んでいる。

 今回の総裁選の動きが混迷しているのは、キングメーカーである菅義偉前首相と麻生太郎副総裁というふたりの元首相同士の争いが絡み合っていることが背景にある。麻生氏は2012年以来、長期にわたって政権の実権を掌握してきたが、菅氏が推す小泉氏が勝利すれば一気に非主流派へと転落する。また、麻生氏と石破氏は折り合いが悪く、旧安倍派議員も、石破氏が安倍政権を批判してきた経緯から乗ることはできない。そこで保守的な高市氏が浮上している面がある。

 ただ、自民党という政党は複雑怪奇な一面も持ち合わせている。高市氏、石破氏、小泉氏の3人が競り合っており、いずれか上位2人が決選投票で争う公算が高まっているが、高市人気に対する嫉妬は他陣営の国会議員に大きいものがある。

■リーフレット郵送は高市氏の誤算
 総裁選にあたり自民党は、総裁選に費用がかかりすぎて若手などに不利との批判を受けて、政策パンフなどの郵送を禁止することを決めていた。ところが、高市氏の陣営から全国の党員に対して政策に関するリーフレットが送られていたことが判明した。

 自民党総裁選挙管理委員会の逢沢一郎委員長は、総裁選告示前の11日、高市氏を口頭で注意した。それに対して高市氏は弁明書を党選管に提出した。そのなかで、8月末にはリーフレットの発送作業に入っており、選管が党内に周知した9月4日に配送を止めようとしたが間に合わなかったと弁明している。

 高市氏の党員支持が上昇したことに、高市氏支持の党員や支援者は喜んでいただけに、自民党執行部の動きを「高市つぶしだ」と反発する声が挙がっている。

■岩盤保守層の強力な支持
 高市氏の支持基盤は、いわゆる岩盤保守層だが、福岡においては、「高市早苗さんと歩む福岡県民の会」という団体が結成されており、高市氏を招いての集会に毎回約千人近くの動員力を有する。

 同会会長は松尾新吾元九州電力会長。副会長が、石原進・元JR九州会長や元文部科学副大臣の西川京子氏、関家具の関文彦会長で、日本会議福岡のメンバーが中心となっている。選択的夫婦別姓には反対で、首相の靖国神社参拝を求め、中国に対する強硬姿勢を主張する。

 こうした主張に安倍政権時代、自民党議員の多くが同調してきた。現実には、安倍氏も「働き方改革」などリベラルな政策を実施したからこそ長期政権となったが、保守層に対する配慮を欠かさなかった。菅義偉・岸田文雄両政権では、安倍氏のような保守層との蜜月関係はなく、保守層が求める憲法改正を取り組むことを強調したこと以外は、目立ったものはなかった。

 岸田政権に不満を持つ保守層からみると、高市氏こそ希望の星であり、次期首相にふさわしい候補だが、当然、それを快く思わない他候補・陣営は少なくない。「夜のつきあいが悪い」などの話が広まっているのは、意図的に流されている面はあるだろう。

 現在、いまだ多くの自民党議員が誰につくのか態度を決めかねているという。自民党総裁選は無記名投票であり、誰が誰に票を投じたかはわからない仕組みだ。

 年内に行われるとみられる衆議院選挙を考慮すると、どの候補が総裁になれば自分の選挙で勝利できるかが最大の焦点となる。

 小泉氏の失速の原因は「解雇規制緩和」などの主張が、かつて父・純一郎氏が竹中平蔵氏をブレーンにすえて実施した「聖域なき構造改革」のマイナス面を彷彿とさせて、それに対する危機感が国民各層で高まったからだ。

 自民党内の思惑とは別に、保守的な党員の支持を獲得し、経済界の支持も得つつある高市氏だが、安倍元首相から敵視された石破氏がそうであったように、議員票が大きな壁として立ちはだかる。はたして国会議員の仲間を増やして、日本初の女性宰相の地位を得ることができるのか。注目される。

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