世界のEV市場「成長の壁」に直面(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏EVシフトで分かった「不都合な真実」(つづき)
2つ目に欧米企業は新工場の建設に数十億ドルという莫大な資金を投資しているが、中国企業による値下げ合戦があり、EV市場で利益を上げることが簡単ではないことに気づき始めていることが挙げられる。
今回のようにEV失速が起きた背景として、ヨーロッパ市場では昨年末に最大市場のドイツでEVの購入補助金が打ち切られたことや、フランスでも補助金が縮小されたこと、それに、ウクライナ侵攻で最近電気代が高騰していることなどが指摘されている。また、新しいテクノロジーの商品に飛び付く「アーリー・アダプター層」の買いが一巡したことや、24年1月にアメリカを襲った大寒波でバッテリーの性能が下がり、多くのEVが立ち往生したことが大きなニュースとなったことなど、諸々の要因が影響しているという。
EVに代わりHVやPHEVが躍進
調査会社のマークラインズによれば23年は世界市場でのEVの伸び率が26%だったのに対して、HVは30%超増と、台数だけでなく、伸び率でもEVを上回っていたという。充電インフラが不足しているなかで、航速距離に不安感をもっている消費者は、電池が切れても、エンジンで長距離走行ができるPHEVを選択しているようだ。日本のトヨタ自動車はHVの販売で初めて300万台を超えたという。北米や欧州を中心にHVの販売が好調だったようだ。
EV不振で電池メーカーも苦境に
EVの販売が失速した原因は、一般ユーザーが購入するには、まだまだ高価だからだ。そのため、補助金がない場合、買おうと考える人は少ない。電池の価格がもっと安くなり、価格が手ごろになると、販売に弾みがつくだろう。それには、コストの約3割を占めるとされる電池の価格引き下げや性能向上がポイントになる。
中国EVメーカーは、低価格のリン酸鉄電池を採用することで低価格化を実現している。また、リン酸鉄電池は価格が安い上に、発火しないというメリットもある。中国の安いバッテリーに抑えられ、韓国の車載電池メーカーのシェアは、少しずつ落ちている。そのうえリチウムバッテリーの原材料を中国に依存している韓国企業は、不利な闘いを強いられている。
韓国の車載電池メーカーはEV時代に備えて莫大な投資を断行しているが、思わぬEV市場の失速で、大変苦境に陥っている。減速していても、EV市場は今後、必ず伸びて行くという声もある。市場の失速を良い機会に、将来に備えてもっと準備をするなり、競争力の強化を図るなりする時期であろう。世界経済の先行きが不透明となった現在、EV市場にも試練が訪れ、今後、業界の再編につながっていく可能性も否定できない。
(了)
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