2024年12月23日( 月 )

【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略(4)中小企業にも役立つ『ROIC経営』の基本

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はじめに

 今回は、「稼ぐ力=収益性×効率性」という考え方に基づき、前回の営業利益率の向上(収益性)に続いて投下資本回転率(効率性)の向上について説明し、その後、まとめとして『ROIC経営』の基本についてお話しいたします。

効率性の向上

 前回は、営業利益率向上(収益性)の観点から飲食店の原価率を例にお話ししました。今回も、前回からの流れで、同じ飲食店の例を用いて投下資本回転率(効率性)の向上について説明します。

 投下資本回転率は、運転資金回転率と固定資産回転率に大別されます。このうち、固定資産回転率は、設備の使用効率の改善や無駄な固定資産の処分などによって向上しますが、運転資金回転率は少し分解して考える必要があります。この場合の運転資金は営業運転資本(=売上債権+棚卸資産-仕入債務)を指しますが、売上や仕入は相手があることですから、専ら自社の努力で運転資金回転率を改善するには棚卸資産回転率を上げるのが一番の近道になります。なお、棚卸資産回転率の算出には、①売上高÷期末棚卸資産、②売上原価÷期末棚卸資産、の2通りの方法がありますが、企業の経営状況や問題点の把握など、財務分析に活用する際は①の算出方法で十分だと思います。

 少し前置きが長くなりましたが、運転資金回転率というバリュードライバーを上げるためには、飲食店の場合、棚卸資産回転率の向上が最も取り組みやすいと思われます。その対策としては、前回の原価率の時と同様に在庫管理の改善が課題となります。たとえば、1カ月間のメニューの出数を検証し、出数の少ないCランクのメニューを廃止することで仕入食材の種類を絞り込むなどの方法が考えられます。そうすると少ない手持ち在庫でメニューを賄えるため、棚卸資産回転率の向上を通じてゴール目標(KGI)であるROICの上昇が可能になります。

『ROIC経営』の基本

 ROIC経営の本質は、大雑把にいうと、現場の行動を変えることで企業価値の向上を図るという点にあります。まず、現場で抱えている課題を抽出してバリュードライバーのうち、どの要素がその課題解決に直結しているかを判断し、改善に向けた指標(KPI)を設定します。たとえば、先程の例でいえば、現場で食材の種類が多すぎて管理が難しいという課題が生じている場合、仕入食材を絞り込んで発注・在庫管理の効率化ができれば、在庫回転率の向上を通じたROICの上昇につなげられる、といった流れです。

 なお、『ROIC経営』が企業に根づくためには、現場のスタッフが抱えている課題に基づいた指標を設定し、現場スタッフ自身が結果にコミットするのが何より重要なことだといえます。大企業が『ROIC経営』に取り組む目的にはさまざまな要因があり、あえてここでは取り上げませんが、中小企業は、そのエッセンスとして“ROICを分解して現場レベルのKPIに落とし込む”ことで、着実に稼ぐ力を強化していくことにフォーカスすれば、大きなメリットが得られるはずです。ですから、私は、何より現場レベルで全社一丸となってROICを向上させていくことが『ROIC経営』の基本であると考えています。

まとめ

 第3回、4回で、ROIC経営の観点から企業価値向上についてお話ししてきました。今回の説明は、あくまでもROIC経営の一側面のみにフォーカスした説明ではありますが、中小企業の経営に役立つエッセンスを抽出した内容になっていると思います。次回は、さらにROIC経営を実践するうえで欠かせない『KPIマネジメント』について、具体例を使って少し深堀してみたいと思います。


<INFORMATION>
(株)コンシャスマネジメント

所在地:福岡市中央区天神1-4-1
    西日本新聞会館16階
    (天神スカイホール内)
TEL:092-736-7528


<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆
(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立

(3)ROICを活用した企業価値の向上
(5)『KPIマネジメント』の実践によるROICの向上

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