【トップインタビュー】宅地開発を通じ地域に貢献 実績を重ね成長を続ける
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(株)海王
代表取締役 竹下晃平 氏北九州を本拠地とし、福岡市西区および福岡県久留米市に営業拠点をもつ宅地開発業者の(株)海王。2011年から23年の間に1,824区画の開発・販売実績を誇る同社の代表取締役、竹下晃平氏に業界環境や今後の展望について話を聞いた。
祖業は輸入砂・建築資材販売
──まずは会社概要について聞かせください。
竹下晃平氏(以下、竹下) 当社は、2000年2月に初代社長・福森功氏が設立したのが始まりです。後に2代目代表となる私の父・竹下弘実は当時部長でした。もともと、輸入川砂を取り扱う貿易関係を主業としており、沖縄県那覇市にも支店を構えていたようです。供給体制を整え、品質と価格を強みに販路を拡大して、業績を伸ばしていました。その後、06年8月、竹下弘実が代表となりました。
──現在の主業である不動産業に転換した理由はどのようなことでしょう。
竹下 07年3月、中国政府が資源や環境保護の理由から川砂の輸出を全面的に禁止する措置を取ったことが、輸入川砂貿易から撤退した理由です。想定通りのものが入ってこなくなるので事業転換を余儀なくされました。そこで当時、主業とは別に手がけていた不動産業に転換することになりました。当時は本当に大変だったと思います。
不動産事業の本格化 転機は50区画販売
──そこから不動産事業を本格化させていくことになったわけですね。
竹下 不動産事業は当初、父と当時の貿易業を行っていたメンバー数人で小規模にやっており主に仲介や建売住宅の販売代理業務メインだったようです。次第に物件を購入し、建物を解体し更地にして売却するなどの不動産売買を行うようになりました。11年7月に久留米支店を開設して業容を拡大し、そのころから宅地開発事業を本格化しました。大きな転機は、13年に久留米市山川で住宅宅地分譲50区画を開発・販売したことです。
それまではほとんどが10区画に満たず、最大でも20区画の取り扱いでしたので、50区画もの開発・販売は父や会社にとって大きな自信となり、その後の拡大のきっかけになったと聞いています。13年12月期の売上高は、前期比約3倍となる7億円台になりました。15年1月に福岡市西区に九大支店を開設し、翌16年には物件数、区画数とも前年比2倍以上となり16年12月期の売上高は初めて10億円を突破して、15億5,011万円になりました。その後も実績を重ねていくことで増収が続き、私が入社したときには20億円台の売上高になっていました。
29歳で代表に就任
──晃平社長が3代目代表になった経緯を聞かせてください。
竹下 私は東京の大学に進学し、卒業後は不動産業界のことを学ぶため、都内の不動産会社に入社しました。やはり、いずれは地元に帰り、父の跡を継ぐことを考えていました。というのも、私が高校生のころ父が重い病気を患っていることを知りましたので。東京で働きながら、父と体調のことや、さまざまなことを相談し、少し早いとは思いましたが、私は20年4月に北九州に戻ってきて当社に入社しました。
その後、父の下で経営を学び、翌21年5月に代表に就任しました。父が亡くなる半年前のことでした。父の体調の面もあり、正直、完璧に引き継ぎができておらず、当時は社員の皆さんに不安を与えてしまっていたかもしれません。それでも自分なりに考え、まわりと意見交換をしながら乗り越えてきたつもりです。社長として盛り上げてくださり、ついてきてくれる周りの方々に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
──代表就任後3年半過ぎましたが、大きな変化などありましたか。
竹下 私が代表に就任して以降、経営方針は大きく変えていません。やはり一番力を入れているところは、宅地開発事業です。11年から23年までに1,824区画を販売しました。今年も順調に進めています。私たちの仕事は、まず土地の仕入から始まります。自ら土地を探すほか、地場の不動産業者からの紹介や地権者さまの方から直接相談されることもあります。その土地を調査し、企画を練り、地権者さまと売買交渉を行って購入した土地を、土地の規模や地形によっては開発許可を取得し、造成工事まで行っています。農地を取り扱うことが多く、自治体と連携し申請手続きなどもすべて行っています。
その後、ハウスメーカーに販売するかたちです。近年は移住・定住の促進を図るため、農地を宅地開発ができる区域に設定する自治体も増加しています。現在、佐賀県基山町でも52区画、八幡西区で64区画、遠賀郡水巻町で120区画という比較的大規模な宅地開発を行っているところです。
また山林の相談も増えてきています。山林の場合は農地と違って平たんではないため、難しいところがあります。もちろん、リスクヘッジはしていますが、高さや長さ、面積など予定通りの数字が出なかったり、計画通りにいかないことが少なくありません。ですが、これまでに積み重ねたノウハウがありますので、これからも積極的に取り組んでいこうと思います。
広告戦略で問い合わせ増加
──都市高速道路を車で走っていると看板広告が目に入ります。
竹下 広告には力を入れています。先代のときから北九州都市高速道路沿いに大きな看板広告を出していますが、私が代表になった後、福岡都市高速道路沿いの千代町と太宰府市の2カ所に看板広告を出しました。目立つこともあり、よく「大きな看板を見ました」と言っていただきます。地権者さまからの相談が増えてきており効果が出ていると感じます。ほかにも、みずほPayPayドームにも広告を出させていただいています。
3つの強みで営業基盤を確立
──御社の強みはどのようなところにありますか。
竹下 当社の強みは3つあります。1つ目は地域に密着しているということ。福岡を拠点に、地域のネットワークを広げてきた当社だからこそ、地元に密着した物件の提案を可能としています。2つ目は、相談は何度でも無料でお受けしていることです。当社では、所有不動産に関する税金や売却時に必要となる経費などのご相談も、無料で承っています。3つ目は、豊富な経験です。20年以上のキャリアをもち、さまざまなご要望に対して、適切な提案をさせていただきます。
──本社、九大支店、久留米支店での現在の宅地開発実績の割合はいかがでしょうか。
竹下 1年で完結しない案件がほとんどなのでバラツキはありますが、平均すると売上高では福岡市内ということもあり九大支店でしょうか。一方で、案件の区画数でいうと久留米支店が多いです。本社はそれぞれの中間ぐらいにあたると思います。どの拠点も、新鮮な情報をキャッチして、地域にあったやり方で実績を積み重ねています。
──業界環境の現状および見通しについてどう思いますか。
竹下 土地の価格は、まだ若干上向きな感じです。ですが、やはり人口が増えていないことが業界的には問題でしょう。今後、住宅宅地分譲の開発だけでは、最低限の需要しかなくなるのではないかと感じています。
現在当社では、宅地分譲が売上高の約90%を占めています。残り10%ほどは、仲介や保有物件の賃料などです。今後は、住宅以外にも、たとえば障がい者福祉施設や老人ホーム、そのほかにも物流倉庫や商業施設なども幅広く手がけていきたいと考えています。
戸建開発であれば、筑紫野市や糟屋郡、佐賀県の鳥栖市や基山町あたりのいわゆるベッドタウンで農地が残っているようなところに重点を置いていきたいと考えています。
──人手不足が加速しています。社員の採用や教育面についてはいかがですか。
竹下 現在の社員数は、本社に14名、九大支店に5名、久留米支店に5名の24名体制です。採用は中途社員をメインに行っています。父の代から勤めている社員も多く、平均年齢も少々高めだと思います。今後のことを考えると私と同年代の社員を増やしていこうと考えています。
教育については、新人社員それぞれにベテラン社員を付けて、現場で教えながらやっています。というのも、業種柄、取り扱う商品である土地は一律ではなく、土地ごとに価格や所有者が違うため、同じ交渉にはなりません。マニュアル化が難しく、とにかく根気のいる仕事ですので、新人社員には早急な結果は求めず、2~3年かけてじっくりと学んでもらい、徐々にでも成長してほしいと思います。
ストックビジネスで新たな柱を
──今後どのような企業になることを目指しますか。
竹下 1つの指標として、売上高50億円というのが頭のなかにあります。父が生前、私が代表になるときに言っていたことがあります。「売上高50億円を目指そう」と。ただし、50億円というのはゴールではなく、通過点として考えています。
そのためには、現在の営業エリアである北九州、福岡市内、久留米市内を軸とした福岡県内および佐賀県などのほか、九州全域にエリア拡大を図るのも考えていかなければなりません。また、先述の通り、宅地分譲以外の物流倉庫をはじめとするさまざまな物件を取り扱うことも必要になってきます。
さらに、宅地開発という大きな柱のほかに、もう1つ収益の柱をつくりたいと考えています。ノウハウを生かし収益物件や土地の賃貸、たとえば自社で物流倉庫を所有し賃貸するなどストック資産を増やし、安定的な収入源を用意したいと考えています。社員を増やしていくことももちろんですが、既存社員の家族を含めて、会社として守る責任があると考えていますので、それに耐えうる企業を目指していきます。
また、これは私の個人的なことなのですが、遊園地やテーマパークを誘致したいという夢をもっています。北九州にはスペースワールドがありましたが17年末に閉園しました。私も子どものころから何度も訪れ、成人式もそこで行われ、とても思い出のある場所です。現在、福岡県には大規模なレジャー施設がありません。子どものころの私のように、これからの子どもたちの笑顔をつくる事業にも携われればと考えています。
【内山義之】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:竹下晃平
所在地:北九州市小倉北区明和町9-1
設 立:2000年2月
資本金:5,000万円
売上高:(23/12)25億2,566万円
<プロフィール>
竹下晃平(たけした・こうへい)
1992年生まれ、北九州市出身。成城大学卒業後、2015年4月、オークラヤ住宅(株)に入社。不動産業を学び、20年4月に(株)海王に入社。21年5月、代表取締役に就任。趣味は妻とドライブ。法人名
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