2025年01月22日( 水 )

【新春トップインタビュー】40年を超えてさらに夢を提案し続ける 「シニアアテンダント」と「魅力学」で真の豊かさを

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(株)インターナショナルエアアカデミー
代表取締役会長 永江靜加 氏

 (株)インターナショナルエアアカデミーはこれまで「エアライン事業」と「人財開発事業」を2本柱として多くの人々のキャリア支援を行ってきた。そしてコロナ禍に新しく「シニアアテンダント事業」を開設。今後は若者からシニアまで、あらゆる世代の可能性を広げる3本柱体制で事業を展開する。昨年、設立40周年の節目を迎えた同社のこれまでの歩みと将来の展望について、創業者であり舵取りを担ってきた永江靜加氏に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 緒方克美)

コロナ禍でも上を向いて
“大変”をポジティブ思考で打開

(株)インターナショナルエアアカデミー 代表取締役会長 永江靜加 氏
(株)インターナショナルエアアカデミー
代表取締役会長 永江靜加 氏

    ──2024年はどのような年だったでしょうか。

 永江靜加氏(以下、永江) 24年は、コロナ禍を経て、ようやく迎えたアフターコロナの時代となりました。この3年余りの間、私たち観光業界や航空業界は、まさに「静」の状態でした。観光業をはじめとしたあらゆる需要の激減、留学や研修のキャンセルなど、多くの活動がストップし、社内も暗く閑散としていました。エアライン業界を夢見るアカデミーの学生たちのなかにも退学する人が現れるなど、苦しい時期が続きました。お会いする方々からは、挨拶代わりに「永江さん、大変でしょう」と声をかけられることが多かったです。そのたびに「もう大変というものじゃありません。でも、大変という字は『大きく変わる』と書きますから、これは大きく変わるチャンスだと思っています」と答えていました。

 私はどんなに辛い時でも「これは何か意味があるのだ」とポジティブに捉えるタイプです。これまで40年以上の仕事人生で、何度もピンチを経験してきましたが、ここまでの試練は初めてでした。それでも、「これを乗り越えれば逆襲が始まる!」と自分に言い聞かせてきました。

 その姿勢でコロナ禍でも決して下を向くことなく、この状況を変革のチャンスと捉え、従来のエアライン事業、人財開発事業の枠を超えて、新しい価値を創造する必要があると考え生み出したのが「シニアアテンダント」という新しい職業です。長年の経験を生かして培ってきた「キャビンアテンダントの学校」という基盤を基に創設したこの職業は、日本で初めての試みです。国の事業再構築補助金を申請したところ、驚くほどスムーズに承認を得ることができ、高齢者支援や少子高齢化対策に対する国の問題意識の高さも実感しました。これまで私たちは、「エアライン事業」と「人財開発事業」の2本柱で活動してきましたが、そこに「シニアアテンダント事業」を加えて、24年以降は新たな3本柱で事業を展開していくことになりました。

 ──コロナ禍が明けて、貴社の事業状況はいかがでしょうか。

 永江 エアライン事業はコロナ禍前の水準に戻り、安定した基盤をもっています。一方で、アフターコロナにおいて急増したのが、社員研修の分野です。相談をされる多くの企業が抱える課題は共通しており、その主な依頼内容は「とにかく社員を元気にしてほしい」という切実な声でした。コロナ禍を経て、多くの企業の社員が精神的にも肉体的にも疲弊している現状を目の当たりにし、私たちは「笑顔をつくるプロ」として企業を元気にするという使命を新たに与えられたと感じています。職場全体の雰囲気を明るくし、社員1人ひとりが前向きに仕事に向き合える環境を整えるために、私たちはさまざまな企業に出向いてノウハウをお伝えしています。

社員研修の様子
社員研修の様子

    最近は、Z世代の育成方法について悩んでいる企業も多く、その研修・講演の依頼が増えています。私どもの学生は、まさに18~25歳のZ世代です。その合格率は200%を超えていることから、よくその秘訣を尋ねられます。Z世代の彼らは給料だけで会社を選ぶわけではなく、「生きがい」や「心のつながり」を重視しています。彼らにとっては、企業のブランドよりも、そこで働く人々や企業のマインドセットが重要なのです。私どもは、モチベーションを高めることにおいて世界一だと自負しており、Z世代の育成、また若者に選ばれる企業の育成にも自信をもっています。

シニアアテンダントの提案で
新しい価値と笑顔を創出する

 ──「シニアアテンダント」について詳しく教えてください。

 永江 シニアアテンダントとは、シニアを支援することを目的とした新しい職業です。企業や個人を対象に専門講座を提供しており、受講していただくことで認定資格を取得し、プロとしてシニア対応を行えるようになります。現在はホテルや百貨店、銀行といった企業への導入が進んでいるところです。

 「シニア」をテーマにすると「介護」を連想する方が多いかもしれませんが、私たちは「シニア=介護」というイメージを変えていきたいと考えています。今のシニアのなかには、認知機能や身体機能が若者とほとんど変わらず、元気で活動的な「アクティブシニア」が多くいらっしゃいます。かくいう私もアクティブシニアです。

 こうした方々には、介護ヘルパーのようなサポートは必要ありません。ただ、年齢を重ねるなかで、以前は当たり前にできていたことが少しずつ難しくなる、という現実もあります。そんなアクティブシニアに寄り添い、自分らしく輝けるようにサポートする、それが「シニアアテンダント」です。

 私たちは23年11月1日、(一社)シニアアテンダント協会を設立しました。これまで、空の上でおもてなしをするプロフェッショナルとして、世界中のファーストクラスで活躍する人財を送り出してきました。その知見を生かして、これからはシニアに満足度の高いサービスを提供する人財を育てていきたいと考えています。

 日本は今や世界でも類を見ない長寿国で、35年には3人に1人が65歳以上になるといわれています。また、約2,000兆円の日本の個人資産のうち約7割の1,400兆円を60歳以上の方が保有しているのです。この方々をターゲットにした顧客満足度の高いサービスの提供は、日本経済の活性化にもつながります。さらに、企業はシニアアテンダントを配置することで、「シニアに優しい企業」として認知され、結果として企業のイメージアップや信頼性向上にも寄与します。

 私たちは、この「シニアアテンダント」という職業を広め、資格認定者を増やすことで、シニアとそのご家族に安心感や心のゆとりをお届けしたいと考えています。より多くのシニアが充実した人生を送れる社会を、私たちが先頭に立ってつくりあげていきます。

魅力学で人間力を向上 おもてなしと人生の豊かさを

 ──「魅力学」について教えてください。

 永江 魅力学は、社会人のためのおもてなし総合講座として、インターナショナルエアアカデミーの設立と同時にスタートしました。エアライン業界向けの「キャビンアテンダント魅力学」をはじめ、一般企業の方も対象にした「おもてなし魅力学」や「テーブルマナー魅力学」「モチベーションUP魅力学」など、全40項目もの講座を開講しており、これまでに200万人の方々に、私たちのあらゆる「おもてなし」のかたちをお伝えしてきました。おもてなしは、ただかたちだけ整っていても、心がこもっていなければ相手には響きません。魅力学では、相手に対して謙虚な気持ちをもちながら、心から感謝を伝えられる、そんな「人間力」の高い人財を育成すると同時に、自分自身を大切にする生き方も学んでいただきたいと考えています。

本社内にある機内設備
本社内にある機内設備

    私は、東日本大震災を経て「明日死んでも悔いはありませんか?」と自分にも、そして人にも問いかけるようになりました。1分前まで普通に暮らしていた人たちの人生が、一瞬にして変わってしまう──。そんな現実を目の当たりにしたからです。それ以来、私自身はプラス思考で、意識的にポジティブな言葉を使うように心がけています。私は、もし今命が尽きたとしてもまったく後悔はありません。常に今が最高の瞬間だと思って生きていますし、これからもずっとワクワクすることを探し続けていきます。

 私と関わる多くの方々に、こうして人間として生きていること、それがどれだけすばらしいことかに気付き、一度きりの人生を幸せなものにしてほしい。魅力学は、相手を幸せにするだけでなく、自分自身も幸せにするためにあるものです。

苦難を超えて40周年を迎え、今後も多くの夢を叶える

 ──昨年、40周年を迎えられました。

 永江 24年11月1日、当社は40周年を迎え、警固神社社務所ビルのTHE KEGO CLUB by HAPPO-ENで創立40周年記念パーティーを開催いたしました。当日は今まで私たちを支えてくださった多くの方々をはじめ、福岡市の高島市長にもご臨席いただき、とても充実した、40周年にふさわしい会となりました。

40周年式典の様子
40周年式典の様子

    当社が40周年を迎えるまでには、多くの困難がありました。設立当初、私は数少ない女性社長としてエアライン専門校を設立しました。後にわかったことですが、福岡では初の女性起業家だったそうです。当時の私は、経営の知識もなく、お金に苦労したこともないお姫さまでした。さらに社会進出する女性がまだまだ少ない時代でしたから、とにかく「男の人に負けてはいけない」という考えから常に相手に対して傲慢な態度を取っていたと思います。開校1年目は入学者も6名にとどまり、運営資金もまかなえず当時は何度も死さえ考えました。

 しかし、私は開校にあたって「1人でもエアライン就職の夢をもった若者がいるなら、その役割を全うする」と決めていました。こうしてあきらめずに試行錯誤するなかで気付いたことがあります。それは「謙虚に勝る美しさはない」ということでした。

 相手を思いやり、常に謙虚な気持ちで物事を考える。この当たり前の姿勢に気付き、一生懸命に生きることで、自然と周囲にも恵まれるようになります。こうして人間力とマナーを身に付け、低迷期を乗り越えた私の周りには、今や同じように謙虚な姿勢をもつ多くの方々がいて、私はその方々に日々支えられています。

 そんな私にとって、「難しい」と「楽しい」は紙一重です。どんなに難しいことでも、考え方次第ですべて「ワクワクすること」に変えることができます。常にポジティブな思考で生きていれば、必ず幸せが舞い込んできます。

 これまで多くの方々に助けていただいたおかげで無事に40周年を迎えることができました。これからも私自身が率先して、皆さんをどんどん幸せの渦に巻き込んでいきたいと考えています。

 ──これからの展望について教えてください。

 永江 アフターコロナでは、主力のエアライン事業が回復したことに加え、企業研修などの人財開発事業もとても需要が高いです。そのようななかで、これからは「シニアアテンダント」に力を入れ、SDGsのような社会に欠かせない概念として、日本全国さらにはアジア諸国を中心に海外まで、この職業を普及し浸透させていきたいと考えています。

 幼少期、私はとてもネガティブな性格でそれがコンプレックスでした。そんなあるとき、テレビに映し出されるスチュワーデスの姿を見て「スチュワーデスになりたい」という夢をもち、その途端に気持ちが好転しました。多くの困難もありましたが、その夢に一直線に向かい、その夢を叶えることができました。そして、今はこうして多くの学生の夢を叶える立場です。夢はいくつもっていても構いませんので、たくさんの夢をもってほしいと思います。その夢を叶えるヒントは、私たちが提供していきます。

 私たちはこの40年間、多くの若い人たちの夢を叶えて来ました。これからは引き続き若い人たちに加えて、今を生きるシニアの方々の夢も叶えていきたいと考えています。より多くの世代に感動を与えられるよう、これからも精進してまいります。

【文・構成:立野夏海】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:永江靜加
所在地:福岡市中央区天神3-4-5
設 立:1984年11月
資本金:2,000万円


<プロフィール>
永江靜加
(ながえ・しずか)
福岡県遠賀郡出身。ANAのキャビンアテンダントとして勤務したのち、1984年11月、(株)インターナショナルエアアカデミーを設立。現在は(一社)航空人材育成協会・理事長、福岡商工会議所・副会頭、(一社)シニアアテンダント協会・代表理事など多くの団体運営に関わっている。

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