2025年01月17日( 金 )

石丸氏が地域政党「再生の道」を結成~メディアとの緊張関係を演出

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 前広島県安芸高田市長で昨年7月の東京都知事選で約166万票を獲得し次点となった石丸伸二氏が15日、都内で会見を開き、新たな政党「再生の道」の結成を発表した。

鮮明にしたメディアとの対決姿勢

 今年は、夏の参院選と同時期に東京都議選が予定されており、いわゆる「石丸新党」の動向が注目されていた。

 石丸氏は当初、都庁記者クラブで会見を行う予定だったが、13日になって自身のXで《中止になりました》と報告。理由は「(都庁)記者クラブ宛に出した案内がネットに流出し、日時と場所が広く知られてしまったことが原因」としたうえで「記者クラブには『取材目的の希望者は出席を制限しない』と言われたため、誰が来るかわからない状況は種々のリスクが高いと判断しました」と説明した。

 変更された会場についての案内文を入手したが「諸般の事情により会場を変更するに至りました」とあり、参加に関する諸条件事項として、「都庁記者クラブに所属していないメディアに関しては、事前申請ならびに許可制といたします」「許可の可否基準に関しましては、マス媒体の有無もしくは、登録者数100万相当のネット媒体を有するか否かを基準とさせていただきます」など3点を参加条件とした。これによって、大手メディア以外のフリーランスの記者の多くが会見に参加できないこととなった。もちろん、記者クラブに所属しない記者すべてが「排除」されたのではないが、政治改革を志向する石丸氏の思想なり信条との整合性に疑問が残るやりかたであった。

 会見の模様はYouTubeでライブ配信された。石丸氏は会見冒頭、「テレビ朝日はお越しでしょうか?」と会場に集まった報道陣に質問を投げかけた。反応がないことを確認すると「テレビ朝日がいらっしゃらないと会見始まらないんですけど。困りましたね。あれだけお願いしたのに。残念だなあ」と語り「ネット界隈(かいわい)が大好きなテレビ朝日が不在。今日会見の中身が半分になりました」と皮肉を述べた。さらに、出席できなかったフリー記者が会場近くに待機していることに対し「なんの収穫があるという読みでいらっしゃるのか」「おかげさまでこの後もスケジュールがいろいろありまして可能な限りではいじって差し上げたいと思います」と語った。
 石丸氏は、会見で「第4の権力と呼ばれるメディアもそこに属する記者も権力者」「顔と名前が表に出る覚悟はあったほうが良い」と述べたが、テレビや新聞など大手メディアが情報発信を独占してきた時代が事実上終わりを告げたことと、記者1人ひとりの在り方が問われることを明言。昨今、SNSで広がるメディアへの不信や反発の声を代弁する役割を石丸氏の言動から感じられた。他者の論評を行う以上、自らの在り方も問われることを報道に携わる1人ひとりが自覚すべきである。

多選制限で政治の既得権化を防止

 石丸氏はメディアに対する思いを語った後、都議選に向けた地域政党の概要を披露した。

 「ずいぶん前からこの国、日本がもうマズいと、何とかしないといけないという思いが募っていました。この日本をよみがえらせる、その意味を込めて、『再生』とつけました」と政党名は「再生の道」としたことを発表し、決意を述べた。現時点では、今後の新党の方向性は明確ではないようで「党として実現する政策はここでは出さない。党議拘束もない」「各候補者の良識、判断に任せたい」と、政策は個人の裁量に任せる方針のようだ。

 さらに「イデオロギーを掲げても、何をやっているかわからない政治家がいる」と指摘し「千代田区と錦糸町だと、同じ東京都でも環境は全然違う。それぞれ選挙区で自分たちが目指す課題を提示する方がふさわしい」とした。また、「自民党から共産党まで大丈夫。兼業OKの建て付けです」とほかの政党に所属しながら活動することを容認した。候補者の選定にあたっては、知事や副知事、市長や副市長など行政経験者は、「圧倒的に知見がある」として、優先的に候補にするとした。一方、当選した場合の条件に「2期8年」という制限を課した。これは多選を認めないことで、政治家の既得権益化を防ぐ狙いがあるようだ。

 石丸氏は、広島県の安芸高田市長を務めたが、自身より年齢や政治キャリアが長い市議会と対立した経緯がある。多選に制限を設けたのは、地方政治の世界でも期数の多いベテランが行政への発言力が強いことを実感したからだろう。改革政党という点で共通する橋下徹元大阪市長が創設した「日本維新の会」も橋下氏や、松井一郎元大阪府知事が引退してから、党勢に陰りが目立ち始めた。

 肝心な政策や党の理念などはこれからなのだろう。しかし、政党として旗揚げした以上、党内をまとめる理念や打ち出す政策もその理念に基づくものでなければ、いかに石丸氏にカリスマ性があったとしても、求心力には限界がある。今後の動向が注目される。

【近藤将勝】

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