日中関係をめぐる自民党・親中派保守派双方の駆け引き
-
自民党の外交部会・外交調査会が21日、合同会合を開いた。部会では、通常国会に提出予定の法案や条約について外務省からの説明などが行われたが、部会は紛糾した。
自民党保守派の反発
紛糾した理由は、岩屋毅外相が昨年12月に訪中した際に表明した、観光目的の中国人が訪日する際に必要なビザの発給要件緩和をめぐるものだ。「オーバーツーリズム(観光公害)を招きかねない」「日中間には、現地で日本人が拘束されるなどの懸案があるなかで、今回の決定は国益に反する」など懸念・異論の声が出た。
星野剛士外交部会長は「なぜ急いで判断をしたのか。必要性はどこにあるのか疑問を抱かざるを得ない」と苦言を呈した。星野氏は、自民党内に厳しい意見があることを岩屋氏に伝えるように外務省側に求めた。また、福田達夫幹事長代行も記者会見で「党の合同会議で政府側から説明を聴取したと理解している。国際情勢も大変、微妙な時期にある。私としても丁寧な説明を政府に求めたい」と述べ、党内の反発に同調した発言を行った。
インバウンドの拡大は、第2次安倍政権でも推進されてきたことだが、緩和措置の発表前に、党側に相談や報告がなかったことが反発の要因の1つのようだ。
過去、日中間の問題をめぐって自民党内が割れる事態が何度も起きた。たとえば、1992年に日中国交正常化20年を記念して、天皇皇后(上皇・上皇后)ご夫妻の初めての訪中が行われたが「天皇陛下が政治に利用されかねない」といった反対論が党内から噴出した。宮沢喜一首相(当時)らが党内の鎮静化を行うのに腐心した経緯がある。その後も、首相の靖国神社参拝や歴史教科書問題、尖閣諸島などをめぐって、中国側から歴史に対する言及がある度、自民党保守派の反発が上がってきた。
22年に衆議院で、新疆ウイグル自治区などでの中国の人権問題を念頭に置いた決議をめぐっても、公明党などへの配慮もあり、直接的な中国の名指しや「人権侵害」との表現を避けた文言に修正されたが、党内保守派の不満が燻ぶった。そうした経緯を考えると本来、入念な根回しが求められる案件であった。
森山幹事長が日中議連会長に内定
一方で、日中友好を重視する自民党内のグループの動きも活発になってきた。超党派の国会議員でつくる日中友好議員連盟の次期会長に、自民党の森山裕幹事長が就任する見通しであることが明らかにされた。議連は月内に総会を開いて正式に決定する。
同議連会長は二階俊博・元自民党幹事長が23年4月から務めていたが、二階氏は昨年の衆院選に立候補せず引退したため、後任の議連会長に誰が就任するか注目されていた。
森山氏は、13日から15日にかけて自民・公明両党の議員団で訪中し、7年ぶりとなる中国共産党幹部との「日中与党交流協議会」の開催に取り組んだ。議員団には、父親が両国のパイプ役を務めた自民の福田幹事長代行や加藤鮎子副幹事長も参加し、日中間の若手パイプ役を育てたいとの考えもうかがえた。滞在中は、李強首相と会談するなど中国側とのパイプの構築を行っており、森山氏が二階氏に代わる自民党内における日中間の橋渡し役になると思われる。
中国に対して厳しい姿勢をとる自民党保守派の多くは、保守団体・日本会議のメンバーや高市早苗元経済安保相を支持する議員が多い。SNS上では、石破茂首相や岸田文雄前首相を「岸破政権」と揶揄する声があるが、自民党内にも日中友好を重視するなどリベラルな両氏への不満がある。しかし、人事権などを握る森山氏が日中議連会長も兼務する以上、党内保守派も露骨な反対は行いにくいだろう。
24日からは通常国会が始まる。夏の参院選や東京都議選を控え、石破おろしの党内政局は回避されると思われるが、日中関係など保守派が敏感に反応する事案で対応を誤ると、一気に政局が動く可能性がある。
【近藤将勝】
関連キーワード
関連記事
2025年1月20日 15:052025年1月17日 16:002025年1月16日 18:252025年1月16日 16:402025年1月14日 16:202025年1月10日 10:402024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す