2025年01月30日( 木 )

【新春トップインタビュー】信頼できる人たちとの出会いを生み未来の種を蒔くことができる場所

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(一社)福岡青年会議所
理事長 尾本勝征 氏

 (一社)福岡青年会議所(以下福岡JC)の第73代理事長に就任したのが尾本勝征氏だ。27歳で起業したとき、時期を同じくして福岡JCに入会。先輩たちから多くを学び自分磨きをしてきた。さまざまな経験を経てきたことから、その知見を買われ理事長に選任された。今度は自分が若手を育成していく番になったと語る尾本氏。2025年の福岡JCをいかに動かし、いかに導いていくのか。意気込みをうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 執行役員 鹿島譲二)

福岡JCは、自分磨きと変化させてくれる場所

(一社)福岡青年会議所 理事長 尾本勝征 氏
(一社)福岡青年会議所
理事長 尾本勝征 氏

    ──これからの1年、皆さんが尾本理事長らしい活躍を期待していると思います。どのような取り組みを考えていますか。

 尾本勝征氏(以下、尾本) 理事長として活動を始めるにあたり「TAKE ACTION」というスローガンを掲げました。この後には「機を捉え背中で語り未来へ紡げ」という言葉が続きます。私自身がこれまで福岡JCのなかで体験してきたことの手応え、そして福岡JCの魅力を前面に打ち出したいという想いを表現しました。

 私は事業を起こした27歳のときに、父の知人の紹介で入会しました。JCのことはまったくわからず自分の仕事すら先が見通せない時期でした。そこでその後の意識を変える出会いがありました。私より少し先輩の大西久恵さん((株)創世代 代表)という経営者です。モロッコでツアーパックの事業を起こす、とてもアクティブな方で、失敗を恐れず何事にも常に前向きに挑む彼女の姿に、大いに刺激されました。私はどちらかというと受け身の性格なのですが、大西先輩に憧れたことが7つの企業、9つ事業を起こす原動力になりました。

 それに加えて、福岡JCでの活動を通して海外の方々を含めて千を超える人たちと関わることもできました。そうした出会いが可能性を広げていくうえで大いに役立ちました。たとえば私が経営するpupu(株)の訪問者のなかには、斬新なオフィスの雰囲気に驚かれる方がいらっしゃるのですが、これも活動を通して知り合った方々の協力があって出来上がったものです。

 福岡 JCの魅力はなんといってもこうした多くの出会いが待っていること。そしてチャンスを生かせる人へと変化させてくれること。私は自分の体験を通し、そのことを強く実感しました。だからスローガンは「TAKE ACTION」。自分の背中を見てもらうことで多くの会員に情熱の火を灯したい。それを実現できる取り組みを打ち出していこうと考えています。

 ──若い方々にとっては多くの魅力が詰まった組織ですね。入会条件を教えてください。

 尾本 福岡JCのメンバーは20歳から40歳までとなっています。ほかに次世代の担い手としての責任を自覚する青年であることです。私のように会社経営に携わる者が中心だろうと思われているかもしれませんが、実はもっと大きく門戸を広げています。会社員の方でもかまいません。議員として政治に携わる方もいらっしゃいます。福岡JCの可能性を最大限に活用して自分の未来を切り拓きたいという方であれば大いに歓迎しています。ただし、40歳が卒業年齢となっています。3年以上活動できる期間がなければならないという制約があるため、入会できるのは37歳までです。

 現在の会員数は176名、毎年の新規入会者数は40~50名ほどです。福岡JCと日本青年会議所との関係性は大きいですが下部組織ではなく別の組織です。運営はすべて自分たちの考えで行われます。自分たちのアイデアが生かされやすいのが大きな魅力の1つですね。

 組織のことをお話ししますと、現在は執行部および12の委員会で構成されており、各委員会ごとに企画運営を行っています。多少の変動はあるものの、1つの委員会のメンバーは概ね15名程度です。いきなり大きな組織のなかで揉まれるのではなく、委員会単位の活動を通して会員は互いに切磋琢磨しながら力を伸ばしていく。私の場合もそうして自分自身を磨いてきました。

福岡の子どもたちの未来を創造する

 ──昨年は福岡で「第73回日本青年会議所全国大会」がありました。

 尾本 前理事長の石坂泰三さんのリーダーシップのもと、2024年10月に開催しました。全国約2万7,000名の会員を招待し、日本青年会議所の施策に沿ったフォーラムや各種のイベントを行うことに加え、福岡独自の魅力を発信できるようにと街中でのイベントなどさまざまな企画を実行しました。目標の1万1,000名を超える1万1,942名が全国から集い福岡JCとしてとても大きな実績を残せたと思います。

 そして今年は福岡に続き、お隣の佐賀で全国大会が開催されます。私たちの仕事は福岡の大会で終わりではありません。得られた経験を佐賀での開催に生かすべく、主管である佐賀青年会議所を力強くバックアップしていく所存です。

 そうした大きなイベントを終えた今、これからの1年は福岡JCをより強固な組織としていくための取り組みに邁進していきます。福岡JCの存在感を今以上に高め、より多くの仲間が集う場として考え行動する1年になるでしょう。

 ──福岡JCのこれまでの歩みについても聞かせてください。

 尾本 福岡JCは1953年に結成されていますから72年の歴史をもっています。これまで実に多くの先輩方が卒業され、ここで学んだことを糧に活躍されています。

 青年により良い変化をもたらすための力を与えるための機会を提供する。そして若き能動的市民を主導できるグローバル・ネットワークになる。そんなヴィジョンのもと、私たち福岡JCは長い歴史を積み重ねてきました。この理想のもと営利目的ではないさまざまな活動を多面的に行っているのがいちばんの特徴でしょう。

 たとえば一昨年は設立70周年ということで「こども未来都市宣言」を提言しました。福岡JCは「アジア太平洋子ども会議・イン福岡」の立ち上げなど子どもたちの可能性を拡げることに力を入れてきました。同会議は現在では独立組織に拡大し、子ども版の国際事業として毎年7月に40以上の国や地域から200名以上の子どもたちを福岡に招待しています。

 「こども未来都市宣言」には、私たちが福岡JCを通じて自分を磨いているように、福岡の未来を担う子どもたちにも世界を知ることで可能性を大きく切り拓いてもらいたい。そんな願いが込められています。

 宣言についてもう少し具体的にお話しましょう。「グローバルシティ」「アートシティ」「アーバンスポーツシティ」の3つをテーマとして宣言を具現化していきます。

 まず、「グローバルシティ」。ここでは、世界で活躍できる人材の育成と輩出を目指します。福岡をアジアのリーダー都市と位置づけ諸外国と交流できる環境を今以上に充実させ、グローバルを言葉だけでなく人々の日常にしてしまおうという大胆な構想です。言い換えるなら、福岡に生まれた子どもたちが福岡に住みながら世界を感じることができる。そんなまちづくりです。

 「アートシティ」は、豊かな感性を育むための構想です。子どもたちのもつ可能性や才能は無限です。肝心なのはその力を最大限に発揮できるための環境を整えることではないでしょうか。

 そして、「アーバンスポーツシティ」は、その名の通りスポーツが軸です。面白いのはその活動のフィールドを都市と捉えていることでしょう。東京2020オリンピックで採用されたスケートボードやBMX、スポーツクライミングをはじめパルクールやブレイキングダンスなど、街並みをバックに楽しめるアーバンスポーツが中心になります。子どもたちは多様なスポーツに親しむことで、自らの可能性を発見し挑戦する心をつちかいます。福岡をアーバンスポーツの聖地にしたいと考えています。

躍動する福岡をもっと面白くする

 ──福岡JCから生まれた多種多彩な事業が福岡を彩っている。そんな印象ですね。

 尾本 歴史を遡れば本会から生まれた事業は数多くあります。皆さんが身近に感じられる取り組みも少なくないでしょう。

 04年に開催された「第59回国際青年会議所世界会議福岡大会」は、国内外1万5,000人の青年経済人に参加を呼びかけた本会の歴史のなかでも最も大規模な事業でした。

 15年には「MINATO SALONE 2015(ミナトサローネ2015)」。水辺へとつながる新たな扉が開くというテーマのもと、福岡JCは新しい『港』の在り方を提案しました。『未来のカタチ』をコンセプトに光の風船の展示、水面の揺れ動く光と緑による癒しの空間の演出、福岡のアーティストによる演劇・演奏、そして海上レストラン、水中花火打ち上げなど多種多様な催しを行い多くの市民を魅了しました。

 「NAKASU JAZZ」は中洲の風物詩としてすっかり定着していますね。福岡の新たな魅力・コンテンツの創造を目指した私たちが09年に始めた事業の1つです。15年以上にわたり続くこのイベントは、毎年10万人近い来場者が集まる巨大イベントとして、福岡中洲の象徴の1つになっています。

 また、組織の内部においては女性活用に積極的です。全国の青年会議所の委員長、理事長の女性比率は伸びているとはいえ、全体の男女比は9:1程度でしょうか。一方福岡JCでは約20%です。育児世代であるメンバーが家庭や仕事、活動を両立して行えるよう、子育て支援などを推進する「育LOM」宣言などを行いました。ジェンダーという概念を取り払い、すべてのメンバーが等しく活躍できる場とすること。たとえば例会に子連れでも参加できるようにしたり、会場にベビーシッターの用意をしたりするということを実践しました。こうした風土づくりが、新しいアイデアを生み出す起爆剤になると考えています。

 ──福岡は全国的に見ても稀有な存在です。人口も年々増加しています。そんな都市の未来をどう捉えていますか。

 尾本 福岡県は九州最大の人口を誇りアジアの玄関口とされています。飛び抜けて成長していますし、お金も集まる場所です。そうした恵まれた環境であるということは、同時に大きな責任もあるのではないでしょうか。本会はこれまで文化や芸術に関わる事業に力を注いできましたが、これからは日本経済成長の原動力になっていくことはもちろん、災害や有事を念頭に置いたレジリエンス(適応力)の部分にも力を向けられるよう舵を取っていきたいと考えています。

 その意味ではファンづくりも大きな課題ですね。会員のみならず一般の方々に向けた福岡JCのファンづくりです。長い歴史のなかで硬直化した部分については改善し、たとえばSNSを活用したアピールなど、今の時代にマッチした動きをつくり出す。そうすることでこれから仲間になるだろう方々にもワクワクしてもらえるような話題を提供していければと思っています。

 私自身の話になりますが、本業のウェブ業界で現在の実績ができたのも業界の諸先輩にお世話になったことが大きな要因でした。何かを成し遂げるには多くの方々の協力が必要です。私は本業と福岡JCの両面でたくさんの知己を得ることができました。だから若い方々には「TAKE ACTION」を実践してほしい。自分が動けば動くほど可能性は膨らみますし、ひいては福岡の未来を変えることになる。ぜひ福岡JCをきっかけにして、自分のチャンスをつかんでほしいですね。そしてまず私自身が率先して「機を捉え背中で語り未来へ紡げ」という言葉の意味を、会員になった皆さんに見せていきたいと考えています。期待してください。

【文・構成:天野祐次】


<INFORMATION>
理事長:尾本勝征
所在地:福岡市博多区築港本町13-6
創 立:1953年2月


<プロフィールE>
尾本勝征
(おもと・かつまさ)
1985年福岡市生まれ。福岡国際大学国際コミュニケーション学部卒業。司法書士を目指し上京、都内の司法書士事務所に勤務するが、その道を断念して福岡に戻る。ウェブ業界で再挑戦をはかるべくホームページのつくり方から学び、27歳で起業。現在では通販事業を核にpupu(株)など7つの企業を率いる。趣味は仕事、そしてアタマを空っぽにして眺め見ることがリフレッシュになるという映画鑑賞。2児の父。

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