孫正義シリーズ(5):孫正義氏の飽くなき挑戦(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏孫正義シリーズの第5回をお届けする。今回は、韓国経済に詳しい日韓ビジネスコンサルタント・劉明鎬氏による孫正義論をお届けする。
大きな挫折も経験
孫氏は17年、世界最大のテクノロジー投資家となるべくソフトバンクGのビジョン・ファンドを設立し、何百ものスタートアップ企業に1,400億ドル以上を注ぎ込んだ。その間、ビジョン・ファンドが投資をした企業数は約475社。そのなかの74%である354社が損失を出すような時期もあった。とりわけウィーワークへの投資失敗は、その最たる例だろう。
ウィーワークの急転落でソフトバンクGは推計143億ドルの損失を出した。投資には失敗がつきものだが、孫氏の評判を落としたのは、意思決定のプロセスだ。孫氏は部下の反対を押し切り、ソフトバンクGとビジョン・ファンドの両方からウィーワークの創業者アダム・ニューマン氏に投資。自分の直感を信じるあまり、孫氏は部下の意見やアドバイザーからの反対意見に聞く耳をもたず、直観に頼って投資をしたことが問題とされた。
韓国人にとっての孫氏
日本人経営者のなかで韓国人に一番親しまれているのは孫氏だろう。在日韓国人3世で、日本で一番成功した経営者の1人で、孫氏のストーリーには韓国人をひきつける魅力がある。とくに孫氏のわかりやすいプレゼンは韓国でも有名である。
金大中大統領には通信インフラの大切さを、また文在寅大統領には「一も二も、三も、AIである」と力説したエピソードは有名である。しかし、孫氏が韓国の立場を考慮せず、日本政府と一緒になって、ラインの経営権を奪おうとしていることに対し韓国人は失望した。孫氏は韓国人ではなく、日本人であると実感した出来事である。
最後の挑戦になるAIにオールイン
ソフトバンクはビジョン・ファンドを立ち上げるなど、どちらかというと投資会社に変身しようとしていたが、徐々に事業会社に戻ろうとしているようだ。
とくに、AIや半導体分野に力を入れており、アメリカのスターゲート構想に参加したり、アームを活用して低電力半導体の開発にチャレンジしたりしようとしている。AI分野においては、オープンAIの投資、消費電力の少ないチップの開発などをソフトバンクGでやろうとしている。もちろん、そのために関連ベンチャー企業の買収などに活発に動いている。
はたして、孫氏の挑戦は成功するのだろうか。孫氏のあくなき挑戦に羨望の目と、批判的な視線が混じっているのは間違いない。日本社会のなかで自身の存在をアピールしたいという孫氏の挑戦は現在も続いている。
(了)
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