築45年の無断熱ビルをZEB改修 エコワークスが本社で見学会

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 建物の省エネルギー性能を強化する動きが活発化している。福岡県の業務部門(オフィスや商業施設等)における二酸化炭素排出量は県全体の約1割を占めることから、国や県では建築物でのエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEBの普及に力を入れている。2月5日には、福岡県における『ZEB』の第1号認定建築物である、ハウスビルダー・エコワークス(株)(福岡市博多区)の本社ビルで見学会が開催された。

既存建物を省エネ改修

 ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、高断熱化や設備の高効率化などによる省エネルギー化を実現したうえで、太陽光発電などによってエネルギーをつくり、一次エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることを目指した建築物のことをいう。建築物のエネルギー収支の状況に合わせて4段階で定義され、最上位段階で省エネと創エネで一次エネルギー消費量を0%以下にできる「ZEB」、同25%以下に削減できる「Nearly ZEB」、省エネで同50%以下に削減できる「ZEB Ready」、延床面積が1万m2以上の建物で省エネなどにより同60~70%(建物用途により異なる)に削減できる「ZEB Oriented」からなる。【図1】

【図1】ZEB定義のイメージ
(出典:資源エネルギー庁
「平成30年度ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」)

 見学会は福岡県と福岡県省エネルギー推進会議の主催で実施。エコワークスの本社ビルは、1978年竣工で無断熱だった既存建物(2階建、延床面積約600m2)に、同社が2020年に移転・入居した際、『ZEB』に改修されたもの。具体的には、開口部への二重窓・三重ガラスの設置や外壁・屋根に断熱材を入れることで外皮性能を高めたうえで、高効率エアコンやLED照明などの省エネ機器を導入し、省エネ性を向上。さらに創エネ設備として45kWの大容量太陽光発電を設置することで、一次エネルギー消費量をマイナス17%とすることを実現している。

二重窓について説明する小山代表
二重窓について説明する小山代表

    また、使用電力(オール電化)をすべて再生可能エネルギーの電力契約とする脱炭素化、電気自動車と建物間で電力を融通するV2Hの導入による、災害対応を図っているのも特徴の1つだ。福岡県内の「ZEB」はエコワークス以降、数件が供給されているが、新築ではなく改修にともない、創エネを含めた1次エネルギー消費量削減率100%以上を実現したものは福岡県にはほかになく、国内でもまだ数例しかないのも特徴といえる。

「私たちが最後の世代」

 見学会ではエコワークス・小山貴史社長自らが概要説明と建物の案内を行った。小山社長はZEBのメリットについて、①「エネルギーの自家消費が可能」、②「有利な補助金が使える」、③「社員の知的生産性の向上」、④「企業イメージの向上」、⑤「災害時のBCPが可能」の5つを挙げた。このうち補助金については、環境省の「新築建築物のZEB化支援事業」(上限5億円)、「既存建築物のZEB化支援事業」(同)、経済産業省の「住宅・建築物需給一体型など省エネルギー投資促進事業」も設けられている。【図2】

【図2】
【図2】

 小山社長は、「脱炭素社会実現へ向け、ゲームチェンジ、革命が起きている。米国のトランプ政権は世界的な温暖化防止の合意『パリ協定』からの離脱を表明したが、州政府では変わらず脱炭素を進める政策が維持されるなど、これまでの方向性は変わらない。私たちは気候変動問題を解決し得る最後の世代だ」と、ZEBの普及の意義を訴えた。

 同社はZEBの住宅版「ZEH(Net Zero Energy House)」の普及について達成率95%を記録。同社は「ZEBプランナー」(※)の認定を受けており、今後はこれまで住宅分野で培ってきたノウハウを生かし、木造建築物とZEBを組み合わせた事業系施設の供給を進めることにしている。

※認定の条件は、「ZEBロードマップ」の意義に基づき、「ZEB設計ガイドライン」や自社が有する「ZEBや省エネ建築物を設計するための技術や設計知見」を活用して、一般に向けて広くZEB実現に向けた相談窓口を有し、業務支援(建築設計、設備設計、設計施工、省エネ設計、コンサルティング等)を行い、その活動を公表するもの。

【田中直輝】

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