GLCが東京市場へ本格進出 地場不動産会社をM&A(前)

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(株)グッドライフカンパニー
代表取締役社長 髙村隼人 氏

(株)グッドライフカンパニー 代表取締役社長 髙村隼人 氏

 不動産投資家(オーナー)に対して、主に投資用新築一棟賃貸マンションの企画・開発(アセットマネジメント事業)と、オーナーが所有する不動産の運営(プロパティマネジメント事業)を行うサービスをワンストップで提供する(株)グッドライフカンパニー  (東証スタンダード)。同社の今後の事業展開や戦略などについて、代表取締役社長・髙村隼人氏に聞いた。
(聞き手:永上隼人)

自走可能なDD社を傘下に

 ──昨年10月に、(株)デベロップデザイン(東京都千代田区/以下、DD社)を簡易株式交換によって完全子会社化されましたが、DD社とはどのような会社なのでしょうか。

 髙村 DD社は、主に東京都内を中心としたマンションの用地仕入のほか、販売および設計から開発までを手がけています。「不動産開発力×建築設計デザイン力」として独自の不動産開発力と建築設計デザイン力を掛け合わせた唯一無二のサービスを提供することで、堅実な成長を続けている会社です。主力業務というか、売上構成としては土地の販売が大きくなっていますが、それ以外には「不動産×設計」のようなイメージで、不動産の情報と建物の企画をデベロッパーなどに持ち込んで設計業務を受注するようなかたちで、たとえば分譲マンションの設計や開発における近隣対策業務の請負なども行っています。

 ──DD社のM&Aに踏み切った一番の決め手とは。

 髙村 当社が進出していないエリアであったことと、自走していること、つまりきちんと独立した企業としての収益性があることが大きいですね。当社としてもリソースが余っているわけではありませんので、当社が大きく関与しなくても自分たちだけで効率的な成長が見込める点が、重要な要素でした。DD社の竹林正隆社長との関係性もだいぶ構築できてきましたが、何より社員皆がやる気にあふれているほか、売上や利益も伸びていっているし、独自の土地の開発能力もある。DD社自体をさらに伸ばしていくとともに、まだ模索中ではありますが、何かしらで提携などを行っていければと思っています。

 ──御社にもたらされるシナジー効果などは。

LIBTH博多駅南Ⅵ(福岡市博多駅南3丁目 2024年7月竣工)
LIBTH博多駅南Ⅵ
(福岡市博多駅南3丁目 2024年7月竣工)

    髙村 DD社が得意とする分譲マンションのデザインと、当社が開発を行っている「LIBTH」シリーズなどの賃貸マンションのデザインとはやはり異なりますから、DD社の設計・デザイン力が、直接的に当社の事業に寄与するものではありません。ですが、DD社が行っている土地開発の手法などを、当社が展開している福岡、熊本、沖縄などの各エリアでもやっていけたら面白いとは思っています。

 また、DD社は東京に事務所を構えていますから、当然のことながら東京の不動産事情に詳しく、土地勘がある人材がそろっています。そのため、当社が東京エリアに進出していくうえでの、大きな足がかりを得られたのではないかと思っています。

巨大市場・東京への挑戦

 ──東京のマーケットについては、どのように見られていますか。

 髙村 当社はかつて(2020年11月)、不動産投資マネジメント事業のさらなる強化および販売エリア拡大を図るために、東京支社を開設して東京進出を進めたことがあります。これは東京に進出することで、より良い投資物件をつくり、投資家に貢献することを目的としたもので、当社の上場後の成長ロードマップとして描いていたものでした。ですが、奇しくもコロナ禍によって情勢は一変してしまいました。当社の事業ドメインである賃貸マンション経営は人口の動態に大きく左右される性質のものですが、コロナ禍によって人口の流れが“逆回転”して東京進出のメリットが薄れていったことで、東京にこだわるよりも地の利がある九州で確固たる基盤を固めることが賢明であると判断し、22年3月に営業戦略上の合理化のため東京支社を閉鎖したという経緯があります。

 とはいえ、やはり東京を中心とした首都圏はマーケット規模が大きく、福岡とは比較にならないほど「人」や「情報」が集まっていますので、魅力的なエリアであることに変わりありません。物件価格も高く、競争が激しい環境ではありますが、DD社という足がかりができたことで、再度挑戦し、東京エリアでの事業拡大について注力していきたいと思っています。

(株)グッドライフカンパニー 代表取締役社長 髙村隼人 氏    ──東京のマーケットにおける御社の“勝ち筋”みたいなものは。

 髙村 巨大なマーケットかつ競合がひしめいているなかで、強いて挙げるならば、「余白の部分」ではないかと思っています。当社の場合は、グループ会社に(株)グッドライフ建設もありますし、用地仕入から設計、建築、賃貸仲介、賃貸管理、そして売却まで、すべてをワンストップの一気通貫で行っていますので、他社に比べて余白の部分――つまり削ることのできる部分を幾分か捻出することができます。そうしたグループ内ですべて内製化している点が、他社に比べての優位性であり、東京エリアで戦っていくうえでの当社の大きな武器になると思っています。

 また、大手デベロッパーは、当社のように小規模な土地を活用した賃貸マンションなどは手がけませんから、そうした“隙間”を狙って戦っていくやり方はあると思います。

 ──大手デベロッパーが、御社のような賃貸マンションを東京エリアで手がけない理由は何でしょうか。

 髙村 東京のマーケットが大きいといっても、中小規模の賃貸マンションに限っていえばやはり市場が小さく、大手がわざわざ手がける旨みが少ないからだと思います。たとえば沖縄エリアは日本でも珍しく人口が増えていて、市場として成長性があるように思えますが、やはり大手はあまり進出してきません。それはなぜかというと、市場が小さいからです。絶対数がケタ違いですので、沖縄で50%押さえるよりも、東京で5%押さえるほうが、圧倒的に有利です。それと同じで、大手は東京で規模の小さい賃貸マンションをわざわざ手がけませんので、当社にも付け入る隙があると思っています。そのため、大手デベロッパーが手がけない地域や小規模プロジェクトにフォーカスすることで、当社の強みを発揮して差別化を図りながら、独自の市場を開拓していく方針です。

(つづく)

【文・構成:坂田憲治】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:髙村隼人
所在地:福岡市博多区博多駅前2-17-8
設 立:2008年6月
URL:https://www.goodlife-c.co.jp


<プロフィール>
髙村隼人
(たかむら・はやと)
1979年9月生まれ。(株)熊本シティエフエム、(株)多々良を経て、2008年6月に(株)水前寺不動産を設立し、代表取締役に就任。10年11月に(株)熊本不動産、14年12月に(株)グッドライフカンパニーへと社名変更。17年11月に本社を福岡市に移転。18年12月に東京証券取引所JASDAQ市場へ上場し、新市場区分への移行にともない、22年4月から東証スタンダードに。

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