香椎川で福岡市初の地下河川 流域治水の試金石に(後)
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市の流域治水の試金石に
今回のような地下河川の整備は、福岡市にとって初の試みとなる。市担当課は、「市街地での施工となるため、騒音や振動への配慮が求められます。また、シールドマシンによる掘進地層は非常に硬い岩盤層であるため、こうした地盤の性状を踏まえたうえでの安全・確実な掘進管理が不可欠となります。JRの2路線と国道3号博多バイパスが河川上空を横断しているため、施工管理についても安全性の確保がいつも以上に求められます」とコメント。困難な点も少なくないが、完成すれば近年頻発する集中豪雨による浸水被害の抑制につながるため、今回の地下河川整備の意義は大きい。
福岡市では、都市の発展とともに増大する防災ニーズに対応し、各地域でインフラ整備を進めている。香椎川地下河川の整備は、その象徴的なプロジェクトともいえる。今回の香椎川地下河川整備で得られた技術的知見は、今後、市内外の他地域における防災インフラ整備にも活用できるため、市の取り組みが気候変動の影響を受ける都市部の洪水対策のモデルケースとなっていく可能性がある。福岡市の都市防災政策の中核をなす取り組みとして、今後の進捗が注目される。
福岡県内の地下河川事例 福岡県筑紫野市
福岡県筑紫野市において、近年頻発する豪雨による浸水被害の軽減を目的とした高尾川地下河川が2020年7月に竣工し、現在運用されている。きっかけとなったのは、14年8月22日に発生した集中豪雨で、高尾川流域で広範囲にわたる床上浸水が発生し、市街地に甚大な被害をもたらした。この被害を受け、福岡県は15年度から「高尾川床上浸水対策特別緊急事業」に着手し、橋梁の改築とともに地下河川の整備を推進してきた。
同事業により整備された地下河川の延長は約1.0km、事業箇所は福岡県筑紫野市紫2丁目~筑紫野市二日市中央6丁目で、事業概要は地下河川トンネル(高尾川地下約10.0m、内径5.0m)、流入立坑(内径14.0m、深さ20.8m)、流出立坑(内径9.0m、深さ20.1m)。
この地下河川は、西鉄紫駅付近に設けられた流入部で高尾川の水位が上昇し、越流堤の高さを超えた場合に作動。余剰水が地下河川へと流れ込み、地下河川トンネルを経由して西鉄二日市駅付近の流出部から鷺田川へ排出される仕組みだ。
福岡県那珂県土整備事務所・河川砂防課によると、地下河川の整備後、16年8月22日の豪雨(毎秒70t)と同程度の洪水が発生した場合の影響を予測したところ、河川の氾濫が大幅に抑制され、床上浸水被害は激減するという結果が得られた。
福岡県HPより さらに、22年7月18日~19日にかけての降雨では、高尾川近傍の針摺東雨量観測所で最大1時間雨量100.0mmを観測。この雨量は、14年8月22日に甚大な被害をもたらした降雨と同等だったが、地下河川の整備効果により、流域での浸水被害は発生しなかった。とくに平成橋(地下河川流入口下流)では、約1.5mの水位低減効果が確認されており、地下河川の整備が高尾川流域の安全確保に大きく寄与していることが示された。
(了)
【内山義之】
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