3悪独裁者の憂鬱

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 2025年3月5日、鉄杭が打たれた。

勇敢なウクライナ人の自立・独立が称賛されない昨今

 ここでいう「3悪独裁者」とは、習近平、プーチン、トランプを指す。この3人は刻々と憂鬱を募らせており、近いうちに独裁者としての地位から引きずり降ろされるリスクが高まっていると断言できる。

 かつては「民族の自立・独立戦争を戦い抜く姿勢が全世界から尊敬され、支援を集める」というのが鉄則だった。1960~70年代のベトナム戦争が好例だ。アメリカの侵略に対し、英雄的なベトナム民族の戦いは結果としてアメリカの思惑を打ち砕いた。確かに当時、ソ連の軍事援助があったとはいえ、イデオロギーを超えてベトナムは世界中の国民・市民から喝采を浴びていた。

 ところがウクライナ戦争は、ロシアのプーチン独裁政権が仕掛けた明白な侵略戦争である。それにもかかわらず、一部の下劣なインテリ学者は理屈をつけてロシアの侵略を批判しない。たとえば、伊藤貫という学者の主張がその典型だ。しかし、どんな境遇にあってもウクライナ人は屈しない。そもそもソ連時代、ウクライナは軍事産業の拠点だった。現在も優秀で勇気と闘志に溢れ、粘り強くロシアの侵攻を食い止めている。

 プーチンはあまりにもウクライナを侮り、軽率に侵略を始めて3年が経つ。今、プーチン独裁政権の基盤が揺らぎ始めている。

ウクライナ人の革命的英雄のメリット

 改めて、民族・国家の自尊心がどれほど力になるかが浸透していくであろう。それは新しい世界秩序の原動力となるはずだ。

中国の独裁者、習氏の惨めな写真

 3月6日の西日本新聞朝刊を読んでほしい。お勧めだ。現在、中国では第14期全国人民代表大会(日本でいう国会)が開かれている。そこで恒例の方針発表が行われ、当然、習近平国家主席も発言している。軍事予算は前年比7.2%増となり、アメリカへの意気軒昂な姿勢を誇示しようとしている。

 驚くべきは習氏の写真だ。「これは別人では?」と疑うほどで、まったく精気が感じられない。雰囲気から「健康ではないのでは」と疑われる(実際、病気があるのだろう)。影武者ではないと思うが、「習氏は近々、権力闘争に敗れる」と囁かれてきただけに、焦燥感や心理的ストレスは相当なものだったはずだ。

 もちろん、不動産バブル崩壊に端を発する最悪の経済状態に陥った責任を取る気はないようだ。中国人民共和国の統治とは一体何なのか。もともと、習氏に傑出した能力があったわけではない。運が良かっただけで現在の権力の座に就けたのだ。

習氏の功績・台湾有事の回避

 もし習氏が権力を失えば、台湾有事の可能性は薄れる。そもそも軍部のトップの本音は、台湾侵攻を望んでいなかった。誰も戦争などしたくないのだ。

プーチンの一喜一憂

 2月28日、トランプとゼレンスキーが言い争い、喧嘩になった。この様子を見ながら、プーチンは「しめしめ、これでアメリカはウクライナ支援から手を引く」と内心喜んだに違いない。しかし、現実は違った。トランプに罵倒され続けた各国首脳(イギリス、フランス、ドイツ)がプライドを取り戻し、迅速にウクライナ支援を展開し始めた。これはプーチンにとって予想外だった。ウクライナの勇気あるロシアとの戦闘は誰もが感銘を受けるものであり、歴史的・地政学的にロシアの侵略野望に警戒心を抱く理由もある。

ロシア復活の功労者であることは認める

 ソ連崩壊を政府スパイ機関で目の当たりにしたプーチンは、「俺の手で母国を再建する」と決意した。その意志はすばらしい。崩壊するソ連の資産をタダ同然で奪ったのはアメリカ政府要人とユダヤ商人だ。プーチンにとって幸運だったのは、オイルとガスが爆発的に湧き出したことである。この運に乗り、「偉大なロシア国家」を再生させたのがプーチンだ。なぜ謙虚さを保てなかったのか。「独裁者は人を変えるのか」、それが宿命なのかもしれない。

プーチンの功労

 最大の功労者はウクライナ国民だ。次にプーチンが侵略に挑んだが、3年経っても目立った成果を上げられていない。この現状を見て、「もうロシアに媚びる必要はない」と判断した旧ソ連加盟国々は、完全自立と連携組織の構築に着手するだろう。

何も勉強していなかったトランプ

 トランプとゼレンスキーの口論を映像で見た世界の人々は、「トランプは品のない男だ」と嫌悪するだろう。いや、そうではない。「アメリカ人全体が無骨で我が勝手な連中だ」と認識すべきだ。トランプはまさにアメリカの本質を体現している。

 この4年間、トランプが何も勉強してこなかったことがよく分かる。「関税をかける」戦略をまったく検討していなかった。中国やロシアとの対立で「関税」が有効なのは理解できるが、友好国や同盟国にまで見境なく関税を課した。友好国が離反するのはまだしも、輸入に頼る同盟国に「関税圧力」をかけたらどうなるか。この筆者ですら即座に懸念した(トランプのために)。輸入品の価格が上がり、「国民の不満が募ることを予測できなかったのか」と罵りたい。

 独裁者といっても、習やプーチンとは国家体制がまったく異なる。トランプは国民の圧倒的支持がある間だけ「独裁者」として君臨できる。何とか多数の支持を維持できるかがカギであり、公約の結果が出なければ危うい。

ヨーロッパを覚醒させたトランプの功労

 トランプはかねてから「ヨーロッパ各国は自力で防衛していない」(アメリカに依存している)と挑発してきた。イギリス、フランス、ドイツのエリートたちはプライドを傷つけられ憤慨している。ロシアに対する防衛網をアメリカに頼らず構築するだろう。トランプのおかげだ。もちろん、「ウクライナ国民の英雄的な戦いがあったからこそ」局面が打破されたのだ。

 3人の独裁者が消えても、新しい世界秩序の構築は可能だ。取り残されるのは日本だけである。

関連記事