失格へ誘導? 設計プロポーザルで松浦市が偽装工作?(後)
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国民宿舎「つばき荘」問題
市関係者が過半数を超える審査委員会で行われた虚偽とも言える市職員Bの介入。そうした実情が明るみになるにつれ、「市によって審査が誘導されていたのではないか」という疑念が醸成されていった。
「全体として誤った説明」国民宿舎「つばき荘」
裁判を通して、市職員Bの行った説明が虚偽である可能性が高いことがわかる。Bの問い合わせを受けた長崎県職員は、「プロポーザルの段階では法に抵触するか否かは回答できない」「自然公園法20条第3項(国定公園内における工作物の新築、改築、増築は、都道府県知事の許可を受けなければならない)に基づく許可が得られないとは回答していない」と証言したのだ。
裁判は一旦、和解協議を経て福岡地裁で調停に付され、14年1月に、公園事業の執行として建設できる余地があったにもかかわらず、黙して語らず、全体として誤った説明をしたなどとして市側の過失を認め、解決金80万円の支払いを命じる決定を出した。しかし、市はこれを不服とし、2月に異議申し立てを行った。
10月28日、同様の判断で福岡地裁は、市に88万円の支払いを命じる判決を出した。しかし、市は同年11月に控訴。今年7月29日、福岡高裁は、地裁の判決に「公権力の行使に当たる公務員が、(中略)少なくとも過失によって違法行為を行ったのであるから、後記損害について損害賠償義務を負う」と加え、控訴を棄却し、慰謝料88万円の支払いを市に命じた。市は8月6日、市議会で上告を断念することを説明。国民宿舎「つばき荘」建て替え工事の設計をめぐる問題は、司法では一応の決着を見た。責任の所在は不明
しかし、どうして“過失”があったかという点について、今回の問題に疑問を抱いた市民の間では、釈然としないといった声が聞かれる。友広郁洋市長は、判決を受けて、原告への賠償金を支払いながらも、「市職員は適正に業務を行った」などとして、問題の本質については触れず、あやふやな終わり方を見せた。
経緯を振り返ってみると、今回の問題が単なる過失に起因するものとは思えない。実質、技術提案書のみで行われた審査、建築法に詳しい専門家がおらず、民間委員が市職員よりも少ない審査委員の構成など、一連の流れを作る“仕込み”があったと捉えられてもおかしくない状況が作られている。したがって、その時点では違法か否かを問われないはずの技術提案について、長崎県職員の見解まで持ち出して違法とした行為は、『偽装工作』ではないかと見る向きもあるのだ。
また、原告への賠償金支払いを市が予備費(税金)で行ったことに市民の間からは疑問の声があがっている。「国家賠償法第1条第2項には、『公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する』と規定されている。市や議会は重大な過失がなかったかどうかを検証する責務がある」というものだ。判決を受けて、市はまず、今回の過失についての検証を行い、責任の所在を明らかにすべきであり、そのうえで、必要があれば税金で賠償金を支払う旨を市民に説明し、理解を得なければならないはずである。(了)
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