壊憲を全力推進する国民民主

 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「国民投票法の見直しも実現していないなかで、お試し改憲であれ何であれ、安易に憲法改定=壊憲に突き進むのは亡国の行為だ」と論じた5月14日付の記事を紹介する。

 現在の国民投票法には重大な不備がある。日本国憲法は憲法改正について次の条文を定めている。

 第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 憲法改正発議には衆参両院で総議員の三分の二以上の賛成が必要。憲法改正が発議されたのち、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、過半数の賛成によって承認される。

 〈憲法改正発議〉ののち〈国民投票〉というプロセスを経ることが必要である。日本国憲法には改正の条文があるから、憲法改正を論議することは妨げられない。日本国憲法は良い憲法だから一言一句変えてはならないということにはならない。

 しかし、憲法改正には〈限界がある〉とするのが通説である。憲法改正権は、憲法制定権と区別された、憲法によって設定された権力で、憲法制定権によって定められた憲法典を前提とするもの。したがって、憲法改正権は、憲法制定権力の所在の変更および憲法制定権の基礎となっている価値原理たる憲法の基本原理の変更まで及ぶことができないと考えられる。

 このような憲法の本質的部分が変更される場合は、憲法改正の域をこえた法的意味の革命と、新しい憲法の制定ということになる。憲法そのものの同一性、連続性を憲法改正権によって否定することは、法理論的に不可能であると考えられている。憲法の基本原理を変更することは憲法の同一性を侵害するものとなり、日本国憲法の基本原理は憲法改正の限界となる。

 日本国憲法の基本原理は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義にあると理解されている。憲法改正が議論されることは容認されるが、基本原理の変更は〈憲法改正の限界〉を超える。この点が極めて重要である。この視点に立つと2012年に公表された自民党憲法改正草案は憲法改正の限界を超えるものと位置づけられると考えられる。また、現在論議されている憲法改正の諸提案の多くが憲法改正の限界を超えるものであると理解される。したがって、私たちは憲法改正に対して極めて厳正な、そして慎重な対応を求められることになる。

 憲法改正の具体的なプロセスの核は〈憲法改正発議〉と〈国民投票〉である。そのうち、〈国民投票〉については国民投票法が制定されたが、その内容に不備がある。2021年に憲法改正の是非を問うための手続きを定める改正国民投票法が成立した。しかし、広告規制や運動資金などの問題点については今後検討し、施行三年後をめどに法制上の措置などを講じることとされた。

 現在は改正国民投票法施行から3年以上が経過しているが、見直しについての法制上の措置が決定されていない。

※続きは5月14日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「壊憲を全力推進する国民民主」で。


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<プロフィール>
植草一秀
(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーヴァー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。

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