特別用途食品の「経口補水液」に関する規制が、6月1日から完全施行となる。消費者庁は特別用途食品制度を改正し、「経口補水液」を許可基準型病者用食品に追加。無許可で「経口補水液」と表示していた販売会社は容器包装を変更する必要があるため、今年5月末までを経過措置期間としてきた。6月1日以降は、無許可で「経口補水液」と表示すると、健康増進法違反に問われる。
制度を改正した背景に、無許可で「経口補水液」とうたうスポーツドリンクなどが販売されていたことがある。広告では、熱中症や脱水症状に効果があるかのように宣伝するケースも見られた。
熱中症や脱水症状に対応するためには、ナトリウムやカリウムなどの成分が適切な量・割合で配合され、浸透圧も適正に設定されていることが求められる。しかし、無許可の商品の場合、必ずしも適切に商品設計が行われているとは限らず、症状を悪化させる恐れがある。また、コンビニやスーパーマーケットでジュースなどの清涼飲料水と並べて販売されているため、日常的に利用する消費者もいる。この場合、ナトリウムやカリウムの摂り過ぎにつながり、健康への悪影響が懸念される。
そうした状況を問題視し、消費者庁は2023年5月19日、特別用途食品制度の許可基準型病者用食品に「経口補水液」を追加した。許可されると、「感染性胃腸炎による下痢・嘔吐の脱水状態に適する」と表示できる。「医師からナトリウムまたはカリウム摂取量の制限を指示された場合にあっては、必ず医師の相談または指導を得て使用する」などの注意喚起表示も必須とした。
商品に配合する成分・量などの基準は、あらかじめ国が定めている。具体的には、100mLあたりにナトリウム92~138mg、カリウム59~98mg、塩素106~212mg、ブドウ糖1.00~2.60g。ナトリウムとブドウ糖の比率は1:1~1:3.5とし、商品の浸透圧は300mOsm/L以下としている。
また、制度改正にともなって、無許可の商品に「経口補水液」と表示することを禁止した。関係各社では容器包装の変更が求められることから、今年5月末までを経過措置期間としてきたが、6月1日からは取り締まりがスタートする。無許可で「経口補水液」と表示すると、健康増進法違反に問われる。
販売方法もルール化
特別用途食品の「経口補水液」には、制度改正で新たに位置づけられた許可基準型病者用食品と、従来からの個別評価型病者用食品の2種類がある。前述した通り、許可基準型病者用食品は、あらかじめ表示可能な文言が定められている。
これに対し、個別評価型病者用食品は、企業からの申請を個別に審査して許可を与えるため、企業が独自の表示内容を申請できる。これまでに個別評価型として許可された商品については、「軽度から中等度の熱中症、脱水状態の方の水分・電解質を補給・維持するのに適している」などの表示が認められている。つまり、熱中症対策を訴求する場合は、個別評価型病者用食品として申請する必要がある。
「経口補水液」については販売方法もルール化した。消費者庁は、消費者がコーラやジュースといった一般商品と混同しないように、病者用食品(経口補水液)であると識別できる販売方法を求めている。
具体的に見ると、ドラッグストアなどの実店舗の場合、薬剤師などの医療関係者が消費者に対し、医師に指示されているかどうかを確認できる体制を整備する。これと合わせて、シールやポップで病者用食品であると明示しなければならない。
インターネット通販の場合は、確認欄を設けて対応する。確認欄で「医師から指示された場合にお飲みください」などの確認事項にチェックを入れながら、注文の申込画面へ進むといった仕組みを導入しなければならない。取材に対し、消費者庁は「販売方法についても健康増進法に基づく取り締まりの対象となる」(食品表示課保健表示室)と話している。
【木村祐作】